ウイッシュ・ユー・アー・ヒア
バッド・フィンガーは、1969年にビートルズの弟分的な売り出し方でアップルレコードからデビューした、4人組のパワーポップの元祖のようなロックバンドだった。
全員がソングライターで、メロディがよくてポップなんだけど単なる聞きやすいロック以上の曲が多い。
一般には、ニルソンやマライヤ・キャリーがカバーして大ヒットした、セカンドアルバムに入っている “ウイズアウト・ユー” が有名だろうと思う。
Without You
バッド・フィンガーは、とても有名だったのにも関わらず、デビューしてから悪徳マネージャーや最悪の契約に縛られていた上に、放漫経営だったアップルレコードのごたごたにも巻き込まれ続けた。
それでもジョージ・ハリソンとトッド・ラングレンがプロデュースしたサードアルバムは、そんな影を感じさせない親しみやすい曲が揃っている。
Baby Blue
アップルレコードから、宣伝するどころか足を引っ張ぱっられた4枚目のアルバムを出すと同時に、バンドはワーナー・ブラザースに移籍した。
気分が悪くなるので詳しくは書かないが、悪徳マネージャーはますます悪質になり、そいつを最後まで信じつづけたメインソングライターのピート・ハムは、移籍後2枚のアルバムを出した後に自殺する。
そして数年後には、 “ウイズアウト・ユー” を一緒に書いたトム・エヴァンスも自殺してしまう。
ワーナー・ブラザースのアルバムは、売り上げはあまり良くなかったようだがアップル時代以上にバンドの良さがでている。
バンド名をアルバムタイトルにした「Badfinger」には、少し緊張感があって聞きやすく繊細な曲が揃っている。
その中でも、メンバーで一番目立たないドラマーのマイク・ギビンズが書いた“マイ・ハート・ゴーズ・アウト”は、曲もギターを重ねたアレンジも不安定なボーカルも、すべてが素晴らしい。
My Heart Goes Out
ピート最後のアルバム「Wish You Were Here」は、それまでのアルバムに比べてヘビーなギターと、複雑なアレンジが印象にのこる。
アルバムをクリス・トーマスがプロデュースしていて、当時クリスが結婚していたサディステック・ミカ・バンドのミカが日本語で参加している曲もある。
“イン・ザ・ミーンタイム/サム・アザー・タイム”などのいくつかの曲では、複数の曲をメドレーっぽく1つにまとめている。そのためかどこかアビーロードに似た感触を感じるが、それは聞く側の勝手な感傷かもしれない。
ワーナーから出た2枚のアルバムには、苦しい状況の中にいても純粋に「音楽が好きだ」という気持ちがこもっていると思う。
In the Meantime / Some Other Time
No Matter What