年齢を超えたラウドミュージック
ピクシーズのことを最初はイギリスのバンドだと思っていた。イギリスの4ADレーベルから1988年に出したファーストアルバムのジャケットは、とてもセンスがよかった。
ただ何だか気の抜けた変にポップなロックに聞こえて、このどこか歪な感じが個性だということが分からず、最初は関心が持てなかった。
その印象は、セカンドアルバムの「ドリトル」を聞いて一変した。
曲の途中で突然音をでかくするバンドと女性のコーラス、ほとんど意味のない歌詞を絶叫するロックスター的なカッコよさは皆無の太ったボーカリストは、他に似たバンドがない唯一無二の個性を持っていた。
このアルバムには、子どもの頃の愛読書だったドリトル先生的なホノボノ感がゼロの、「動物実験で天国に行くサル」みたいなジャケットがついていた。
“Tame”という2分の曲を初めて聞いたときは、驚いたというか爆笑した。
当時のライブ映像をみると、ボーカルのブラック・フランシスは、どう見ても変質者そのもので最高だ(笑)。
Tame
サードアルバムの「ボサノバ」を一番よく聞いた。
サーフロック“Cecilia Ann”のカバーから始まるこのアルバムには、凄い名曲が入っている訳ではないが、全体を通してポップで不気味で不穏な感じが気にいっていた。
Cecilia Ann / Allson
UFOとの遭遇を描いた“The Happning”では、「ハロ~」と歌っている。
ピクシーズに影響を受けたニルバーナの“Smells Like Teen Spirit”の「ハロー」より、何だかずっと不吉な挨拶に聞こえる。
The Happning
ピクシーズは4枚目のアルバムを出して1991年に解散した。
再結成後の2014年に5枚目のアルバム出した後に、2016年と2019年にもアルバムを出している。
若い頃は、ピクシーズのようなタイプのバンドは50代になったら聞かないだろうと思っていたが、まったくそんなことはなかった。
「ドリトル」の1曲目に入っている“Debaser”は、いまでも疲れた時に爆音で聞いている。人は年をとってマシになる部分も少しはあるだろうが、本質的な部分は成長なんかしない(というかする必要がない)っていうことなんだろう。
そしてそれで何の問題もなかった。
Debaser