お正月休みが終わると、世の中は急に静かになりますよね。年末年始のあの大騒ぎが嘘のように、店のレジは静まり返り、店内には穏やかなBGMだけが流れる。
そんな「買い控え」の時期、なのに!なぜか現場で信じられないようなミスやトラブルが連発したりする。
「あんなに忙しかった年末年始は、皆が神がかった動きで完璧にこなしていたのに、なんでこんな暇な時に限って、賞味期限のチェックを忘れたり、お釣りを間違えたりするのだろう?」
不思議です。
「忙しくないんだから、落ち着いてやればミスなんて起きないはず。そんなのただの怠慢だ!」そう思うかもしれません。確かに、理屈ではそうです。
でも、実はこれ、根性論ややる気の問題ではなく、私たちの「脳の仕組み」が引き起こしている、あらがえない呪いのようなものなのです。
何を隠そう、私自身もその呪いの被害者の一人です。締め切りが迫って心臓がバクバクしている時は超人的な集中力を発揮するのに、余裕がある休日に限って、コーヒーを盛大にこぼしたり、大事なメールを送り忘れたりします。
自分でも「なんでこんなにダメ人間なんだ……」と枕を濡らす夜があるくらいです。(ウソです。。笑)
今回は、なぜ普通の人が暇な時ほど盛大にやらかしてしまうのか、その理由が気になったのでエビデンス付きで徹底的に解剖してみました。
1. 脳は「余ったエネルギー」をいたずらに使う
まず、私たちの脳には「認知資源」という、いわば思考のバッテリーのようなものがあります。このバッテリーの使い道が、暇な時ほど「失敗」へと向かってしまうのです。
これに関する有名な理論が、ロンドン大学の心理学者ニリ・ラヴィ教授が提唱した「知覚負荷理論(Load Theory of Attention)」です(引用:Lavie, N. (2005). Distracted and confused?: Selective attention under load. Trends in Cognitive Sciences)。
この理論を簡単に説明すると、脳の処理能力には限界があり、目の前のタスクが簡単すぎたり暇だったりして「処理能力が余っている」と、脳はその余剰分を、勝手に周囲の無関係な刺激や余計な雑念に割り振ってしまうというものです。
つまり、忙しい時は脳が100パーセント仕事に集中しているからミスをする隙がないのですが、暇になると脳は「お、エネルギーが余ってるな。よし、昨日の晩ごはんのことでも考えようか」とか「あの同僚、鼻につくな」といった、どうでもいいことに意識を向けるわけです。
その結果、目の前の仕事に対する注意力がスカスカになり、普段ならあり得ないような「やらかし」が発生するわけです。
「要するに集中力が足りないだけでしょ?」と言いたくなる気持ちもわかります。でも、脳は構造上、空いたスペースを埋めずにはいられない、ある意味、断捨離できない臓器なのです。
2. 脳が勝手に暴走する「アイドリング状態」の恐怖
さらに厄介なのが、脳が何もしていない時に活発になる「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という回路です。
ハーバード大学の心理学者マシュー・キリングスワース博士らの研究(引用:Killingsworth, M. A., & Gilbert, D. T. (2010). A wandering mind is an unhappy mind. Science)によると、普通の人は起きている時間の約47パーセントを、目の前のこととは別のことを考えて過ごしているそうです。
そして、この「マインドワンダリング(心の迷走)」状態にある時、パフォーマンスは著しく低下し、さらには幸福度まで下がることが判明しています。
小売店の現場でいえば、暇な時間が続くことで従業員の脳はDMNモードに切り替わります。
すると、「あー、帰ったら何食べようかな」といった妄想が始まり、意識は現場から遠く離れたどこかへ飛んでいってしまいます。体だけがお店にある「幽霊状態」の人間が、正確なレジ打ちや在庫管理をできるはずがありません。。。(涙)
実際こういったことは私にもよくあります。余裕がある時に限って、脳内で勝手に反省会が始まったり、ありもしない不安を作って勝手に落ち込んだり。
結果として、目の前の作業がおろそかになり、盛大に失敗してまた落ち込むという負のループ。本当に、人間って面倒くさい生き物ですよね。
3. 「時間がある」という余裕が牙を剥く
最後に、あ有名な「パーキンソンの法則」についても触れておきましょう。これは、イギリスの歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則です。
簡単に言えば、「締め切りまで時間がある」と思った瞬間に、脳が勝手にその時間をダラダラと使い切るように仕事を膨らませてしまう、恐ろしい呪いです。
「まだ余裕があるから、丁寧に確認しながらやればいいよね」、そう思うかもしれません。ですが、これが大きな落とし穴です。
ここで登場するのが心理学の「ヤーキーズ・ドットソンの法則」です。この法則によれば、人のパフォーマンスは「適度な緊張感」がある時に最大化し、緊張感が低すぎると、やる気も注意も散漫になってミスが激増することが証明されています。
つまり、暇な時というのは、この「緊張感」がゼロに近い状態です。脳が完全に「お休みモード」でふにゃふにゃになっているところに、正確な作業をさせようとする方が無理というもの。
「それでもプロなんだから、暇でもちゃんとやるべきだ!」と思うでしょう。
まさに正論です。私も何度も口にしている言葉です。でも、そんな正論だけで動けるほど、私たち普通の人の脳は立派にできていないのが現実なんですね。
暇という魔物に打ち勝つための戦略
では、どうすればいいのか。答えは「あえて脳を暇にさせないこと」なんですね。
脳の余ったエネルギーを悪用させないために、暇な時こそ「普段できない細かい掃除」や「商品陳列の変更」など、少しだけ頭を使う小さなタスクを意図的に詰め込む必要があるんです。
これを「知覚負荷を調整する」と言います。
あるいは、制限時間をあえて短く設定するのも有効なんです。
「この作業を10分で終わらせる」と自分にプレッシャーをかけることで、脳が停滞している状態から強制的に仕事モードへ引き戻すのです。
私も、暇な時間こそが最大の敵だと肝に銘じています。何もしない時間は、何か変な恐怖を感じたりします。
多くの人が「余裕がある方がうまくいく」と誤解していますが、事実は逆なんです。
適度な負荷こそが、私たちの当たり前を守る防波堤になります。
私も今日から暇な時は、従業員に「休んでいいよ」と言うのではなく、「あそこを徹底的に磨いてみて」と、少しだけ負荷を与えてたいと思います。あくまでも少しだけ。あまり多く負荷を与えるとパワハラと言われるので(汗)
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