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筋トレでブリッジを取り入れている人は少ないと思う。というかほとんど見かけない。あまり重要な種目だというイメージも正直なところあまりない。
私自身もこれまでブリッジに取り組んでこなかった。その理由は、他にやるべき種目があったからだ。ブリッジをことさらに軽視していたというよりも、ブリッジを行う順番がまわってこなかったという方が近い。
自重トレーニングなら、腕立て、腹筋、懸垂は体のシルエットを見違えるように発達させてくれる重要な種目だ。
器具を使う筋トレなら、ベンチプレス(胸)、スクワット(足)、デッドリフト(脚・背中)は最も重要な種目という意味で、「ビッグ・スリー」と呼ばれているのはご存知の通り。
いずれにしても、ブリッジをやる順番が回ってくることはない……。
そんな私に、ブリッジの重要さを教えてくれた書物が、かの有名な「プリズナートレーニング」だった。どうやら、過酷な監獄という環境で、日々身体をいじめ抜いている屈強な男たちはブリッジを重視しているらしいのだ。
ここでは、実際にプリズナートレーニングのブリッジ種目のステップ1「ショートブリッジ」について調べ、実際にやってみた感想を書こうと思う。そして、ブリッジは筋トレ種目としてあまり重要ではないという、最初にふれた先入観の是非を問うてみたい。
結論を先に述べておくと、ブリッジにはある種の効果はある。ただし、それは筋トレをこれから始めようと考えている人が望むような効果ではないのかもしれない。
プリズナートレーニング「ショートブリッジ」とは
プリズナートレーニングがどのような筋トレなのかについて、ここで詳しく説明することはしない。
ポール・ウェイドという元囚人が、監獄の中で出会った筋トレの達人たちからかき集めた、トレーニングメソッドの集大成であり、綿密に組み立てられた肉体づくりのシステム、とだけ言っておこう。
プリズナートレーニングは道具を用いない自重トレーニングだ。自重トレーニングについては、正直なところ「ぬるいトレーニング」というイメージがある。バーベルやダンベルのように負荷を重くしていくことができないので、筋肉をハードに追い込むことが難しいと思えるからだ。
いうまでもなく、筋トレというものは、いつもと同じ負荷でトレーニングをしていたのでは肉体を変化させることはできない。前回よりも、より重く、より多く、より速く、というように負荷を強めていく必要がある。皆さんご存知の「オーバーロードの原則」である。
プリズナートレーニングにもオーバーロードの原則は導入されている。最初は簡単な種目から始め、段階を追って難しい種目へと進んでいく。後から登場する種目は、前の種目で獲得した身体能力を土台にして成り立つように設計されている。このあたりは、本当に良く考えられている。
全ての種目は、簡単なものから難しいものへと向かう「10ステップ」に分割されている。その一つ一つのステップを急がずにコツコツと、根気よく取り組むのがプリズナートレーニングの真骨頂だ。
前置きが長くなってしまったが、「ショートブリッジ」というのは、ブリッジ種目の中のステップ1、つまり最も簡単な種目のことである。
ショートブリッジの効果1.脊柱への働きかけ
ショートブリッジは、動作を1度見ればすぐに理解できるシンプルなものだ。
言葉で説明するとするなら、まず、いわゆるブリッジの姿勢を想像していただき、そこから手は使わずに首の後ろと肩を地面につけて安定する姿勢を考えてみてほしい。要するに上半身はほとんど使わずに、下半身側だけで行うブリッジだといえる。
プリズナートレーニングの著書の中では、脊柱(背骨のこと)が鍛えられる点を特に重要視していた。
背骨への意識を最も進化させた身体文化と言えばヨガが思い浮かぶ。ショートブリッジには、ヨガにも通じるような背骨への働きかけがあるようだ。
下記の動画は、ヨガの愛好家とおぼしき人物がプリズナートレーニングのショートブリッジを紹介するもの。ヨガのフィルターを通して解釈されているところは興味深い。
ショートブリッジの効果2.女性向き?ヒップへのアプローチ
冒頭でブリッジはあまり行われていないと言ったが、「ショートブリッジ」に関しては熱心に行っている一群が存在する。それは、昨今人気の「美尻トレーニング」を実践する女性たち。もっともショートブリッジという名前ではなく、「グルートブリッジ」と呼ばれているのだが。
下の動画はグリードブリッジの動作を解説したもの。見ていただければわかる通り、ショートブリッジと全く同じ動きになっている。ただ、ここではプリズナートレーニングのように背骨はあまり意識されておらず、腹筋群や大殿筋、中殿筋、ハムストリングスをターゲットにした、ボディメイクのトレーニングという位置づけになっている。
ショートブリッジの効果3.ベンチプレスの下半身の使い方
ここから急にマニアックな世界に入っていくことをお許しいただきたい。
足で地面を蹴って腰を浮かせるという動きは、ベンチプレスという筋トレ種目の中で補助的に登場する。ベンチプレスは腕立て伏せなどと同じ、大胸筋をメインに使う筋トレ種目。つまり上半身種目である。
しかし、より重い重量でトレーニングをしようと思うなら、上半身だけでなく、全身の連動性が重要になってくる。当然、足が上手く使えているかどうかで扱える重さも変わってくる。ちなみに、ベンチプレスで足を使うことを「レッグドライブ」という。
実はこのベンチプレスで用いるレッグドライブにはショートブリッジの要素が入っている。このテーマに興味を持つ人は極めて少数だとは思うが、ショートブリッジはベンチプレスの重量向上に貢献する可能性がある(動画に登場する種目は正確には、ショートブリッジではなくヒップスラスト)。
結論:ショートブリッジは見せびらかす筋肉に効き目なし
最後に、ショートブリッジを実践してみて私自身が感じたことをお伝えして終わりにしよう。
まず、ショートブリッジはプリズナートレーニングのブリッジ種目の中でも最も簡単なステップ1だ。この段階では、まだあまり負荷が強くない。従って、どこかの筋肉に効くといえるほどの強い刺激を得ることはできない。
プリズナートレーニングの中で強調されている脊柱(背骨)への働きかけに関しては、脊柱起立筋(背骨の両脇にある大きな筋肉)を鍛えるほどの負荷はないものの、背骨周辺をしなやかにするためのセルフケア目的であれば十分に有益に思えた。
とくに運動不足で背中が固くなっている人や、反対に、ハードな筋トレで疲労がたまってる人には、腰痛防止のエクササイズとしてちょうどよさそうだ。
女性に人気のグルートブリッジとして、お尻をシェイプする効果はあるか? これについては、もともとの筋力がよほど弱い人でないかぎりは、自重でのトレーニングではあまり効果は期待できない。お尻をシェイプするには、股関節の上にバーベルまたはダンベルを乗せて負荷を強くして行う必要があるだろう。
要するに、ボディメイクへの貢献は非常に少ない種目であると言わざるを得ない。
男性であれば腕や胸板、女性であればウエストのくびれやヒップのように、人に自慢できるボディパートを鍛える効果はほとんどない。
もっとも、プリズナートレーニングの著書であるポール・ウェイドに言わせれば、こうした発想こそは「能力よりも見た目を重視する恥ずべき文化の影響」ということになるのかも知れないが…。
いずれにしても、ショートブリッジはボディメイク目的の筋トレ種目としては優先順位はかなり低くなるだろう。しかし、健康づくりに役立てることはできる。ショートブリッジを習慣にしている人は、腰痛に悩まされることが少なく、バランスの良い姿勢で歩き、年齢を重ねても若々しい所作でいられる可能性が高いはすだ。
見た目の変化は望めないが、長い目で見れば取り入れる価値のある種目。それが、ショートブリッジである。私はといえば、ウォーミングアップやクールダウンの時間に好んで行っている。何かの目的のためというより、次のステップに進む楽しみがあるからなのだが、この点についてはまた別の機会にお話ししたい。
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自重トレーニングで全身を鍛えられるプリズナートレーニングは手軽さも大きな魅力。
でも、ひとつだけ困ったことが!
それは、鉄棒です。鉄棒さえあれば懸垂はもちろんのこと、強力な腹筋トレーニングである「レッグレイズ」も可能なのですが…。
「近くに使える鉄棒がない」
「鉄棒のために、わざわざジムに通いたくない」
そんな鉄棒難民も少なくないようです。
そこで、プリズナートレーニングにおける鉄棒問題をまとめてみました。
腹筋や背中をハイレベルに鍛え上げたい人や、ちょうど鉄棒で困っていたんだよ!という人は必見です!