兵庫県 N 様邸訪問記 | 禁断のKRELL

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ハイエンドオーディオやヴィンテージオーディオを語っていきます。

 

 

 

 

淡路島のオーディオファイルの方をご訪問しました。

 

 

 

西宮市の自宅をAM 7:42に出発。単独では初の明石海峡大橋、世界最長の吊り橋で3,911m もある。

海上の高所による強風でバイクは少し怖いが、目前に聳え立つ主塔架の巨大さに圧倒され、

抜けるような青空と、目前に広がる瀬戸内海の大パノラマの雄大な景観に思わず心を奪われる。

 

 

周辺地図

 

神戸から淡路島、四国への渡り方。国道2号線を姫路方面へ、フィッシングマックス垂水店が

左側に見えたらそろそろだ。福田川という小さい川に差し掛かる交差点を右折して

北に10kmくらい真っ直ぐ、目立つ青いペットショップが左手にある交差点を右折

巨大高速下の交差点を左折して左側レーンに侵入で垂水ICから明石海峡大橋へ、

カーナビがないバイクの人もいるかも知れないから。

 

これで淡路島と、四国の徳島へも行ける。

 

 

 

参考動画

 

 

明石海峡大橋を渡る為の垂水ICから淡路島内のICまでの料金が片道で2,570円、

往復5,140円と結構掛かる。バイクのガソリン代は全体約700円でした。

 

 

 

 

 

 

 

N 様は神戸の職場を早期退職され、二年前に郷里の淡路島に戻り、

昔購入してあった土地に二千万で平屋の立派な邸宅を新築なされた。

 

土地代など諸費用を入れると総額では約三千万掛かっているそうだ。

 

 

15畳のリスニングルームは天井高は約3.5mで実際の数値以上に広々としたものに感じられる。

エアコンもありますが、2年前に新築したばかりの進化した一戸建ては12月なのに

真空管アンプの暖気だけで十分暖かい。廊下に出ると寒いので暖房効率が高いのが分かる。

玄関に入ってすぐ目の前の部屋がリスニングルームとなっていて N 様のオーディオにかける

思いが伝わってくる。バスとトイレも部屋の目の前で男子小用も用意されていて快適。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーナー様はELTUS、TELEFUNKEN、Wharfedale、Klangfilm Eurodyn の四種類のシステムをお持ちです。

 

ELTUS、TELEFUNKEN の二機種はフィールドスピーカー、通常のパーマネントマグネットとは

まったく異なる、外部電源により磁力を供給してマグネットを動かす励磁式となっている。

すべてのスピーカーがネイキッドでキャビネットを使わない平面バッフルとなっている。

 

 

 

 

 

 

Klangfilm Eurodyn

 

 

ドイツの至宝、世界文化遺産、貴重なクラングフィルム時代のオイロダイン。

強靭で芯が強い音の出方をする。空間を制圧する音の力が極めて強い。

ドイツらしい威厳がある。音色は暗めで地味であるが、一人で音楽と対峙して

向き合っていると、奥深い音楽性を湛えていることに気が付かされる。
オイロダインは工夫もなくそのままで鳴らすとボヤけたような音がするが、質の高い

ツィーターユニットを追加して鳴らす事で目覚ましく全体の印象が著しく変わるのだという。

KEFのヴィンテージ・アルニコ・ドームツィーターが飛んでしまって当日は代替品でしたから、

オーナーはしきりと追い込まれた本来の音が出せていない事を悔しがっておられました。

 

「これは劇場用スピーカーで、オイロダインで鳴らすとまさに劇場の音になります」

 

 

 

 

 

 

 

 

TELEFUNKEN 型式不明 1950年くらい?の20cmフルレンジユニットを二発使ったスピーカーシステム。

センターダンパーのフィールド型スピーカーでコバルトアモルファスコアの最高級品を使った

電源トランスから磁力を供給している。このユニットは当時の高級ラジオに使われていたもので、

時代の最先端だった。SIEMENS 28Aのツィーターを上に足している。 TELEFUNKEN スピーカーは

年式がとても信じられない、恐ろしいほどのハイファイで硬質で切れ込みが鋭く、瞬発力があり、

低音が非常に締まっていて実にドイツらしい音だ。のスピーカーだけ送信管211シングルに

繋いで鳴らして頂きましたが、211の骨格の確かさ、透明感や強靭な切れがある音と

マッチしていて球への理解の深さに唸らされる。 ツィーターのローカットのコンデンサーは

プラスに接続する。Mundorf の電解コンデンサーとドイツ製で揃えている。

 

 

 

 

 

 

 


英国 Wharfedale SUPER12 30cm MONITOR REDは38cmだがSILVERや

REDと同じチコナルマグネット。ツィーターはSUPER15でゴールドマグネット、
クラシック向けの音だがジャズも鳴る。ツヤがあるやわらかい音。
天才画家の手による印象派の絵画のようなTANNOY MONITOR REDの

高邁な芸術性には流石に及ばないが、MONITOR GOLDを越えそうな印象もある。
サウンドメイツの故・朝山さん謹製のファインメットのネットワークを搭載。
SUPER12は20年前にNOSで買って元箱に保存していたという。eBayで中古を

ワンペア追加で買ってダブルウーファーでセットアップして鳴らし始めたそうです。

 

 

「Wharfedale SUPER12はおそらくRED時代のOEMと思われます。

1本6万円ほどで買えますから、TANNOYと比べると知名度がない分お値打ち品ですよ」

 

「TELEFUNKENの方が締まった音がするけど、艶があるのはWharfedaleやろうね」

 

 

Wharfedaleは意外にも澄んだ音で1960年代の音という感じがまったくしない。

やわらかく快い響きがフワッとやさしく頬を撫でるように空間一杯に広がりますね。

 

 

TANNOY MONITOR REDは音がボケるとかモヤ付くという個体差などからも来ている
音の古めかしさが気になるけれど、Wharfedale SUPER12は保存状態がいい

NOSの為かまったく古さが感じられない。ヴィンテージでしか出せない味わいもあって、
透明感も優れているし、ネガティブなところが一切感じられない。
キャビネットを使わないとかファインメットのネットワークのクオリティの高さが音に効いている。

バッフルやフレームの作りがいいので感心していると、大阪の小川木工店にN様が自ら

図面を引いて作らせたのだそうです。三組のセットアップスピーカーのネットワークは

すべてテクトロンのトランスが使われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ELTUS と TELEFUNKEN は励磁式フィールドスピーカーで磁力の供給は別電源から行う。

昔のスピーカーに採用された方式だったが、コストの概念からアルニコやフェライトの

パーマネントマグネットに移り変わっていった「励磁式のメリットは磁力が高いので滲みがない、

団子にならない、ボケがない」 ELTUSのドライバーは594で569のツィーターを足している。

ウーファーはELTUS TA-1418 G.I.P laboratoryは別のコーン紙を使っているが、ELTUSは

WEオリジナルコーン紙を使っている。なんと46cmのダブルウーファーで超弩級システムだ。

 

 

「ELTUSはフルレンジ的な性格のもので上をカットして使っています。接続は直列に繋いでます。

朝山さんがWEは並列より直列がいいというのでそうしています」


 

ヴィンテージ・ユニットながら古めかしさは全くなく、全てのネットワークとアンプのトランスは

高価なコバルトアモルファスやファインメット・トランスを使いサウンドメイツの

故・朝山光治さんが作られたワンオフ品の真空管アンプもパーツを何度も

ヴァージョン・アップに出して極限まで質を追求した結果出せるようになった領域なのだと言う。

 

 

「四種類のスピーカーがありますが、たまに調整で鳴らすくらいで普段は殆どELTUSで聴いています(笑)」

 

 

 

 

 

 

睡眠時間3時間で一気に駆け抜けていったオーディオ人生、故・朝山光治さん

 

 

芦屋ベルステレオ、サウンドメイツ、ストーンエイジと移転などで朝山さんの店は名前が度々変わったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今はプリを三つ連結して繋いでいます。一台でも減らすと音が寂しくなります。

その間に最高級の希少金属 コバルトアモルファスコアのライントランスが入る感じです。

パッシヴプリは朝山さんがWEのトランスを使い、WEは巻き線が悪いので、

テフロン線で巻き直ししてあります。朝山さんはWEの信奉者ではなかったのですが

音が良かったらなんでもいい人で、色々と実験してたまたまWEの音が良かったんです。

プリのWEトランスはアッテネーター・トランスでいわゆるライントランスとは違います。

パッシヴプリはAA誌の記事だと約70万と書いてありましたが

私の持っているアルミ削り出し筐体の贅沢なものから簡素化された

ものが販売されていましたけど、私のは確か50万くらいでつくってもらいました(笑)

欠点はプリのボリュームのステップが粗く、いちばん抜けのいいボリューム位置、

約11時にシールで印を貼ってVU固定とし、モノーラルパワーアンプのボリュームで

調整していることです。音量調整は大変で不便ですが、音がいいから仕方がないですね(笑)』

「シングルアンプは出力が足りないので不満あります。PP5/400プッシュがメインです」

 

「オリジナルWEの華やかさや濃さとは違いますが、少し素朴な感じながら、

甘美で夢の中にいるようなまさにWEの音です。」

 

「心が安らぐ音色がしていますね。いい意味で刺激性がまったくないやさしい音」

 

 

 

 

「私はほとんどレコードしか聴かないんですが、お持ちいただいた最近のCDも意外と良かったですね。

レコードのように音の拡がり感がよく出ていたと思います。感心しました。CEC TL-0Xから繋がっている

DACは10年くらい前に朝山さんに作って貰った物です素子はPHILIPSのダブルクラウンを使っています」

 

「朝山さんがTL-0を使っていたんです。TL-0Xの方が遥かに進歩していますが(笑)」

 

「うんうん、僕もTL-1Xを使っていましたよ。やわらかい音で心地の良い音がしますよね」

 
 

「ライントランスとシングルとプッシュプルの二台のモノーラルパワーアンプの

インターステージトランスにコバルトアモルファスを使っています。他は全てファインメットです」

 

 

「すごいですね!ファインメットでも普通は一か所でもなかなか使えませんよ」

 


 

 

 

 

211パワーアンプは巨大で質量は50kg以上はある。値段は100万円以上。

 

「どのスピーカーも透明感抜群で、この部屋は音響特性がとてもいいですね!音が澄んでいる」

 

『いやいや、これは励磁式のユニットが良いからですよ。オイロダインも2m×2mなどのバッフルを

使うと低音が出るけど音がボンヤリしてるのが多いでしょ?バッフル使わないでツィーターを

足すとモヤ付きがなくなるんです』

 

 

 

 

 
 

励磁式は電力を電源から供給するので出力を上げて行くと音がきつくなる。

写真は名古屋のテクトロン(昭和電機)高価なファインメット・トランスだが

さらに二倍は値が張るという、同社のコバルトアモルファスが最高峰。

 
「安いフィールド用電源は菊水?のものがいいですよ」
 
 

 

 

 

 

N 様はCEC TL-0Xもお持ちですが、CDはほとんど聴かなくてレコード再生がメインです。

こだわりのアナログプレーヤー群、右側はドイツのDR. FEICKERT ANALOGUE

2基のモーターからなる高精度なツインアームモデル「Blackbird 2」¥940,000

読み方は ドクトル・ファイアルトだ。

 

 

 

 

 

N様のリスニングルームは Stereo 2019年 2月号に掲載されています。

 

一年ほど前の取材時の田中伊佐司さんのサインが飾られていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

オーナーの N 様は心からの笑顔を常に絶やさない感じのいい方で、

これだけの音を出しながら、奢りがなく、少しでも険がありそうな事を

ごく自然に口にしないという、振る舞いが素晴らしい。

妥協のないオーディオを長年追求されながら、

長年の人生経験で人間性も磨かれ、対応が洗練されている。音楽を愛する紳士でした。

 

 

N 様の人柄にすっかり打ち解けて話込んでいると、分かったのが古武道や柔術の稽古に

打ち込んで来られていて、拙宅の近くにある道場に長年通っておられたそうです。

 

ひたむきで二心の無い純粋な心、武道をやっている人はピュアな人が多い。

汗を流して稽古に打ち込んでいるから、すがすがしい人柄の方が多い。

 

 

 

音もまた鏡のように人を表している。ボーカルは表情が多彩かつキメ細やかで全ての

システムに通底しているのが、部屋のサイズが生きていて、音場感が広大で、

スピーカーの存在が消える。音にはわずかな汚れもなく透明感に優れているのだが、

音楽性も当然のように四種類すべてのスピーカーが素晴らしいもの。

 

 

音へのこだわりが半端じゃない。負けたな、と思った。