北九州のオーディオファイルの皆様を訪ねる旅に行ってまいりました。
九州には小学校四年の頃に長崎に来て以来です。
T 様 邸訪問 Guarneri Homage と米国 BAT VK51SEを中核とした完成されたシステム。
真空管のプリアンプですが、現代的で細かい音まで余さず拾い、爆音再生はしませんでしたが
「重低音も出ますよ」 との事で、この訪問で一番気になったシステムのひとつです。
BATのプリは音楽性が高く、色っぽい音がしますね。芯はあるがきつい音は出さない感じです。
邦価172万8,000円のモデルだそうで、米国価格は一万$、「あまり人気がないから」と
ご謙遜されましたが、約35万と安くご購入され、発熱が大きいのに購入後四年間故障がない
そうです。BAT(バランスド・オーディオ・テクノロジー)社は社名でも分かるように、
真空管機なのにバランス接続が高音質になるように製品デザインしています。
真空管なのにバランス優先、こういうブランドは他にはVTLなどしか見当たらない。
メインスイッチがない、筐体がかなり熱くなる。180Wも食うと使いにくさを感じますが、
音は良いです。まろやかで心地よい真空管の音だけど、現代的。このプリが欲しくなったので
色々と質問してみたのですが、購入後のリペアや真空管の確保が難しいのだそうです。
既に代理店も撤退しており、修理自体は日本でもできるでしょうが、真空管が特殊なので
入手困難であるとのこと。ただし本国のサービスは手厚いそうなので、
アメリカに送ることを厭わない方にはお薦めできるモデルだと思います。
実際に触らせていただいたのですが、天板が非常に熱くなりますね。そして、
余熱状態でも結構熱いそうで、一度電源を落とすと「三日は音が戻らない、眠い音しかでない」
と仰っておられましたが、後ろ髪を引かれるように、気になってしまうモデルでした。
パワーはスウェーデン製のLAB GRUPPEN IPD1200を二台使い、マルチでネットワークを
バイパスされている。チャンネルディバイダーはパワーアンプに内蔵。
このデジタルアンプは局地的に流行っているそうです。
さて、T様のサウンドは、
産毛を撫でるようなフェザータッチの優しい音でホログラフィックな音場が空間に浮かび上がる
リアリティーの高い、非常に精密な音場がスピーカーの後方に展開します。
ヴァイオリンの弦の音に特化した、ややダーク&シックな音色で強靭な弦のタッチを
イメージさせていたSonus Faber Guarneri Homage (ガルネリ・オマージュ)を耳辺りがよく、
心地良いサウンドバランスに仕上げているという印象を持ちました"ネットワークレス"の
メリットはサウンドから強く実感できる。高鮮度で分離がよく、混濁が一切ない音。色気が
あるが、ボケ気味になったりせず、透明感や爽やかさがある。非常に洗練された、完璧な音!
T 様の人物像は、知的で理詰めな感じの方なのですが、自分の追求する音を
実現すべく大変精力的(行動力がある)にオーディオに取り組まれている方だなと感じました。
そうしたオーナーのパーソナリティがご自身の音に確信を持ち、T 様の出されている
素晴らしいサウンドを築き上げる原動力になっていると思いました。経験の豊富さも
感じますね。オーディオは基本、ひとりで取り組む趣味ですから、どこかが抜け落ちたり
するものですしかし、T様にはそれがない、システムの隅々まで粗探ししても、
どこにも「脇が甘いかな」と感じるところがないんです。お世辞抜きに完成度の高いシステムです。
蛇足ですが、椅子の座り心地もよくて、ついつい長居したくなるようなお宅です。
男性的で逞しい方が、美音スピーカーを優しく最大限唄わせてあげるべく、
緻密なシステム構築をなさっているのに驚きを持ちました。ジェントルで紳士的な方でしたね。
以前使われていたスピーカーを尋ねると、KEFのトールボーイや、 INFINITY Kappa 8.2
などの大型機にも挑戦され、最終的にGuarneri HomageというSonus Faber の
銘機に辿り着いた。このスピーカーは難しいんですよ。玄人向きの渋めの音であって、
それがこれだけの心地よい音で鳴ってしまう。スピーカーが大きくなり、音圧を高めると
「部屋が音で飽和してしまうから」 最終的にはこちらのお部屋をお子様が
大きくなられたら子供部屋にして別棟で15畳くらいのスペースで
Sonus Fabe elipsa(エリプサ) を鳴らしたいという将来の展望を語られている姿が
印象的でした。所々銃器が写り込んでいますが、サバイバルゲームもなさっているそうで、
それはたーく様のイメージと合致します。