PASS LABO X350 ステレオパワーアンプ 1998年 アメリカ ¥1,500,000
ヴァイオレット・ブルーの眼差し
現代的なハイエンドアンプとして飛躍的に進化したネルソン・パスの意欲作。
超ワイドレンジで高精細、高精度なスーパーハイエンドサウンド。
研ぎ澄まされた分解能を見せるストイックな音。ハイパワー化がもたらした
鋼のような質感を持った強烈な力感がある。そしてどこか音楽を客観視するような
冷静さがある。まず最初に強い印象として残るのは際立った鮮度感の高さだ。
まさに剥けるようなフレッシュで非常に鮮烈な中高域なのである(!)
デバイスの進化を強く印象付ける、純度が高く澄み切った透明度。
ノイズフロアー(S/N比)は驚異的な低さである。発売は1998年12月21日。
Threshold SA/4eのコンストラクション(構成・構造)と近似しており、
同じ作者によるデザインであることが手に取るように分かる。だがSA/4eのように
生命感に溢れるウォームさではなく、ハーシュネスに整えられた、近未来的な音世界だ。
低域は異例の硬質さで強力なメリハリが効いており、前身にあたるSA/4eのしなやかで
柔軟さも感じられた低域とは性格が大きく異なっている。X350は全身鋼のような
硬調な音で迫力型なのである。重量60kgという巨大なパワーアンプであり、
そのサイズや物量は低音の重厚感や馬力にも現れていて、
FM acoustics FM411 VIOLA SYMPONY Threshold SA/4eらと比較しても
頭一つ抜けており、まさにトップです。ビッグパワーアンプに相応しいダムの放水のような
膨大なエネルギー感を持ちながら、非常に細かい音までピックアップしており、
広大な空間表現のデプス(奥行)の描写力に優れているのが手に取るように分かる。
JBLのラージモニターと組み合わせて鳴らしている人が多い、非常に力強い音。
鮮度感の高さではFM411を間違いなく上回る。FM411ともう少し比較すると、
FM411の22kgに対してX350は60kgなのだから、「堂々として、タップリとした」
地響きのような重低音や一発の重さは断然X350である。もちろんウィークもあり、
気になる点としては、ときおりスティックな表情が脳裏をチラつくところだろうか。
FM411は1Ωまで保障すると同社の説明にあるが、実際には低インピーダンスの
スピーカーに弱く、大音量だとプロテクションが働いて落ちる事があったが、
X350はどんな難物スピーカーを鳴らしても、どんな大音量でも難なくこなす。
X350の駆動力は盤石の信頼があります。空間表現力を重視した結果、
現代的な寒色の音と言われたりするが、かなり長い時間通電した上、
相当音量を上げるとX350の音は大きく変化して化ける。
(暖気用のブレーカースイッチのみオンなので、待機消費電力は45W程度)
パスのアンプは故障が非常に少なく、(MOS-FETの初期不良はチラホラあったが、
現存個体はバラ付きを乗り越えていて安定している。生活家電でたまにある初期不良と同じ)
経年劣化するパーツがほとんどないので、定期メンテナンスに出す必要もない。
パワーMOS-FETの予備さえ確保しておけば保守の心配はほとんど必要ない。
サウンドクオリティーの高さや物量からするとX350の価格は異例の安さで、
メンテナンスフリー(点検不要)、そして故障がかなり少ないと
ネルソン・パスの献身的でユーザーの立場に立った姿勢には感銘を覚える程だ。
(長年機器を入れ替えてきた人ならありがたみが身に染みてわかる)
もともとパワーアンプは接点の多いプリアンプと比較すると経年劣化による
メンテナンスの必要性は少ないが、何十年という長期間、音質の劣化や
故障によるトラブルもなく"完全メンテフリー"を掲げられるモデルはほとんどない。
天板の発熱はそれほどないが、発熱を逃がす左右のヒートシンクは触れていられないほど
盛大に発熱するので、左右の空間のないラック内に入れるのは
ヒートシンクの放熱を妨げるので厳禁です。このモデルは音は良いのだが、
発熱と消費電力の多さに悩まされて手放す方が多いです。X350は90WまでA級動作する。
パスのアンプはバランス(XLR)端子が音質的に優位ですが、X350は
アンバランス(RCA)端子も装備している。X600以上はバランスのみで、
アンバランスを変換して入力すると機器がトラブルを起こすのでやってはいけないと
SS誌のX600試聴記に書いてある。X350本体のACインレットは20Aなので
電線マニアの方には注意が必要。ケーブルは自作するか、Cardas Audio社の
電源ケーブルが全てのラインナップで20Aのバージョンを用意しているので
付属品との交換が可能である。
スーパー・シンメトリーの進化形!
消費電力は大体ですが600W(ピーク)くらいです
350W+350W (8Ω) 寸法W483×H267×D559mm 60kg
搭載されていた出力段のパワーMOS-FETはVishay IRF9610×4個 IRF610×10個でした。
stereo sound №129 184P(X600) 574P(X350の試聴記)
stereo sound №132 230P(X350の座談会形式の感想)
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内部観一枚目
天板は六角レンチ 4.0mのサイズで開けられます。マイナスドライバーでフロントパネル側と
背面パネル側にある天板の隙間から上にこじ開けると良いです。
戻す時は"グッと"強く押し込めばOKです。
内部観二枚目
ダストブロアー(ダストスプレー)でホコリを飛ばし、掃除機で浮き上がったホコリやゴミを吸い取ります。
最後はシルコットで空拭きして仕上げます。
搭載されていた出力段のパワーMOS-FETはIRF9610×4個 IRF610×10個でした。
購入先は下記URLから、ただしFETの寿命は半永久的とされ、70年経っても
問題なく動作している例もある。
http://jp.rs-online.com/web/p/mosfet-transistors/5430046/
http://jp.rs-online.com/web/p/mosfet-transistors/5429462/
フロントパネル中央の円形メーターは出力段のバイアス電流値を表示するもので、
アンプの故障や異常動作、スピーカーケーブルのショート(短絡)などのトラブルを監視できる。