PASS Laboratories ALEPH 0s | 禁断のKRELL

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ハイエンドオーディオやヴィンテージオーディオを語っていきます。

 


 PASS Laboratories ALEPH 0s ステレオパワーアンプ 1994年 アメリカ ¥520,000

(4,000US$)




純A級のその先へ、

「シングルエンドA級」








非常にHOTで濃厚で肉感的、熱っぽく語りかけてくる女性ボーカルで一級品のアレフシリーズ、
ALEPH 0sはファーストモデルのモノラルアンプとほぼ同様の内容をステレオ一体型に凝縮し、
ハーフプライスにコストダウンした製品で、アレフシリーズで日本でもっとも売れたモデルである。
よく聴き込んでいくと、モノラルで倍の価格だったALEPH 0との差はやはり感じられる。
音場感のよさはALEPH 0譲りなのだが、チャンネルセパレーション(分離感)で差があり、
少々の雑さが感じられる瞬間があった。とはいえクオリティ感がかなり高く、
現代的で高分解能なハイファイサウンドはほぼ同様で、繊細でシャープなサウンドは

かなり保たれている。低音を膨らませるタイプではなく、スッキリと削ぎ落として
クオリティの高さを狙ったサウンドデザインをしており、CELLOや真空管アンプのE.A.Rなどと
共通の狙いが感じられる。したがって本機にKRELLのような大迫力を求めると不満も出るが、
クオリティの高さと味わい深い芳醇な真空管テイストなサウンドを強靭なトランジスターの
ドライバビリティーで実現しているメリットは大きく、この方向性は他にほとんど例がない。
筋肉質なエネルギー感ではKRELLであり、音像表現のリアルさではALEPHが格段に優れている。
ファーストモデル0の独特の大人っぽい雰囲気が薄れて、活きのよい鮮度の高さ、フレッシュな
反応の早さが新たに加わったのが好ましい。
しなやかで伸びやかな音の質感がある。
左右の信号が干渉し混濁する様子は感じ取れるが、ステレオ機はセンター音像の密度感において
充実しており、得意のヴォーカル再生ではむしろ0より好ましいのではと思わせるものがある。
ウォーミングアップ時間の長さは気にかかる。最低でも信号を入力して1時間は経過しないと
音が良くならない。ベストには3~4時間以上かかる。出力は40Wでかなりの大音量を破綻なく
出すことができるが、やはり耳がピーンとなるほどの大爆音となると音像が徐々に崩れ始め、
音が割れたりして再生が破綻してしまった。アレフと相性の良い大型高効率スピーカーを
ドライブしてこの結果なので大音量再生派にはあまりお勧めできないが、
高温の発熱体が二台になること、消費電力が二台で600Wに達する事も考慮すると
コンパクト・ディメンションで消費電力も300W、発熱も一台に抑えられるメリットは大きい。
発熱は0よりも0sの方が熱くなる。小~中音量、高品位、自然体の音で静謐な音楽鑑賞に向く。
相場はモノラルの半額程度だと思われ、故障がほとんどなくメンテナンスフリー(点検不要)
リペア(修理)の必要がないメリットを考えるとかなりお買い得だ。

コンストラクションも非常にシンプルで修理は容易である。オリジナルのパワーMOS-FETは
米国市場のデッドストックを探すしかないが、HARRIS IRF244の代替品も容易に手に入る。
パワーデバイスは初期不良があるのと発熱処理を怠ると壊れるが、基本的に50年以上~
半永久的に使える筈だ。したがってラック内設置は厳禁。
電源ケーブルの交換で
音質変化が大きいパーツ点数の少ないシンプルな構成だが、残念ながらACインレットの
差込口が狭く、無改造で使える電源ケーブルは限られる。Ortofon PSC-3500 XG Silverと
LUXMAN JPA-15000がお薦めだ。
低域のボリューム感を出したい場合は
DACやプリの電源ケーブルにTRANSPARENT PLMMかNBS BLACK LABELⅡを
使うと良かった。FM Acoustics FM155との相性は抜群によい。
爆音で11時くらいまでボリュームを上げる事ができたのは、本機のゲインが低い事に
加えて出力が40Wしかないためだろう。

 

 

電気代の問題もあり、あまりお勧めできないが、このアンプは寝覚めが悪いので常時通電が音が良い。

 

 

ただし、プリアンプの支配力とJBLのダイナミクスもあり、懸案のダイナミクスに関しても
不満が無い程度には持っていくことができる。ハイコスパでお薦めのパワーアンプです。
独立後の初期モデルだけあって(躓くことが出来なので)一般層にかなり媚びた音で、

暖かく、色っぽく、魅力的な音色。でもなぜかあまり人気がないんですよね。

こんなにいいアンプなのに・・・・・・ベースラインが柔らかくなる事や

見た目や発熱で敬遠されているのだろうか。若者にはKRELL、中高年の方には
ALEPHをお薦めしたいが、この分け方も定型的で、個人の好みによって様々だろう。
サウンドクオリティーが高く、色気もドッサリあるからその点では心配は要らない。





入力バランス1系統、アンバランス1系統 
40W+40W(8Ω) 寸法:W305×H267×D305(mm) 重量:32.2kg




LPジャケットサイズのキュービックな外観は0とまったく同じですが、
両手で持った体感ではALEPH 0片側よりも、ALEPH 0sのほうがはるかに重く感じられた。



米本国仕様の120Vのモデルを持っているが、中を開けてみるとかなりホコリが蓄積されていた
五年に一度でよいので中を開けてエアダスターでホコリを取り除きたい。
ホコリの堆積はパーツの温度上昇を招き、故障の原因となる。後述するが扇風機で
左斜め後方から背面パネル側を強制空冷したい。温度の上昇(高温多湿)は電子機器の
故障の原因となる。
大陸地域のほうが島国で熱帯性気候もある高湿度の日本より
乾燥していて保存環境がよいのでアメリカ本国保管品が好ましいと思い入手した。
120Vのほうが音が良かったという経験もある。


大音量再生には限界があるが、メンテフリーで故障もほとんどなく音も良いので
FM411のスワップ (飽き防止) と、故障時の予備機として現在も所有し、スタンバイしている。




一例をあげると、テレビクルーが外気温70度という世界一の高温を記録したジブチ共和国の
ロケではカメラの故障を避けるためにカメラに冷却パッドを当てたり、
地面に置いた"デジタル温度計"が地熱のあまりの高さに壊れる瞬間が映し出されていた。






巨大な青色のブロック電解コンデンサーが搭載されているが、こうした大きなタイプは経年
による電解液枯渇(劣化)がほとんどない。
米国と日本向けで共通だが、上部回路基板の
コンデンサーは日本仕様が電解コンデンサー6個に対して米国仕様はタンタルコンデンサー
6個とパーツ構成に違いがある。小さな電解コンデンサーは経年劣化で交換が必要になるが、
タンタルコンデンサーは経年劣化しない種類のコンデンサーであり、
基本的に交換の必要が無い。つまり米国仕様のほうがより親切なメンテナンスフリー設計
思想を貫いていて、
「これで商売になるのだろうか?」とパス社の経営が危ぶまれるほど、
アンプ作りの鬼才、ネルソン・パスの使う人の身に立った親切で献身的な人柄が想像できるようだった。


つまり音が良く魅力的な音色を持っているのにかなり壊れにくく、万が一壊れても
容易に直せるということですね。ネルソン・パスはサービス精神に溢れているといいますか、
とにかくアレフシリーズは凄く良いモノですが、これを大人しい音と感じる人も多いんでしょうね。


サウンドクオリティーが高く、現代のモデルに肉薄しており、音質差は少ない。
壊れない、点検すら不要というメリットも大きく、手元に一台、非常にお薦めのモデルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ALEPH 0

Ver1.0~1.3まで
IRF230 ×16個
IRF9231 ×8個

Ver1.4~1.6まで
IRF244 ×16個


四面どれでもよいのでヒートシンクを開けると外枠に搭載されたパワーMOS-FETが
確認できる。正面左側がお薦め。弄り止めか?米国インチ規格9/64と4.0mmの二種類の六角レンチが必要だった。

ALEPH 0の後期型、ALEPH 2とALEPH 0sも全てパワーデバイスはIRF244である。
正式名称はインターナショナル・レクティファイアー・ヘックスフェット社のメタルタイプの
パワーMOS-FETである。IR IRF244現在はほとんど流通しておらず、
パワーMOS-FET自体の寿命は半永久的とされるが熱の影響もあるので
現実には寿命が存在し、現在稼働している個体は素子の素性の良いものが
生き残っているはずであるが、やはり今後の長期使用にはわずかばかり不安が残る。
(代替品なら簡単に手に入る) FETの故障は過大負荷、衝撃、高温の三つが原因であり、
常時通電を止める、オープンエア環境で使う。(周囲との空間を十分取る)
強制空冷を取り入れるなどの対策を取ることが望ましい。
ALEPHシリーズは基本的には故障がほとんどなくメンテナンスフリーをうたった製品である。



エレクトリ様に頂いた回答


PASSでは、特性を揃えた素子を採用していました。
弊社では、輸入元としてPASSから供給を受けたパーツでのみ修理を行い
動作保障をしておりました。

(パーツの)持ち込みによる修理は承っておりません。


頻度は多くありませんが、(ALEPHの)故障のほとんどがMOS-fetの不良によるものです。
(発売後数年はMOS-fetの故障でよく戻ってきたが、ただし、現在残っている個体の
素子は素性が良く安定していると思われる) また、熱によるヒューズホルダーの
樹脂部分の劣化による不良、サーミスタの劣化不良などもあります。

ヒューズホルダーとサーミスタの実装位置は背面の端子パネル側なので
"左斜め後ろ"側から端子部分に風が当るようにサーキュレーター(扇風機)を当てて
やるのが望ましい。理想的には反対側からもう一台運用するとなお良い。



弊社ではPASS Labs.に限らず、取扱い全ブランド製品の修理におきまして、
持ち込みパーツでの修理は、動作保障及び音質保障ができないため承っておりません。
したがいましてAlephのMos-FET不良による不具合は修理不可になってしまいます。

※エレクトリではALEPHシリーズの修理受付自体は現在も行っている。

※ALEPHシリーズのパワーMOS-FETはPASSから供給がなく市場に代替品もないので故障の際は修理不可になります。

※エレクトリは正規取扱店経由でしか修理を受け付けておらず、現在待ち時間は
作業着手まで二ヶ月ほどとのこと。


料金は二万円+パーツ代で割安。パワーアンプなら実際にこの値段で収まるそうだ。
ただし、修理不可の場合は返却となり点検費として一万円が徴収される。