今年も日本競馬界の夢はかなわなかった。世界最高峰のレース、第103回凱旋門賞(GⅠ)がパリロンシャン競馬場で16頭によって争われ、日本からただ一頭参戦したシンエンペラー(栗・矢作、牡3)は12着。11度目の参戦となった武豊騎手騎乗のアルリファー(愛=J・オブライエン、牡4)は11着に敗れた。勝ったのはブルーストッキング(英=R・ベケット、牝4、父キャメロット)で、GⅠ3勝目を飾った。


またも、日本競馬界の悲願は打ち砕かれた。シンエンペラーは見せ場を作れず12着に沈んだ。坂井騎手がさばさばとした口調で振り返った。

「ちょっと残念な結果になってしまったんですけど、やりたいレースはできたかなと思います。やっぱりチャレンジしなければ勝てないですし、今後の糧にしていきたい」

スタートして道中は5、6番手を追走。最後の直線に入る前にややにポジションを下げると、伸びは見られずそのまま後退した。

矢作調教師が初めて凱旋門賞の存在を知ったのは、メジロムサシ(18着)が挑んだ1972年。当時、11歳だった少年はラジオで聞いた日本馬のチャレンジに胸を打たれ、凱旋門賞制覇を夢見た。調教師になってからも思いは変わることなく、何度もパリロンシャンに足を運んで準備を重ねてきた。

2022年フランス・アルカナ社のセールで購入したシンエンペラーは、20年の凱旋門賞を勝ったソットサスの全弟。当初からこのレースを意識していた。前走の愛チャンピオンSで非凡な根性を見せて3着に善戦。希望が見えたレースで、本番に向けて機運は高まっていた。中間は広大なシャンティイ調教場で意識的に運動量を増やして体力をつけさせ、状態は上昇カーブを描いていたが、世界の壁は想像以上に分厚かった。「残念という言葉しか出ない。アイルランドのときより遥かにいい状態で、スタッフはよく頑張ってくれた。ちょっと敗因が分からない。瑠星はよくやってくれたし、調教師の力不足。ちょっと何も考えられません。また日本に帰って頑張ります」とトレーナーは気持ちを新たにした。