◇15日 大相撲名古屋場所2日目(ドルフィンズアリーナ)

 首の大けがにより7場所連続で休場していた西序ノ口13枚目の炎鵬(29)=伊勢ケ浜=が、420日ぶりに本場所の土俵に復帰。一時は寝たきり状態だった元幕内の人気力士は取組後、涙ぐむ場面があった。

 序ノ口の取組では、まず見られない景色が再出発を彩った。しこ名入りの応援タオルが揺れる中、炎鵬が土俵に帰ってきた。7場所連続休場の原因となった首などの負傷の不安を振り払うように、頭から突進。十両だった昨年夏場所9日目以来、420日ぶりの一番は黒星だったが、復活の第一歩に温かい拍手が注がれた。

 初めて番付にしこ名が載った2017年夏場所以来、7年ぶり2度目の序ノ口で再出発。清水海(境川)の上手出し投げで土俵を割ったが、引き揚げて第一声は「最高です。相撲は最低でしたけど」。苦笑しながらも、目を輝かせた。

 首の負傷は当初、椎間板ヘルニアと公表していたが、実際は脊髄損傷の重傷。途中休場した昨年夏場所後に入院し、2週間近く寝たきりだった。リハビリは手でひもを結んだり、ペンで文字を書くことから始まった。相撲どころではなかった。

 つらい日々を思い返して「言葉にならない。感謝しかない」と声を詰まらせ、涙ぐむ場面も。「ここから一日一番、命懸けと言ったら大げさだけど、いつ最後になるか分からない。後悔のないように」と力を込めた。

 否定を原動力にしてきた。昨年の秋場所前、稽古を再開すると「無理だ」という声が耳に入ってきた。数カ月前まで日常生活すら危ぶまれた身には、自然な言葉。角界に飛び込んだ7年前と同じだった。

 現在は167センチ、100キロの小兵。入門時は体重3桁が目標だった。「当時も『無理』と散々、言われた。そういう意見を驚きや喜ぶ声に変えようと頑張ってきた。今回も一緒」

 今の炎鵬にとって相撲とは。「自分の生きがい。相撲がなかったら、今の自分はない。相撲が好きなんで、まだまだこれから、全てを懸けていきたい」。昭和以降、幕内経験者が序ノ口まで番付を落とすのは6人目。相撲愛を燃やし、20代最後の場所からはい上がる。

◆序ノ口に転落した元幕内(昭和以降)

力士名 場所

琉鵬  2012年夏

舛ノ山  16年秋

鏡桜   21年名古屋

旭大星  22年九州

石浦   23年名古屋

炎鵬   24年名古屋