過去最多の56人が立候補し、投開票日の7日を迎えた東京都知事選。3選を目指す無所属現職、小池百合子氏(71)の都政2期8年の評価や少子化対策、防災対策などが主な争点となったが、選挙ポスターや政見放送の内容を巡る問題も浮上した。有権者は今回の選挙戦をどうとらえ、新しい東京のリーダーに何を望むのか。

法規制が必要では

「ポスターがふざけている人、売名目的の候補が多かった。海外でもニュースになるほどだったので、日本の恥さらしになるようなことはやめてほしかった」。不動産開発会社に勤める新宿区の男性(23)は、苦々しげな様子で振り返る。

選挙ポスターを巡っては、全裸に近い女性の画像を載せて掲示板に貼った候補者に対し警視庁が警告を出したり、同一デザインのポスターが掲示板を「ジャック」したりする事態も起きた。

新宿区の会社役員、伊藤晴康さん(67)は「ポスターに関しては、そんなに多くなくていい。投票所の前にだけ設置していれば十分だ」。葛飾区の会社員、今村勉さん(57)も「立候補は自由だが、最近はモラルの問題がある。法律で要件を引き上げるなど、立候補者の絞り込みも必要だと思う」と話した。

渋谷区の会社員、中村祥眼さん(27)は「自分たちの選挙権を弄ばれていると感じる。声を上げやすい環境の確保と、単なる売名行為への対策を両立することは難しいが、これから考えていかなければならない課題だと感じた」と語った。

同区の不動産業、藤原邦子さん(77)は、立候補者が過去最多となったことについて「現実的でない候補者が多すぎる。投票率の低下を危惧しているのでぜひ若者にも投票へ行ってほしいと思うが、この状況では声を掛けづらい」と、寂しげに話した。

世田谷区在住の男性会社員(25)は「情報収集しようにも、政策とは関係のない余計な情報があふれており、政見放送も選挙公約も長すぎてとても見る気になれなかった。全部目を通して投票に来る有権者は、ほとんどいなかったと思う」と、ため息。目黒区のエンジニアの男性(29)も「候補者全員を追いきれなかった」とこぼした。

注目、悪くない

一方で、良くも悪くも注目を集めた選挙戦となったことを、前向きにとらえる意見もあった。

SNSなどで候補者の情報収集をしていたという世田谷区の主婦(36)は「立候補者の乱立自体が良いとは思えないが、子供同士でも話題になるなど、関心を高めたことは確か。今まで選挙に行かなかった層が行くなど、良い面もあった」と振り返る。

葛飾区の女性会社員(50)も「(乱立した立候補者が)変な人ばかりで、都民として恥ずかしいが、選挙が盛り上がることは悪くないと思った」と述べた。

税金、うまく使って

有権者に選ばれた新しい都知事に望むことについては、それぞれの立場から意見が相次いだ。

葛飾区の歯科衛生士、小島久美子さん(56)は「都民税を有効活用してほしい。今は子供や老人に使っているが、中間層に事業支援などで使ってほしい」と注文。

大学で防災について学んでいるという同区の小島苺(いちご)さん(19)は「東京は川が多く、海抜も低い。ビルや人も多く、複合災害が起きやすい」と、災害対策の充実を望んだ。

新宿区の会社役員、伊藤真理さん(62)は、主要な争点の一つとなった少子化対策について「東京のマンションは1LDK以下ばかり。家族向けのマンションを増やしていかないと、根本的な解決には至らない」と指摘。保育士をしているという葛飾区の男性(27)も「出生率を上げる政策を出してほしい」と望んだ。

一方、足立区の男性会社員(35)は、都内で外国籍の居住者が増加していることを念頭に「不法移民などの対策もしっかりしてほしい」と、注文をつけた。