社員の退職希望を企業側に伝える「退職代行」サービスを巡り、連絡を受けた企業の7割が賃上げなどの対応で社員の引き留めを図ったことが、東京商工リサーチ(TSR)の調査で分かった。調査に答えた企業全体の1割が、退職代行からの要請を受けた経験があり、サービスの利用が広がっている実態も明らかになった。

調査は6月3〜10日、インターネットによるアンケート調査を行い、5149社から回答があった。それによると、代行サービスを利用した退職は、退職者全体の9・3%を占めた。資本金1億円以上の大企業では18・4%、中小企業は8・3%がサービスを利用した退職となり、規模が大きくなるほど利用する割合が高かった。

退職代行から連絡を受けた企業側は、退職希望者を引き留める手立てとして、73・5%が「賃上げ」を提案したと答えた。大企業は84・9%、中小企業でも72・2%が賃上げを打診したという。「休暇日数を増やした」も全体の24・4%が行っていた。こちらは中小企業が25・2%、大企業は17・7%行っていた。さらに社員旅行など「社内レクリエーションの実施」(10・5%)、「テレワーク導入」(8・5%)などがあった。

退職代行を利用したケースは接客業が目立った。最多が「洗濯・理容・美容・浴場業」の33・3%で、百貨店などを含む「各種商品小売業」が26・6%、「宿泊業」が23・5%と続いた。TSRでは、「待遇改善だけでなく、職場環境や人間関係などデリケートな問題にも目を配る必要がある」と分析。「退職代行サービスの浸透が、『円満退社』という言葉を死語に追いやる契機になるかもしれない」と働き方の変化を指摘している。