藤井聡太名人(21)が初防衛を果たした。27日、北海道紋別市「ホテルオホーツクパレス」で行われた、将棋の第82期名人戦7番勝負第5局で挑戦者の豊島将之九段(34)を下した。

26日午前9時からの2日制で始まった対局は、豊島の意表を突く四間飛車に対し、金銀2枚を固めた居飛車穴熊で対抗。激しい攻め合いの末、リードを奪った藤井がジリジリと差を広げて押し切り、シリーズ4勝1敗で初防衛を果たすとともに、8冠(名人・竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)を堅持した。

対局場の窓から見下ろせるオホーツク海の先に、名人初防衛が見えた。藤井がギアを上げる。美濃囲いにした豊島玉へと攻め立てる。2016年(平28)10月デビュー以来、棋士人生で最北のタイトル戦となる流氷の街で、豊島の挑戦を退けた。

北海道でのタイトル戦は過去5戦5勝。24都道府県と海外対局(ベトナム・ダナン)のタイトル戦訪問地のうち、7戦7勝と最多の静岡県には及ばないが、京都府と並んで2位タイと、好相性の北の大地で決めた。

今シリーズは開幕局の逆転勝ちから始まった。これまで角換わりと相掛かりを主に採用してきた豊島は、研究手筋ではなく前例にない趣向を凝らしてきた。

この傾向、一昨年10〜12月の竜王戦(広瀬章人現九段)あたりから見られている。藤井にとって初見と思われる局面をぶつけられるケースが目立つ。その包囲網をかいくぐり、受けて立って結果を出してきた。

前々年度にB級1組から前年度A級に初めて昇級し、1期で名人に挑戦して獲得したのは谷川浩司九段、羽生善治九段、佐藤天彦九段といる。この3人は全員、次年度に初防衛している。藤井が仲間入りした。

31日には同学年の伊藤匠七段(21)に1勝2敗と初めてタイトル戦でかど番に追い込まれた、叡王戦5番勝負第4局が控えている。負ければ初の失冠となる。名人初防衛で弾みをつけてここも踏ん張り、最終第5局(6月20日、甲府市)へと望みをつなげる。