◆JERAセ・リーグ DeNA4―3広島(29日・横浜)

 DeNAのドラフト1位・度会隆輝外野手(21)が、球団64年ぶりの偉業をやってのけた。広島戦に「1番・右翼」で出場。初回先頭の守備で照明が目に入って安打とする“ミス”があったが、3回に右中間へプロ1号同点3ランを放った。球団の新人開幕戦アーチは1960年黒木基康以来。2024年のプロ野球1号にもなったルーキーの一発が効き、現役時から続く三浦監督の開幕戦連敗は「10」で止まった。

 スタンドインと同時に、度会は2度、ほえた。そして右拳を豪快に振り下ろした。0―3の3回1死一、二塁。九里の初球スライダーを青く染まった右中間席に放り込んだ。今季12球団1号は新人10年ぶりの開幕戦アーチ。球団では60年の黒木以来、64年ぶりの偉業を達成し、お立ち台で4度、「最高でぇ〜す!」とシャウト。「開幕戦に勝てたことが一番うれしい。その中でホームランも打てたのでダブルで幸せ」と頬を緩めた。

 転んだままでは終わらなかった。開始直後の守備。菊池の打球にダイレクトキャッチを試みるも、照明と重なり捕球できなかった(記録は安打)。ほろ苦デビューになるかと思われたが、ここ一番で値千金の同点3ラン。「描いた通りのスイングでホームランを打てた」。跳びはねながら仲間とハイタッチを交わし、実力とスター性を実証した。

 挫折が度会を大きくした。横浜高では1年春からベンチ入りし、夏には甲子園の土も踏んだが、3年時のドラフトでは指名漏れ。明るくて前向きな男が落ち込み、翌日の授業を欠席した。だが、1日で心身をリフレッシュし、2日後にはケロッとした姿で練習に顔を出した。同校の村田浩明監督(37)は「切り替えの早さは本当にすごい」と証言し、「一度、乗り越えた壁が大きい。しっかり乗り越えたからこそ自信になっている」とプロ向きの性格に太鼓判を押す。

 この日は21年から交流があり、師と仰ぐイチロー氏(50)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=から「とうとう開幕だね。無理して頑張りなさい」とショートメールで背中を押され、奮い立った。「アメリカで見ててくれると思うのでホームランを打てて良かったです」。会心の一撃で現役時から続く三浦監督の開幕戦連敗を「10」でストップ。「野球がなかったら、今の自分は絶対にない」と言い切るハマの一番星がロケットスタートを切った。

◆プロ10年ぶり14人目

 ▼…ルーキーの度会(D)が同点3ラン。開幕戦で新人が本塁打は、14年の西浦直亨(ヤ)以来、14人目(1リーグ1、セ6、パ7人)。チームでは60年の黒木基康以来、64年ぶり2人目だ。殊勲(先制、同点、勝ち越し、逆転)の一発は89年の中島輝士(日)以来6人目。過去の13人に満塁本塁打はなく、3ランは3人目になる。

 ▼…同じく新人の石上(D)も1安打。開幕戦で同一チームの新人が2人そろって安打は、18年の巨人(田中俊太、大城卓三)とロッテ(藤岡裕大、菅野剛士)以来。前身球団を含めチームでは初めて。