現代最高峰のピアニストの一人で、高松宮殿下記念世界文化賞(音楽部門)受賞者のマウリツィオ・ポリーニ氏が23日、死去した。82歳。地元イタリアのメディアが伝えた。

1942年、イタリア・ミラノ生まれ。父は高名な建築家、ジーノ・ポリーニ。5歳でピアノを始め、60年、18歳で出場したショパン国際ピアノコンクールで審査員全員一致で優勝。審査委員長だった名ピアニスト、アルトゥール・ルビンシュタインが「技巧的にはわれわれの誰よりもうまい」と激賞したほど、技術は卓越していた。

しかしその後、演奏活動から遠ざかり、ベネデッティ・ミケランジェリらのもとで研鑽(けんさん)を積み68年、再デビュー。曲ごとに音調が変わる分析力、美しい音色で世界にセンセーションを巻き起こし、以後、現役ピアニストの先頭を走り続けた。

ショパンやベートーベンらロマン派や古典派の演奏で定評があるが、現代音楽の語り部を自認。ルイジ・ノーノやピエール・ブーレーズら20世紀以降の作曲家の作品も主要レパートリーにした。95年に自ら企画し、日本を含む世界各国で開催した「ポリーニ・プロジェクト」では、古典と現代音楽を並べて披露し、大きな反響を呼んだ。

録音でも、円熟期に改めてショパンと向き合った「夜想曲集」(2007年のグラミー賞器楽部門など受賞多数)など、生涯追究を続けた。2010年に第22回世界文化賞を受賞。

漆器や黒澤明監督の映画を愛する親日家でもあり、来日公演は20回近くを数えた。