大相撲春場所9日目の18日に現役を引退した元幕内照強(29)=伊勢ケ浜=が19日、エディオンアリーナ大阪で会見を開いた。14年間の力士生活を終え「悲しい気持ちもさみしい気持ちも、第二の人生へワクワクする気持ちもあるが、何よりもホッとした気持ち」と穏やかな表情で心境を語った。

 糖尿病の影響で、昨年春場所からは幕下での土俵が続いていた。初場所中に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に相談し、引退を決断。春場所を休場していた。「自分の相撲がとれなくなった。もうここまでかなと、自分の中で悔いのない決断ができた」と経緯を明かした。

 169センチ、110キロ台の小兵ながら、気迫あふれる取り口と足取りなど多彩な技を武器に、幕内を22場所務めた。思い出の一番は2020年7月場所14日目、足取りで勝った大関朝乃山戦。同部屋の照ノ富士の復活優勝をアシストした取組を挙げ「自分の相撲人生の誇り。相撲人生で一番良かったかな」と振り返った。

 阪神・淡路大震災が発生した1995年1月17日に、震源地に近い淡路島で生まれた関取ということでも話題を呼んだ。「たくさん注目されたし、しっかりとやり切れたんじゃないかな。阪神・淡路だけじゃなく、被災された方々に『こういう力士がいるんだ』と見ていただいて、少しでも勇気づけられたらと思っていた」と思いを吐露。強くなって被災した地元を明るく照らす力士に、との願いをしこ名に込めた伊勢ケ浜親方から「よく最後まで頑張った。十分やってくれたんじゃないですか。稽古する力士はみんなのお手本」などと称賛されると、涙をこらえるようにギュッと唇を結んだ。

 今後は未定で、日本相撲協会には残らない。「いろいろやりたいことはたくさんある。ゆっくりと行き先を決めたい」と話した。6月23日に両国国技館で断髪式が行われる。