藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖=21)が同学年の伊藤匠七段(21)の挑戦を受ける、将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第3局が3日午前9時から新潟市「新潟グランドホテル」で行われた。対局は午後6時53分、早めに動いて局面を優位に進めた藤井が105手で押し切った。

これで対戦成績を2勝1分けとし、棋王初防衛と8冠堅持、自身の記録を更新する「タイトル戦21連覇」へ、あと1勝とした。第4局は17日、栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」で行われる。

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藤井がギアを上げた。目指すは5筋の伊藤玉。急所を見つけた。天王山の5五の地点に香を打ち込む。自陣の安全を確認した上で、「行けていてもおかしくない」と決め手を放つ。桂と角も合わせ、中央から攻めかかる。得意の終盤の切れ味がさえ渡り、午後6時53分、伊藤を投了に追い込んだ。

序盤はスイスイと指し手を進めた。「前例が多くない形。やってみよう」と採用した、角換わり腰掛け銀からの研究手順をぶつける。持ち時間各4時間の将棋は正午の昼食休憩時、45手まで進んでいた。「認識のない展開」と終始、頭をひねっていた伊藤は1時間22分の時間を使った。藤井はわずか19分の消費だった。

中〜終盤、いったん局面は落ち着く形となった。自陣の飛車、角が押さえ込まれると厳しい。「どういう方針を立てるか悩んで、難しい将棋だった」。そこで時間を投入して考えをまとめ、攻めをつなぎきった。 

2月10日の朝日杯決勝では、永瀬拓矢九段(31)を相手に全く逆の立場となって敗れた。見たことのない陣形にてこずって神経を消耗した。持ち時間各40分の早指し戦で気がつけば、永瀬はたった1分しか消費しておらず、39分を消費した藤井は1手60秒未満で指さなければいけない「1分将棋」となっていた。その反省も生かした。

1年前の棋王戦第3局も、同じ新潟グランドホテルが会場だった。渡辺明棋王(当時)に連勝して臨んだが、1分将棋の末に詰み筋を逃して敗れた。タイトル保持者として臨んだ今期は、8冠王としての貫禄を示した。

第4局は昨年、棋王を初めて奪取して史上最年少6冠に輝いたのと同じ対局場。今回は初防衛がかかる。「そのことは意識せず、いい状態で臨めるように調整していければと思います」。いつも通り、ひょうひょうとしていた。