日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲春場所(3月10日初日、大阪府立体育会館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇琴ノ若(26=佐渡ヶ嶽)の大関昇進を正式に決定した。かねて大関昇進後に先代師匠の祖父・元横綱琴桜のしこ名を襲名する計画があった中、春場所は「琴ノ若」のままで挑むことを決意。まずは父で師匠の佐渡ヶ嶽親方(55=元関脇琴ノ若)から受け継いだ名前で恩返しを果たす。

「新大関琴ノ若」が誕生した。相撲協会からは花籠理事(元関脇太寿山)と鳴戸親方(元大関琴欧洲)が使者に立ち、千葉・松戸市内の部屋で佐渡ヶ嶽親方と琴ノ若に昇進を伝達。琴ノ若は「謹んでお受けいたします。大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って相撲道に精進してまいります」と緊張した面持ちで口上を述べた。

 伝達式には、中高時代に6年間指導を受けた埼玉栄高相撲部の山田道紀監督(58)も出席。口上について琴ノ若は「難しく考えないで、自分が思ったことを素直に言った。『感謝の気持ちを持って』というのは、小さいころから先代にずっと言われていたし、中学と高校で山田先生から教わった。その言葉は絶対入れたいと師匠に話をした」と説明。遺影に映る祖父がそばで見守る中で、大関としての覚悟を見せた。

 かねて大関昇進のタイミングで「琴桜」のしこ名を襲名する計画だったが、父と同じ「琴ノ若」に思い入れがあった。3月の春場所は改名せずに臨み、5月の夏場所から「琴桜」を襲名する意向を明かした。琴ノ若は「29日には、ある程度考えは固まっていたけど、昨日師匠と話をした。一場所でもこの名前で大関として、土俵に上がりたいという思いがあったので、それを伝えた」と明かした。

 幼少期から、父が土俵で戦う姿を見て育った。父がたどり着けなかった大関昇進を果たし、恩返しのために「琴ノ若」を使い続ける。佐渡ヶ嶽親方は「昨日も30分ほど話をして『先代の師匠との約束を守ったからいいぞ』と伝えたけど、本人の琴ノ若で恩返ししたい気持ちがすごく強かったので、『一場所だけでも、おまえがそういう気持ちならいいよ』と。関脇で引退しているので、その名前を大関まで上げてくれているのは師匠として、親としても感謝ですね」と感慨深い表情を見せた。

 まずは、春場所を「琴ノ若」で初優勝を目指す。