「フィギュアスケート・全日本選手権」(23日、ビッグハット)

 来年3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)の代表選考会を兼ねて行われた。男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(トヨタ自動車)が、フリー2位の193・35点、合計298・04点。大会連覇と本田武史、羽生結弦に並ぶ歴代2位の6度目優勝を果たし、世界選手権の代表に内定した。

 勝負師の顔がのぞいた。最終グループで宇野までに滑った5人全員が4回転を2本以上成功。転倒者もいなかった。会場の盛り上がりは最高潮の中で迎えた最終滑走。「僕じゃなかったら相当緊張したと思います」と笑うような状況だった。「ここでふがいない演技をするのはよくないなというのがあった。ここで僕がいい演技をすることでこの試合を最高のものにする」と勝負のリンクに入った。

 冒頭の4回転ループがステップアウトになったが、その後のフリップを着氷。4回転−2回転の連続トーループ、単独の4回転トーループも降りた。最後のジャンプはトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)からの3連続を予定していたが、アクセルが不調だったため、急きょ前半に単独で跳んだ。安定感を求め、当初3連続を予定していたところは単独の3回転サルコーでまとめた。「結果的に勝ちにいってるのは間違いない」。勝負にこだわり、表彰台の頂点を死守した。

 世界選手権では4回転6種全てを成功させたイリア・マリニン(米国)、アダム・シアオイムファ(フランス)ら、合計の自己ベストが300点超えのライバルがそろうことが想定される。頂上決戦に向け、この日のフリーで3種4本だった4回転を増やす可能性があるかと問われると、「まず僕はこの競技人生に悔いを残したくないのが一番にある。ジャンプを増やしたいのは山々なんですけど、表現をおろそかにしてまでジャンプを増やしてしまうと(表現で納得できていなかった)昨年までと同じになってしまう」と説明。「悔いのない演技ができるところまでもっていったところで、余裕があれば4回転を増やすのはあるにはあるけど、本当にそれぐらいしなければマリニン君と戦うのも難しい。僕よりも難しい構成で安定感があるので、とても勝つのは難しいと思うけど、最高のものを出せる調整ができたらと思いますし、視野にいれたい」とプランを語った。

 国内頂上決戦で得た刺激は宇野のモチベーションを高めている。「競技人生で最高の演技をしなければ勝てない。無難な演技でも2位、3位にしかなれない。最高の調整をして、優勝を狙う」。日本男子初の3連覇は、強い気持ちでとりにいく。