群馬テレビの取締役会が22日開かれ、武井和夫社長の解職決議が賛成多数で承認された。同日付で中川伸一郎専務兼報道局長が社長に昇格した。群馬県内唯一の地方テレビ局で、労働組合によると、武井氏は「ニュースなんか一つも流さなくていい」と発言し、有料の契約を結ばない自治体を取材しないよう求めるなど、過度な経費削減や頻繁な人事異動を繰り返したとされ、筆頭株主の県も問題視。労使対立が異例のトップ解職に発展した。

 関係者によると、22日の取締役会では、解職決議の理由について「(経費削減のため番組制作の外注をやめる)業務の内製化が性急で強引」などと説明があった。武井氏は退席し、県や県議会などの取締役から反対意見はなかったという。武井氏は群馬銀行出身で、2014年6月に就任していた。

 同社は7月からニュース番組を10〜20分短縮。労組によると、武井氏は9月の組合との交渉でニュースの制作費が高額過ぎるとして、「(ニュースは)NHK前橋放送局に行ってもらえばいい」とも発言した。

 同社社員は3月時点で58人だが、8月までの3年間に25回延べ122人を人事異動させ、未経験者に番組を制作させるなどして誤った映像を流すなどのミスが頻発していたという。

 労組が頻繁な人事異動や過度な経費削減の改善を求めたところ、看板アナウンサーが営業部に異動するなど、組合幹部ら5人が9〜10月に別の部署に異動。労組が10月、県労働委員会に救済を申し立てていた。

 武井氏は代表権のない取締役となった。社長に就任した中川氏は「マスメディアとしての社会的責任を自覚し、信頼を取り戻し、必要とされるテレビ局でありたい」とコメント。労組の前島将男委員長は「申し立て以降、力添えしてもらった関係者に心より感謝する。県民から温かい言葉をもらい、まだ地元テレビ局を思ってもらえていると深く知った。誠実に頑張りたい」と述べた。

 また、同県の山本一太知事は「社内外の取締役が、武井氏の経営姿勢では失った信頼を取り戻せないと考えた結果だ。早急に労使関係の改善や経営改革に取り組んでほしい」との談話を出した。