ホタテを1人5粒食べて――。宮下一郎農林水産相は29日の会見で、こう呼びかけた。東京電力福島第一原発の処理水放出で、中国と香港が日本の水産物の輸入規制を強化。影響の大きい北海道などのホタテについて、国内での消費を促して水産業者の被害を最小限にとどめるねらいだ。
農水省によると、日本国内から中国と香港に年17万9千トン(2022年)のホタテを輸出していた。貝殻付きのホタテ1枚は200〜250グラムという。この重さで計算すると、国民1人あたり年5〜7粒食べれば、行き場を失った輸出分の多くを消化できるという理屈だ。日本国内の消費量は年22万トンで、これも含めると年十数粒になる。
宮下氏は「#食べるぜニッポン!」と書かれたプラカードも掲げ、「毎月1粒ずつ年12粒食べてほしいが、1粒ずつはちょっと無理なので、数個入ったホタテ料理を年に2回食べて応援してほしい」と訴えた。
国内消費の課題について、宮下氏は「大量に輸出していたものがスムーズに国内で流通できるかどうか。レストランまで安定供給できないと、メニューがつくれない」と述べ、流通体制の強化にも力を入れる考えを示した。
22年の水産物の輸出額は3873億円。トップが中国の871億円で、このうちホタテが467億円を占めた。2位の香港も755億円のうちホタテが約140億円だった。