囲碁の中学生棋士、仲邑菫(なかむら・すみれ)女流棋聖(14)が、韓国棋院に「客員棋士」として登録を申請したことが11日、関係者の話で分かった。韓国棋院に承認された場合、仲邑女流棋聖は来春にも韓国棋院に移籍してプロ活動をする方針。囲碁の強豪国の韓国でさらなるレベルアップを図るのが目的とみられ、日本棋院所属の日本人棋士が海外の棋院に移籍するのは初めてとなる。

 関係者によると、仲邑女流棋聖は7月、韓国への移籍を日本棋院に申し出て、日本棋院側もその意向を受け入れたという。韓国棋院は今月13日に棋士総会を開催し、仲邑女流棋聖の登録の可否を協議。その後、今年末か年明けの韓国棋院運営委員会で正式承認する予定だ。

 「客員棋士」として登録されれば、試験を受けずにプロ棋士としての活動が可能となる。仲邑女流棋聖は韓国棋院に完全移籍する形で、来年1月から行われる女流棋聖戦の防衛戦を終えた後、3月上旬にも韓国に渡るという。

 ◇日本棋院理事長「積極的に応援」

 日本棋院の小林覚理事長は「より高いレベルで囲碁の技量を高めたいという気持ちは当然で、チャレンジを積極的に応援したい」とコメントを出した。

 仲邑女流棋聖は大阪府出身。3歳で碁を覚え、2019年4月、世界で戦う棋士を育てるため日本棋院が新設した「英才特別採用推薦」の適用を受け、10歳0カ月の史上最年少(当時)でプロ入りした。22年6月には、史上最年少の13歳3カ月で100勝を達成。さらに、今年2月の女流棋聖戦で上野愛咲美女流立葵杯(21)を2勝1敗で破り、13歳11カ月でタイトルを獲得。藤沢里菜女流本因坊(24)が持っていた女流タイトルの最年少獲得記録(15歳9カ月)を大幅に更新した。

 仲邑女流棋聖は、囲碁を通じた韓国との結びつきが強く、小学2年の7歳の時に渡韓し、囲碁道場や韓国棋院で修業した。また今年、韓国女子囲碁リーグに外国人棋士として参戦し、現在も現地で対局を行っている。

 韓国棋院には、世界最強棋士の申真諝(シン・ジンソ)九段や女流最強棋士の崔精(チェ・ジョン)九段らトップクラスの棋士が多数在籍。10年のアジア競技大会でも韓国チームは、金メダルを3個獲得している。