2016年12月年末、不動産屋から家のオーナーがインスペクションをしたいと言っているという連絡が入り、インスペクションという生まれて初めて聞く単語に戸惑ったのですが、日本の賃貸物件で言うと1年に1回程度大家さんが訪ねて来て家の中の不具合やどのように暮らしているかを確認するという恒例行事の様なものだそうです。
オーストラリア留学経験のある妻からも海外では珍しいことではないとも教えてもらいました。
妻のオーストラリアの友人曰く1年で一番憂鬱な日と言っていたり、最初子供が3人と偽って不動産屋と契約してそのまま過ごしていたので、何か言われる可能性があるかもという心配が相まって、抜き打ち検査的にオーナーに子供4人だったと嘘がバレて最悪出て行かされるという地獄のシナリオまで想定するハメになり、インスペクションが実施予定となった12月28日まで少し神経質にならざるを得ませんでした。
当日僕が子供達を連れて外に出かけて妻だけがオーナーに会うとか、長女にオーナーが帰るまでどこかに隠れておいてもらうとか隠蔽工作を一瞬考えましたが、嘘を付きながら暮らしていくのはストレスですし、長く住むならいずれバレることなので「子供3人ではなく4人でした。嘘ついて契約してすみません。」と正々堂々ストレートに対峙し、結果を受け止めるということで意見が一致しました。
妻など性格的に特にナーバスになりインスペクションに対する情報をかき集めて不安を払拭する様努めていましたが、インスペクションに関する情報は希薄でした。
基本「まあたぶん大丈夫やろ」的思考のかなり楽天的な僕でも、出て行けという最悪のシナリオ通りの場合は苦労した家探しを一からやらないといけないことや物理的な引越など金銭的に相当困窮することが容易に想像出来てしまい、ソワソワした数日間を過ごすことを余儀なくされ、最悪の勧告が出た場合はヒーターの調子などが不十分だという小さな抵抗の準備をしようかと本気でムダな作戦を練ったりもしました。
12月中旬にようやく届いた引越船便の荷物の片付けを急ピッチで行いつつ、オーナーがどこを見ても文句の付けどころがないように念入りに整理整頓と掃除をし、12月28日インスペクション当日は朝から子供達にはおもちゃ禁止令が敷かれ、僕等夫婦のこれまでない程の落ち着かない緊張感を察してか、子供達もおもちゃを出したりそこら辺を散らかしたりすることなく良い子で過ごしました。
午後に来るという不動産屋の伝言だったので、13時頃から今か今かと家のチャイムが鳴るのを待っていましたが、いつまで経ってもオーナーは現れず、16時半頃妻が不動産屋にメールでまだオーナーが来ない旨を伝えるも「もう間もなく行くと思います。」というような返事でしたが、結局この日オーナーは現れず、何の連絡もないまま1日を終えました。
来ると言った日に来ないというのはオランダに来てから日常茶飯事で、こちらはまじめに家に居るよう心掛けているので正に時間を棒に振る訳ですが、先方は言う通りに出来なくてごめんとか、事前に連絡をくれるとかは一切なく、相手の時間を奪っている概念自体が存在しないようで、しれっと予定の2日後ぐらいに現れたりするのです。
これは日本人には考えられないオランダの常識で、待っている側が連絡して初めて遅刻やキャンセルが成立するとか。後に同じ様な事象がある度に検証した結果、導き出した結論(持論)です。
現れないということは何かしらの事情があったということ、聞かない方が悪いと言うことのようです。これは慣れたらダメな文化だと個人的には思います(笑)
翌日妻が不動産屋に「結局来なかったけど、オーナーはいつ来るの?」とメールすると「昨日は遅くなってしまったみたいで行けなかったそうなので、今度は12月31日はどう?」と返って来たので、怒り心頭気味の妻が「OKだけど来る時間ははっきり教えて!で、予定変更するなら事前に必ず電話して来て!」とメールを返すと「OK。じゃあ13時頃伺うそうです。」という返信が。
妻が更に「13時頃(about)じゃなくて13時(at)ね!」と返してからは返信はそこで途絶えました。
いささか日本流を押し付けた形でしたが、大晦日に訪ねて来るなんて日本じゃ考えにくい文化のオランダでは日本の常識は通用しないので、とにかく思っていることをハッキリ言った方が良いという若干ですが強気の心構えです。
12月31日、再度インスペクション当日。
午前中買い物から帰って来る車中で妻の携帯が鳴り、オーナーからで「11時45分頃に早まってもいい?」という内容でした。
「OK」と返事をし家に帰ると11時45分ジャストにチャイムが鳴り、待望?の高身長の明るいおじさんオーナーがようやく現れました。ハッキリ伝えたかいがあったのでしょうか?
一応玄関にスリッパを置いておきましたが、やはり気付かず靴のままリビングに入って来ましたがここはもうしゃーない部分です。
「この前はごめんねー」と言ってくるものだと思っていましたが、そんなことは全く忘れている、と言うより別段悪いとは思っていない様で、とても気さくな方で何を言っているかあまり分からない僕でも嫌なことは言っていないというのが分かりました。
問題の子供の数ですが、恥ずかしそうに「ハロー」と言う4姉妹を見て「わー4人も! いいなー!! うちは2人でもう大人なんだ。」みたいなことを言ってリビングだけを見て「きれいに使ってくれてありがとう! 長く住んでくれるとうれしいな。」と大変ありがたいお言葉。
こちらも「グッド プレイス!」と親指を立てて想いを一言に凝縮しました。
心配は取り越し苦労で、最後に「奥様と娘さんに」と日本から持って行ったヘアークリーム3種類をお土産に渡し、10分~15分程度で初となるインスペクションは終了。
3人の子供と嘘を付いた罪悪感からは解放され、良い2016年最後の日を迎えることが出来ました。




