由井寅子 『毒と私』 | 映画な日々。読書な日々。

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毒と私/由井寅子
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山口県乳児死亡事件をきっかけに「ホメオパシー」は、いつしか“悪質療法”に変えられた―なぜ真相は葬られたのか?日本にホメオパシーを広めたカリスマがいま、日本の闇を明らかにする。


日本ホメオパシー医学会会長、由井寅子さんの著書。


「ホメオパシー」にもとづく治療で、助産師の指導のもと自宅出産した山口県の女性の長女がビタミンK欠乏性出血症による硬膜下血腫が原因で死亡。


助産師が乳児にビタミンK2シロップを投与せず、代わりにレメディーと呼ばれるホメオパシーで使う砂糖玉を与えたが、生後2ヶ月で死亡してしまったというものです。


「ホメオパシー」とは「極度に稀釈した成分を投与することによって体の自然治癒力を引き出す」という思想に基づいて、病気の治癒をめざす行為。」


山口県乳児死亡事件について、乳児の死亡はホメオパシーのせいではないという主張から始まります。

私はホメオパシーのことはよくわからないですし、当事者ではないので詳しいことはわからない為、その点に関しては特にコメントは控えます。

ただ個人的にはビタミンK2シロップを投与していないのに、母子手帳にK2シロップ投与」と助産師が記載したことについての言い訳は苦しいものがあると思いました。


そんな主張から始まる本書でしたが、第1章は由井さんの伝記的なことが記されています。

文章はすごく読みやすく、ぐいぐい引き込まれました。

由井さんのこれでもか!というぐらい不幸な生い立ち・・・。

それでも母親のことを憎むわけではなく、冷静に自分の生い立ちを客観視できている由井さんはすごいし、とても強い方なのだと思ったし、そんな由井さんが格好よくも思えました。


第2章では由井さんがホメオパシーによって病気を克服、そしてホメオパシーに魅了され、学び、ホメオパスとして日本にホメオパシーを浸透させるまでが描かれています。

由井さんのその行動力がともかくすごい。

日本にホメオパシーがここまで広がったのもうなづけます。


ただ第1章で受けた印象とは異なり、この章では由井さんの若干上から目線的な、自分と考えが違う人を小ばかにするような記述が気になってしまいました。
「私は夫のパンツを洗って暮らす良き妻ではない」という記述はちょっと主婦を馬鹿にしてるとしか思えなくて。

イギリスで長く暮らした由井さんは、「物事をハッキリと言う」性格らしく、そう考えれば彼女にとっては上から目線なわけではなく、ただ自分が感じていることをそのまま言葉にしただけなのだとは思いますが。


第3章はホメオパシーに関して否定的な記事を書いてバッシングした朝日新聞の記者への逆バッシング的な内容。相手の方のことも実名で書いてしまうその勇気には脱帽。最後には朝日新聞にお礼を言いたいなんて書いているのだからある意味すごいです。


さらに第4章では予防接種の危険性などを例に挙げ、「他人の言うことをうのみにするな」というようなこと訴えています。予防接種、ワクチンに関してはとても詳しく書かれてあり勉強になりました。


ただ「他人の言うことをうのみにするな」と由井さんがおっしゃる通り、由井さんが書かれていることをそのままうのみにしてしまうのも怖い。自分で情報を集め、自分が信用できると思うものを信じるようにする必要があるのだと改めて実感。


ともかく著者である由井さんはホメオパシーに完全に魅了され、ホメオパシーがどれだけすごいものなのかということを広めたい一心でいらっしゃるので、ホメオパシーがよくわからない私は却って冷静に読むことができましたが、ホメオパシーに心酔しきってる方や、逆にホメオパシー反対派の方が読むとまた違った印象を受けるような気がします。


第1章以外は、ホメオパシーがどれだけ優れているのか、どれだけ効果があるのかということを伝える為に書かれいる感じで、”医学を否定しているわけではないけれども、何よりもホメオパシーが良い”という印象を受けた本でした。


信じるも信じないも個人の自由。

多分信じない人がレメディーを飲んでも効かない気がします。

病気は心と体の病と書かれてありましたが、まさに心に何か抱えている人こそ、ホメオパシーが効くのではないかな、なんて思いました。

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