『転々』 @テアトルタイムズスクエア | 映画な日々。読書な日々。

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転々

大学8年生の文哉は、家族もなく、孤独で自堕落な生活を送っていた。いつの間にか作った借金は84万円。返済期限まで残すところ3日という時に、借金取りの男、福原がやってきて、吉祥寺から霞ヶ関まで歩くのに付き合ったら、借金をチャラにすると提案される。返すあてのない文哉は福原の条件を呑むしかなかった。井の頭公園の橋から、男二人の奇妙な旅が始まった。調布の飛行場に着いた時、福原は妻を殺したことを告白する…。[上映時間:101分]


期待通り面白かったです。かなり私のツボの作品でした。本当は12月中に鑑賞する予定だったのですが、だらだら先延ばしにしていたら年を越してしまいました。年内に観ていたら2007年トップ5に入れていたかも。


84万円の借金が返せずに、借金取り福原に言われるがまま、吉祥寺から霞ヶ関の東京散歩に付き合わされることになった文哉。ひとことで言ってしまえば男二人がゆっくりとただ東京を散歩していく物語です。散歩しながらいろいろな人に出会ったり、二人の過去をちょっと振り返ってみたりはするのですが、どれも他愛のないことばかり。でもその他愛のないことの一つ一つがなんだかとっても良いんですよね~。


オダギリジョーの話し方からしてかなりユルユルで、最初から最後までそのユルユル感がなんとも言えずいい感じでした。そしてその中にある見事な”間”。三木監督、さすがですね。


東京散歩。目的地に向かって脇目もふらずにまっすぐ歩いていたら気づかないけれども、ゆっくり周りを見ながら歩いているといろいろなことを発見したり、いろいろな出会いがあったりする。大通りを歩いてみたり、路地裏に入ってみたり。そして普段の何気ない疑問やそういうことある、ある、というようなことを見事にネタとして提供してくれています。その場の一瞬を笑わせるネタもあれば、きちんと伏線になっているものもある。札束の1枚は私も文哉同様にすっごく気になってましたよ。何気ない会話から出てきたカレーは結構重要な意味を持っていましたしね。


三浦友和とオダギリジョーが仲良く散歩する映画だと思って観たので、最初の福原の野蛮な感じは結構驚きでしたが、その後、100万円で自分の最後の散歩に付き合わせようとする福原は逆になんだかとってもかわいらしく感じました。


お互いのことをほとんど知らない男二人が同じ時間を共有し、一緒に思い出を辿ってみたり、傷をなめあってみたり。特別大きな何かが起きるわけではありません。本当にただ目的地・霞ヶ関に向かって散歩するだけ。この二人の散歩、ただの散歩なのに全く飽きることがありません。


後半は小泉今日子を交えての擬似家族のシーンが多いのですが、この擬似家族がちょっとぎこちないのにどこか温かくて癒されるんですよ。そして擬似なのに、出かけ前のお母さんの行動とか、食卓のシーンなどが妙にリアルだったり。また親を知らない文哉が家族の温かさを感じるところなんかはちょっとホロっときましたね。そして文哉が福原に対して特別な感情を抱くようになった頃に、カレーを食べなくてはいけなくなってしまう。


オダギリジョーと三浦友和との相性もばっちりな感じでした。息の抜き方、ボソっとした話し方、二人の会話の間など、色々な要素がすごくしっくりきていて、ずっと二人を観ていたいという感じがしました。

また岩松了、ふせえり、松重豊の3人のシーンは笑わされましたね~。なんだか時効警察を観ている気分でした。この3人のシーン、ストーリーの本筋とは全く関係ないんですけどね、つむじが臭いだけであれだけ笑いが取れるのは本当すごい。ラムネにラムネはやってみたことなかったので、試してもらえてよかったです。それから三日月のカメオ出演もうれしかったですね~。


今回はこの映画に仕込まれたネタのほとんどに笑ってしまったような気がしますが、図鑑に載ってない虫 の笑いが合わなかっただけに妙にうれしかったです。


あとあまりおいしそうには見えなかったですが、レモン味だという愛玉子 がちょっと気になりました。


テアトルタイムズスクエアにて鑑賞


★★★★☆