橋本紡 『流れ星が消えないうちに』 | 映画な日々。読書な日々。

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橋本 紡
流れ星が消えないうちに

高校時代から付き合っていた恋人・加地君が自分の知らない女の子と旅先の事故で死んでから、1年半。奈緒子は、加地の親友だった巧と新しい恋をし、ようやく「日常」を取り戻しつつあった。ただひとつ、玄関でしか眠れなくなってしまったことを除いては――。深い悲しみの後に訪れる静かな愛と赦しの物語。


恋人・加地君を亡くしてから、玄関でしか寝ることができなくなった奈緒子。毎日加地君のことを夢に見ながら、加地君の親友だった巧と付き合っている奈緒子。そしてそんな奈緒子の気持を知りながら、奈緒子を優しく包んでいる巧。


この本は奈緒子と巧の視点で加地君との出会い、思い出、そして今の二人の生活が描かれていきます。


奈緒子にとっても、巧にとっても大切な存在だった加地君。

加地君が死んでから奈緒子も巧も加地君のことを思い出さない日はない。

二人とも毎日加地君のことを思い出しながら、一緒にいる時には加地君ことは触れずにいた二人が加地君のことを話せるようになった時、やっと少し前に進むことができたのかな、と思いました。

加地君のことを忘れるのではなく、死んだ加地君と一緒に生きていく。


巧が本当にいい奴なんですよね。亡くなった恋人のことをずっと忘れられずにいるとわかっている子と付き合うのは苦しいはず。だけど巧は奈緒子が加地君のことを忘れることができずにいることを受け入れ、奈緒子を本当に大切にしている。

でもそれはきっと巧も奈緒子と同じぐらい加地君のことを大切に思っていたから、加地君が大切にしていた奈緒子だからなのかな。


奈緒子と加地君が付き合うきっかけになった文化祭での出来事は、奈緒子の視点で書かれていた時はなんだかロマンチックだなぁと思い、そして巧の視点で書かれたのを読んで謎が解けたような気持になりました。


突然感情を噴き出してしまった奈緒子。そのきっかけは加地君が奈緒子を好きになったきっかけ。加地君が奈緒子を変えようとしてくれたような気がしました。


またこの本の中で奈緒子のお父さんが沢山でてきます。奈緒子とお父さん、そしてお父さんと巧の関係もなんだかとってもいいなぁと思いました。


登場人物がみんなとても優しい雰囲気を持っていて、読んでてとても穏やかな気持になれました。

死んでしまった人の存在はとても大きくて、消すことも超えることもできないけれど、色々な思いを抱えながらも、無理をせず自然体で生きていこうとする姿が優しく描かれています。

切ないけれどとても暖かい本でした。


★★★☆