先日の宴の後遺症が酷かった為、今日はいつもの通いの温泉に朝から足を運んだ。
今日は徹底的に毒を抜く覚悟でスポーツ・ドリンクも大量に買い込み露天に向かうが、その前に一服しようと喫煙コーナーに立ち寄った。
ガーデン・チェアーに座り、煙草に火をつけ何の気無しに下を見ると、
「・・・デカッ!」
今まで見たことも無い、艶々と黒光した蟻がノソノソと歩いている。
何だ? この蟻は?
体長は胴体だけで1,5cm、脚まで入れたら2cmになる。
その周辺には小さい蟻が奴より早いスピードで往き交っている。
一体こいつは何処に向かうんだろう?
と席を立ちしばらく様子を伺っていたが、歩くのが本当に遅い。
もう諦めて再び席に戻った。
すると、背中にゴソゴソと這い上がってくる奴がいる。
背中に振り向き視線を注ぐと、
「うげっ!」
茶色のカメムシが登ってきてるではないか!
臭いを発せられたら一巻の終わりだ。
そぉ~と席を立ち出来るだけ遠くに行きタオルで払い除けた。
(ふぅ~っ、間一髪だった~)
確かに此処の露天は緑が豊富なので、様々な生き物の楽園なんだろう。
今日はもう鳴いていなかったが、先週の土曜日は蝉がまだ鳴いていた。
煙草も喫い終り、一番奥の高台の露天に向かった。
また一番乗りだ。
飲み物もセットして湯に浸かる。
「あぁ~ きもちいい~~」
湯加減も丁度いいし、じっくり汗を掻けそうだ。
うつ伏せに寝そべり、しばらく寝る体制に入った。
ウトウトしてたら、いつの間にか五人ほど増えていた。
そこに小さな娘さんを連れたママさんが入ってきた。
(あぁ~、やっぱり小さい娘さんて可愛いなぁ、うちの娘も小さい頃よく連れて来てたよなぁ・・・)
と、昔を思い出していた。
「ママー! あかトンボだよ!」
「あ~、本当だ。」
(あ‶ー、いいなーこういうの)
「ママー! ふたつオシリくっつけてとんでるよー!」
「あらっ、ほんとだね。」
「ママー! なんでおしりくっついてるの?」
(げっ! ママさん、どうすんの・・・)
「ほら見てごらん、トンボさんがハートの形してるでしょ。あれはね、トンボさんがキスしてるのよ。」
んっ? と思い、仰向けに体制を変えて見てみると、本当だ! ハートの形して2匹で飛んでる!
(ママさん、上手い! やられた~)
(お嬢ちゃん、お願いだから「オシリにくちはナイヨ!」なんて言わないでね・・・)
と、そこにいた殆どの大人はそう思っていたに違いない。
「ワー! すごーい!」
(ふぅ~ よかった。)
安心して飲み物を口にし、またうつ伏せに戻して寝る体制に入った。
それからしばらくの間、ウトウトしてたら耳元に突然、
『ブゥォオーーン!』
と、デカい音がする。
何だぁ? と顔を上げて目を開けると、
「っうわぁあーー!」
オオスズメバチだ!!!
慌てて湯の中に飛び込んで潜った。
(!!!ビックリしたーー!!!)
心臓がドキドキしてる。
とにかく、弩がつくほどデカい!
体長5cmは優にあり、丸々太っている。
湯から顔だけ出して様子を伺う。
まだ辺りを飛んでいる。
1m位離れていても羽ばたき音が聞こえる。
ここは、やり過ごすまでしばらく待とう。
あっ! 他の人に知らせなきゃ! と振り返って、
「オオスズメバチです! 皆さん気を付けてください!」
と言った途端、皆一斉に上がりだした。
何故かオオスズメバチは私の辺りから離れようとしない。
(これじゃあ、上がれねぇーじゃん、俺・・・)
湯から顔を出したまま少しづつ距離をとって遠退いた。
しばらくしたら、そこから遠くに立ち去ってくれた。
・・・誰も居なくなってしまった露天で独りまた湯に浸かる。
そこで私も皆と一緒に上がっていれば良かった・・・・・・
水分の補給を済ませ、湯船の縁に仰向けに寝そべり日光浴をしていた。
またウトウトと・・・
んっ? 何か、お腹の辺りがコソコソする・・・
目を開けて自分の腹を見た。
『ゲェエーーーッ!!!』
前とは比べ物に為らない絶叫を心の中で上げた!
オオスズメバチが・・・!!!
う・ご・け・な・い・・・
でっ・でっ・で・か・い・・・
心臓・バクバク・いってる・・・
こういう時は刺激を与えては、いかん、いかん・・・
俺の腹の上で何してんだよぉーー
勘弁してくれよぉーー
何だよ! 羽音がしなかったじゃねーかよぉーー
早く何処かに行ってくれよぉーー
『ブゥォオーーン!』
「ヒィイーーッ!!!」
腹から飛び立った瞬間、湯の中に慌てて飛び込み潜った!
潜水して遠くに離れて顔を出す。
もう何処かに飛び去っていた。
一体、今日は何なんだ???
荷物をまとめこの露天から立ち去ったのは言うまでも無い。
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