今月も歌舞伎座に観劇に行ってきた、猿若祭二月大歌舞伎の昼の部、11時開演、3時20分終演、席はいつもの3階A席、そこから見ると満席に見えた、来ているのは例によって圧倒的にご婦人たちだ
「猿若祭」は、寛永元(1624)年に江戸で初めて幕府公認の芝居小屋「猿若座(のちの中村座)」を初代猿若(中村)勘三郎が建てたことが江戸歌舞伎の発祥とされることから、その発展を祈念して、昭和51(1976)年に十七世中村勘三郎を中心に歌舞伎座で始まった公演、今回の「猿若祭」は、歌舞伎座で3年連続、7度目、本年で50年の節目を迎えた
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一、 お江戸みやげ
川口松太郎 作、大場正昭 演出
(配役)
お辻/中村 鴈治郎
おゆう/中村 芝翫
阪東栄紫/坂東 巳之助
お紺/中村 種之助
角兵衛獅子兄/中村 歌之助
女中お長/中村 梅花
行商人正市/中村 寿治郎
市川紋吉/中村 歌女之丞
鳶頭六三郎/坂東 亀蔵
常磐津文字辰/片岡 孝太郎
(ものがたり)
- 結城から江戸へ反物(結城紬)を売り歩く対照的な性格の後家のばあさんコンビ、お辻(中村鴈治郎)とおゆう(中村芝翫)が主人公の喜劇、江戸で1年分の稼ぎを手に入れた二人は酒を飲んで気が大きくなって歌舞伎見物をして人気役者・阪東栄紫(坂東 巳之助)に惚れ込んで推しに熱狂したり、思わぬ騒動に顔を突っ込む、二人のでこぼこした会話で笑って、江戸の町の活気など描き、最後はしんみりする人情物語
(観劇の感想など)
- イヤホンガイドによれば、この二人が観たのは湯島天神でやっていた宮地歌舞伎である、当時歌舞伎は「江戸三座」以外は認められていなかったため寺社の境内で見世物興行の形で黙許されていたもの、そして、この宮地歌舞伎は江戸三座の歌舞伎に比べると格下になり、阪東栄紫は元江戸三座の歌舞伎役者だったが人気がなくなり落ちぶれて再起を図っている境遇であった
- 主役のお辻を演ずる鴈治郎はキャラクターとしてひょうきんなところがある歌舞伎役者だと思っている、この日のイヤホンガイドの説明でも、鴈治郎が三谷幸喜の作品に出演した時に三谷幸喜からこんなにコメディセンスのある人だとは思わなかった、もっと早く出会いたかったと言われた人であると聞いて、やはり、と思った
- この日の演目ではコメディアン的な役というよりは、田舎者の世間知らずなおばさんが都会で商売がうまくいって安心し、歌舞伎を初めて見て舞い上がってしまう悲喜劇を演じるものであり、うまく演じていたと思う
- お辻の相方であるおゆうを演じた中村芝翫であるが、何だかやはり少し太ったなと感じた、そして、役柄としてはこうした役にはあまり合っていないように感じた、むしろ、この日の弥栄芝居賑の猿若町名主幸吉の役や、呉服屋の主人などの貫禄ある役の方がお似合いではないかと思った、ただ、イヤホンガイドによれば、この役は芝翫のお父さんである七代目芝翫が得意としていた役であり、6回演じたという、当世芝翫は今回が初役というから、今後、役柄を広げるためにも頑張ってほしいと思った
- 阪東栄紫の坂東 巳之助は非常に良い感じであった、かつての江戸三座の役者としてのプライドから田舎後家のお辻をぞんざいに扱うのかと思ったら、丁寧に接し、いったん別れた後でも再度お礼を述べるためにお辻を探すなど真面目なところのある歌舞伎役者をうまく演じていたと思った、これは巳之助の地が出た演技ではないかとさえ思った
二、鳶奴
(配役)
奴/尾上 松緑
(ものがたり)
- 江戸の風情や粋を感じさせる快活な舞踊演目、主人から言いつけられて大切に持っていた「初鰹」を鳶にさらわれてしまった奴(武家や町家の従僕)が、鳶を追いかけ、何とか鰹を取り返そうと奮闘する様子を踊る、江戸の町人文化の粋と活発で軽妙な面白さがある舞踊
(観劇の感想など)
- 10分程度の短い風俗舞踊、松緑が鳶に初鰹を奪われる間抜けな男をうまく演じていた
- 音楽は長唄連中であり、総勢10名くらいで演奏していたが、その中心に唄い方の杵屋勝四郎と立三味線の杵屋巳太郎がそろって出演していた、久しぶりに御両名揃い踏みであったが、巳太郎の方は例の週刊誌報道があったせいか、まだ暗い顔つきで演奏していたのが気になった、もともと軽妙洒脱でユーモアセンスもある人なんだけどね、いつまでも引きずりなさんなと言いたい
三、猿若祭五十年 弥栄芝居賑(いやさかえ しばいのにぎわい)
猿若座芝居前
(配役)
猿若座座元/中村 勘九郎
猿若座座元女房/中村 七之助
男伊達/中村 歌昇、中村 萬太郎、中村 橋之助、中村 虎之介、中村 歌之助
女伊達/坂東 新悟、中村 種之助、市川 男寅、中村 莟玉、中村 玉太郎
呉服屋松嶋女将吾妻/片岡 孝太郎
猿若町名主幸吉/中村 芝翫
芝居茶屋扇屋女将お浩/中村 扇雀
猿若町名主女房お栄/中村 福助
呉服屋松嶋旦那新左衛門/片岡 仁左衛門
(ものがたり)
- 「猿若祭」にゆかりが深く、主に中村屋(勘九郎・七之助)の興行や平成中村座などで、祭の幕開けとして上演されてきたもの、歌舞伎のさらなる繁栄(弥栄)を寿ぐ、非常に華やかで賑やかな一幕
- 江戸時代の猿若座を舞台にし、芝居小屋の木戸前(入り口)が華やかに描かれ、中村座の座元夫婦(勘九郎と七之助)が登場し、舞台の成功と歌舞伎の弥栄を願う口上を述べ、出演する役者たちが歌舞伎の登場人物(男伊達・女伊達など)の姿で勢ぞろいし、賑やかに挨拶を交わす「口上」の要素を持つ芝居仕立てであり、お祝いの言葉とともに、今回は三三七拍子をお客さんと一緒にやった
(感想など)
- 中村屋とゆかりの役者が勢揃いした華やかな演目であった、仁左衛門のセリフの中に勘九郎に向かって「俺が生きている間に勘三郎を襲名しろ」というのがあった、勘九郎は1981年生まれで45才、親父の勘三郎の襲名は49才であるから、もうそろそろ襲名のことは考えていることでしょう、それが楽しみである
四、積恋雪関扉(つもるこい ゆきの せきのと)
(配役)
関守関兵衛実は大伴黒主/中村 勘九郎
小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精/中村 七之助
良峯少将宗貞/八代目尾上 菊五郎
(ものがたり)
- 雪の降る逢坂山(滋賀県・大津市)の関を舞台に、天下を狙う悪人の大伴黒主と、300年余りの樹齢を持つ桜の精が繰り広げる妖しくも美しい常磐津の大曲
- 雪の降り積もる逢坂山に咲き誇る季節外れの満開の桜、先帝の忠臣・良峯少将宗貞(八代目菊五郎)のもとへ、恋人の小野小町姫(七之助)が訪ねて来る、関守の関兵衛(勘九郎)は二人の馴れ初めを聞き、取り持つが、実はこの関兵衛の正体は天下を狙う大伴黒主で、そこに関兵衛を口説く傾城墨染(七之助)が姿を現し、それぞれが本性を現すぶっ返り、黒主の「荒事」のすごみと、桜の精(墨染・小町姫)の「和事」の艶やかさのコントラストが、舞踊の技巧と共に描かれる
(感想)
- 映画「国宝」にも登場したという演目、少年時代の喜久雄が宴席で 父が招いた花井半次郎の前で踊ったものだそうだが、知らなかった
- 1時間30分と長い演目で3人だけの出演で単調な気がしたのか途中で何回も眠くなって寝てしまった、ただ、菊五郎、勘九郎と七之助の演技は良かった
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さて、今回の猿若祭であるが、予定では中村鶴松(1995、中村屋)が初代舞鶴を襲名し、それを披露するはずであったが、例の事件の報道により取りやめになったのは残念であった、先月の新春浅草歌舞伎で観たばかりだったので、いっそうがっかりした、この業界も役者の不祥事が多すぎるのではないか
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さて、幕間の楽しみはお弁当と甘味、この日はいつもの通り三越銀座の地下で、日本橋弁松の弁当と仙太郎の桜もちにした


















































