遠くでスズメがチュンチュン鳴いている
ふと目を開け、窓を見るとすでに朝陽が昇っていた
パジャマ姿にボサボサの髪の毛のままリビングに行くと、テーブルの上には美味しそうな朝食が並べられていた
それらをたいらげると、見計らったようにブラックコーヒーと朝刊の新聞紙が差し出された
気の効くやつだなぁ
心の中でそう呟き、熱々のコーヒーをすする
朝のニュース番組を見ていると、星座占いのコーナーが始まる。もうこんな時間か
アイロンがかけられ、シワ一つないワイシャツに袖を通し、ネクタイを締め、ピカピカに磨かれた革靴を履く
「行ってらっしゃいませ」
会社へと向かう彼の背中を見て言う
始めの角を曲がり、彼の姿が見えなくなるまで見守る
それが終わると次は皿洗いと洗濯が待っている
いざ、作業に取りかかろうとした瞬間、こめかみ部分にあるスピーカーからアラームが鳴った
どうやらバッテリー切れのようだ
そそくさと充電器の元まで行き、満タンのバッテリーと交換する
この交換作業をする度に軽い自己嫌悪に陥っていた
今時、バッテリータイプの召し使いロボットなんて私くらいだろう
科学の進歩によって、現在普及しているロボットの9割はバッテリーの交換の要らない、自己発電タイプだった
一通り作業を終えると少し時間に余裕が出来た
財布片手にデパートに行き、そこで大好物の今川焼を買う
早く今川焼を食べたいがために急いで家へと帰る
家に着くとポストに一枚の紙が入れられていた
「定期メンテナンスのお知らせ」
紙の一番上に大きな文字でこう書いてある
召し使いロボットは年に一度、メーカーによる定期点検を受ける必要があった
言わば自動車の車検と同じである
またこの時期がやって来てしまった。憂鬱で仕方なかった
けれど点検を受けない訳にも行かない
行くしかなかった
点検当日、製造工場に行くと他にもたくさんのロボットが定期点検を受けに来ていた
けれどほとんどが新型で自分だけが型落ちのロボットだった
周りの視線が痛い
5~6体で固まりを作り、笑いながらこっちを見て小声で話している
来るんじゃなかった。今日だけで何度そう思ったことだろうか
点検が終わり、支度をする
早く帰って溜まっている仕事を終わらせなければならないのだ
カバンの中身を確認していると、あることに気付く
替えのバッテリーが壊れている
裏面を見ると「失敗作」という文字が書かれていた
惨めさと怒りを覚えながら逃げるように製造工場を後にした
家に着くとすでに彼は帰っていた
電話で誰かと話している
しばらくすると
「いえ、ですから結構だと仰ってるじゃないですか!」
と声を荒げ、電話を切った
どうしたんだろうと彼を見ていると、それを察したのか、彼はこう言う
「大きな声出してごめん、今のはメーカーからの電話で
お宅のロボットはもう古いので新しく買い換えませんか?って」
どういう表情をしたらいいのか分からなかった
「今はもう生産もしてないから部品も無いんだってさ」
その言葉を聞いて愕然とした
すなわち、今のバッテリーが切れれば私はもう動けなくなるということになる
泣きたかった。けれど泣いたところで現状はなにも変わらない
ただ、その日の仕事を淡々とこなしていった
時折、彼の姿を、彼の顔を見ては作業を進める
それしか出来なかった。
遠くでスズメがチュンチュン鳴いている
ふと、目を開け窓を見るとすでに朝陽が昇っていた
パジャマ姿にボサボサの髪の毛のままリビングに行くと、棚からシリアルを取りだし牛乳を入れ、お湯を沸かしてコーヒーを飲み、朝刊を取りにポストまで歩いて行く
シワシワのワイシャツに袖を通し、ネクタイを締め、くすんだ革靴を履く
そして玄関を開け、言う
「行ってきます」