『DUNE/デューン 砂の惑星』原作・第1部『砂丘』のネタバレの詳しいあらすじ(再掲) | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

 2021年10月15日公開の『DUNE/デューン 砂の惑星』と2024年3月15日公開の『DUNE/デューン 砂の惑星 PART2』の原作である、フランク・ハーバート作『デューン 砂の惑星』のあらすじを紹介する。原作は3部に分かれており、その第1部『砂丘』を紹介する。なお、旧訳版は2巻に分かれている。

作者:フランク・ハーバート 1965年  翻訳:矢野徹

主な登場人物…役柄

【アトレイデ家】

ポウル・アトレイデ…アトレイデ公爵家の世継ぎ。

レト・アトレイデ…公爵。ポウルの父。

レイディ・ジェシカ…公爵の妾妃。ポウルの母。

スフィル・ハワト…公爵家のメンタート(人間電算機)。

ガーニイ・ハレック…公爵の副官

ダンカン・アイダホ…公爵の副官

ユエ・ウェリントン…公爵の医師

ジャダウト・メイブズ…フレーメン。公爵家の家政婦。

【フレーメン】

スティルガー…フレーメンの族長。

カインズ博士…惑星生態学者。

【ハルコンネン家】

ウラディミール・ハルコンネン…男爵。

パイター・ド・ブリース…男爵家のメンタート。

ファイド・ラウサ…男爵の甥。

キネト…男爵の部下。

チゴ…男爵の部下。

アマン・フドゥー…男爵の親衛隊長。

イアン・ネフド…男爵の親衛隊伍長。

【皇帝側】

ガイウス・ヘレン・モアヒム…ベネ・ゲセリット学校の教母。

【その他】

リンガー・ビュウト…水積み出し業者。

エスマール・チュエク…密輸業者。

 

『第1部「砂丘」前編』

 砂漠の惑星アラキスは、老人病のための香料メランジを採掘する権利をCHOAM(協同公正重商高度推進)公社と結んだハルコネン家が準領土として保有していたが、皇帝の命によりアトレイデ家の領土となった。アラキスにはフレーメンと呼ばれる砂漠の民が住んでいた。

 アトレイデ家が惑星アラキスに出発する前、カラダン城のポウルの母で公爵の妾妃ジェシカに、ベネ・ゲセリット学校の教母ガイウス・ヘレン・モアヒムが来る。ポウルは教母からテストを受け、金属の立方体の箱の中に右手を入れると、激痛を感じる。教母は苦痛に耐えるように言う。手を抜くと何もなかった。教母はポウルをクイサッツ・ハデラッハ(精神力によって空間と時間の間に橋を架けられる男性)かもしれないと言う。

 ウラディミール・ハルコンネン男爵は、パイター、ファイド・ラウサに、皇帝の命令によりアトレイデ公爵にカラダンとアラキスを交換させるのは、復讐による計画だと話す。ジェシカをファイド・ラウサに与える約束だ。パイターはメンタート(人間電算機)の能力を見せ、公爵とその家族が使う元伯爵フェンリングの邸宅に、アトレイデ家の嗣子の命を奪う試みが行われると話す。レトの医師ユエの帝国式条件反射は破られており、ハルコンネン男爵の支配下にあった。ハワトがジェシカを疑うように仕向け、その隙にユエの手引きで、ハルコンネンの制服に扮装したサウダウカー(大王皇帝の狂信的兵士)が侵攻する計画だ。ハルコンネン家はCHOAM公社の支配権を握ることになる。公爵レトは砂漠のフレーメンの元に逃げようとするだろうが、その通路は惑星生態学者カインズによってブロックされている。男爵がアトレイデ家を亡ぼし、ハルコンネン家は1年以内に惑星アラキスに準領地を所有することになる。

 教母はジェシカに、娘を産んでハルコンネンの世継ぎと結婚させるという計画が、息子を産んだために台無しにしたと責め、ジェシカとポウルが逃亡者になり、命を狙われると予言する。

 教母はポウルを呼び、夢の話を聞く。ポウルは夢の中の洞窟で海を知らない少女に会い、外には砂が広がっていた。教母はポウルに、クイサッツ・ハデラッハになるヒント「負けるが勝ち」と教えて去る。

 スフィル・ハワトはカラダン城の訓練室でポウルに会う。ポウルはアラキスの嵐について調べており、時速700キロメートルにも達して、あらゆるものを破壊すると知る。ハワトは、そこでは水が貴重で、フレーメンはスティルスーツを着て自分の水を再利用しており、ハルコンネン家を増悪していると教える。

 ポウルは教母が言った事を思い出す。「世界は4つの物、賢者の知識、偉人の正義、正しき者の祈り、勇者の勇気。統治の技術を知る為政者がいない限り、あんたの大切な科学とするんだよ」。さらに教母は「いい統治者は、彼の世界の言葉を学ばなくてはならない」と言っていた。ハワトは「ドアに背を向けて座るな」と注意して去る。

 ポウルはシールドを付け、ガーニイ・ハレックと練習用の剣で訓練する。ハレックはポウルに激しく攻撃を仕掛けて相打ち寸前でやめ、アラキスでは現実だと警告する。次にポウルは練習用人形で訓練する。

 ドクター・ユエが訓練室にやって来る。ポウルはフレーメンについて尋ねる。ユエは、フレーメンの目は血液中のメランジを沢山含んでいるため、全て青く白目がないと話す。砂虫(サンドワーム)は、長さ400mにもなる。砂漠地帯と南極地方に人が住めないのは、砂虫と嵐のせいだ。ユエはポウルに、小さな古いオレンジ・カトリック・バイブルを贈り、両親には秘密だと言う。ポウルはユエの亡くなった妻ワンナが好きだったページを開いて読み、ユエはうろたえる。この本は罠だった。

 父の公爵が訓練室に来る。ポウルは、アラキスが危険な所か質問すると、公爵は「危険な事になるだろう」と答え、「メランジより大きなものがCHOAMにある」と教える。「メランジは非常に高価で、老人病の財産である。CHOAMの利益は香料に依存している。20年以上の間、ハルコンネン家が備蓄して大儲けしていた。彼らは香料の産出を失敗させ、アトレイデ家にその罪を着せるつもりだ。もう一つ重要なのは大王皇帝で、サルダウカーを送り込むだろう。フレーメンはサルダウカーと同じほど強力で獰猛な軍隊と言ってもいい。フレーメンと交渉を持つため、ダンカン・アイダホを首席とした使節団を送った」と話す。

 アラキスへは協会(ギルド)の大宇宙船に乗って行く。協会員は香料による突然変異で、人間の形をしていない。

 公爵は「もっと切迫した問題の1つは、ポウルがメンタートになる能力を持っているかもしれない」と言う。ポウルは訓練を続けると宣言する。

 ジェシカは惑星アラキスの政府都市アラキーンの屋敷に、引っ越しの荷物が運び込まれるのを見る。公爵はフレーメンの召使いを雇う。フレーメンにはベネ・ゲセリットの伝説があり、ジェシカに仕えたがっていた。

 召使いのシャダウト・メイブズがジェシカの元に来る。メイブズはクリスナイフを向け、ジェシカがベネ・ゲセリットかどうか確認するために、その意味を問う。ジェシカが「作るもの(メイカー)」だと答えると、メイブズが驚き、ナイフを差し出す。ジェシカはメイブズの血をナイフに塗り、受け取る。

 ジェシカはこの屋敷は変なところがあると感じる。ジェシカが黄色い部屋に入り、ドクター・ユエにポウルの居場所を尋ねる。ユエは「ジェシカ」と呼びかけ、うろたえて「マイ・レディ」と訂正する。ユエは「これで自分の態度に異常があっても、戸惑っているせいだと思うだろう」と考える。ユエは表の20本のナツメヤシを見て、「人々は100人の人と同じ水を必要とするナツメヤシを憎んでいる」と話す。ジェシカは「危険だけでなく、香料は私たちを豊かにしてくれる」と答える。

 ジェシカはユエに、この惑星はなぜ水が少ないのか。井戸を掘ってもすぐに干上がるのはなぜか。風水弁と沈殿器でとらえた水はどこから来るのか。と質問する。ユエは「ハルコンネンのベールに騙されている」と話す。ユエはハルコンネンに妻ワンナが殺されたか、監禁されていたので憎んでいた。

 ジェシカはユエに「この惑星全体がハルコンネンの罠だ」と話すと、ユエは「新しい風水弁と凝縮装置を設置して、水のための暴動を治めた」と話す。ジェシカは「間もなく多くの血が流れることになる」と話す。ジェシカは話している間、ユエが何か隠していると感じたが、信頼する事にする。

 ポウルは隣の部屋で、ドクター・ユエがくれた睡眠薬を飲まず、寝たふりをしていた。ポウルがベッドから出ると、ベッドの頭板の背後から小さな獲物あさり(ハンター・シーカー)が出てきた。それは暗殺用の兵器で、近くの誰かが誘導し、動く者に食いつく。ポウルがじっとしていると、ドアが開きジャダウト・メイブズが入ってくる。彼女に跳びかかろうとした獲物あさりを、ポウルが掴んで頭をドアノブに叩きつけて壊す。

 ポウルはメイブズに、父の部下の所に行って、獲物あさりを操作している者を探せ、と言うように頼む。メイブズは命を救ったポウルに、フレーメンは借りを返すと言い、裏切者がいると教え、走り去る。

 ポウルはシールドを付け、メイブズが母親に会ったと言っていた、ホールの階段下の「不思議な部屋」へ向かう。

 ジェシカは、金属の螺旋階段の上に楕円形のドアを見つけ、ドアにはハンドルが無く、掌錠だった。メイブズが来て、公爵がポウルを呼んでいると伝える。ジェシカは、ポウルが寝ている部屋を教える。

 ジェシカがドアを開けるともう1つドアがあり、中はフィルター・ガラスで黄色い光が差し込み、湿った惑星の温室で、様々な植物があった。部屋の真ん中には低い噴水があり、水が最も貴重なこの惑星で、沢山の水が消費されていた。

 テーブルには、この屋敷の安全を確認したハワトが書いたノート・パッドを見つけ、ジェシカに宛に書かれた、伯爵の夫人マーゴット・フェンリングからの手紙があった。パッドの上の葉にはベネ・ゲセリットの暗号文があり「あなたの坊やと公爵が危険にさらされている。Hは死の罠を沢山仕掛けた。ベッドも関係している。信頼している話し相手や副官の変節もある。Hはジェシカを籠臣に与えるつもりだ」とあった。

 温室にポウルが獲物あさりを持って来て、水に浸けてショートさせる。温室にハワトの部下が来て、地下室で獲物あさり制御装置を持っていた男を殺したと報告する。ポウルは、メイブズが「裏切者がいる」と言っていたとジェシカに教える。ジェシカはポウルに暗号文を教える。しかし、暗号文は仲間割れさせるための物かもしれないと、ジェシカは考える。

 ジェシカとポウルが窓の外を見ると、盆地の崖の上と平地の間で、誰かが光で信号を送っていたが、暗号は知らない物だった。ハワトの部下がポウルを呼びに来る。

 公爵レトはアラキーン郊外の離着陸司令塔にいた。公爵レトは「奴らは息子の命を奪おうとしたのだ!」と怒っていた。往復船(シャトル)が到着し、ガーニイ・ハレックがやって来る。公爵は兵をハワトに割くように頼む。協会大宇宙船は、香料を積んだ貨物船と接触を取ろうとしていた。さらに、往復船は前政府に勤めていた香料採集人を乗せて行こうとしているので、それを引き留めるように頼む。

 離着陸場の会議室でポウルは父の公爵に、獲物あさりに襲われた事と、裏切者がいる危険性について話す。スフィル・ハワトが来て、危険を見逃した事で辞職を申し出るが、公爵は認めない。他の者達と会議が始まる。スフィルは、フレーメンは味方だと報告する。また、帳簿を見ると、ハルコンネン家は莫大な利益を得ていたので、取り返すだろうと思われた。香料工場の支援設備は残していったが、壊れそうなものばかりであった。収穫工場の大きさは、長さ約120m、幅40m。シールドは砂虫を呼び寄せるので使われていない。その他、今後の経営について話し合う。

 会議にダンカン・アイダホが来て公爵に、フレーメンに偽装したハルコンネンの外人部隊と交戦した、と報告する。その時に死んだフレーメンの使者が捨てたクリスナイフを持って来て、一緒にフレーメンの族長スティルガーも連れてきた。スティルガーは公爵に忠誠を誓い、アイダホにそのクリスナイフを贈る。 クリスナイフはフレーメンの印で、これを持っていればどこのシーチ(居住地)にも入れる、非常に重要な物だ。

 砂漠に皇帝の前進基地が残されているはずで、帝国の生態学者カインズが、その在処を知っているかも知れなかった。それを設備機器の修理に使えるはずで、公爵は存在を調査させる。

 公爵はハワトに会い、幕僚会議中に言い出せなかった秘密があるだろうと迫る。ハワトは、ハルコンネンの密使から、地下組織の最高責任者へ当てられた紙片を手に入れ「攻撃が最愛の者から加えられ、それが誰か知るだけでも、レトを破滅させる」とあったと教える。公爵は驚き、ジェシカを監視させる。またハワトは、フレーメンはポウルが救世主だと思っていると報告する。

『第1部「砂丘」後編』

 公爵は離着陸場の会議室でポウルに「ハルコンネンは母ジェシカを疑わせようとする小細工をしている。それに騙された振りをして、反逆者をいぶり出したい」と伝える。もし、公爵の身に何かあった時は、ジェシカを疑った事は絶対になかったと知らせて欲しいと頼む。

 生態学者カインズ博士が離着陸場に来て、公爵、ポウル、ガーニイ・ハレックに会う。カインズ博士は公爵とポウルに、砂漠で命を守るために必要なスティルスーツを与え、公爵が感謝する。カインズ博士はスティルスーツの説明をし、2人のスーツを調整するが、初めて着たポウルは完璧だった。

 一行は鳥型飛行機(オーニソプター)に乗り、遮蔽する壁(シールド・ウォール)の端に近づく。カインズ博士は「香料と砂虫の間には関係がある。シールドを作動させると砂虫に襲われる」と教える。

 鳥型飛行機は工場クロウラー(メランジを探し集める機械類)に近づく。4機のスポッター(虫印を監視する小型鳥型飛行機)が監視していた。公爵レトは工場クロウラーに近づく大きな砂虫を発見し、カインズ博士は工場クロウラーに警告する。

近くにいるキャリーオール機が工場クロウラーを持ち上げるはずだったが、姿が無かった。公爵レトは危険を顧みず、自分たちの鳥型飛行機とスポッターに工場クロウラーの従業員を乗せて救助する。工場クロウラーは巨大な砂虫に呑み込まれる。カインズ博士は、香料より人命を大事にする公爵に感心する。

 公爵の屋敷で、民間人を招いて夕食会が開かれる。公爵はハルコンネン家が作った古い習慣を変える。水積み出し業者ビュウトが公爵に、植物室の事で挑戦的な言葉を話す。公爵はビュウトに「いつかアラキスでは、水が貴重な財産ではなくなるだろう」と牽制する。

 招待客の中には、ジェシカが頼んで入れた密輸業者のチュエクもいた。この密輸業者は高速宇宙船を持っており、最悪の事態にアラキスから脱出する手段になるかもしれないとジェシカは考えていた。

 食事会が始まり、公爵レトが大瓶の水で乾杯する。公爵レトがこれまで死んでいった人々に哀悼の意をささげて水を飲むと、残った半分を床に捨てる。それに習わなければならない客人達は、貴重な飲料水を捨てる事に困惑する。

 協会銀行の代表は公爵に、工場クロウラーが砂虫にやられた事を尋ねる。ジェシカはベネ・ゲセリットで受けた諜報活動の訓練で、この銀行家はハルコンネン家のスパイだと感じる。銀行家はアラキスの鳥は腐肉を食べ、吸血するので水が必要でないと言い、水売りの呼び声を真似する。ジェシカは「私もアラキスにおける究極の力の根源である水をコントロールしている」と解釈する。

 彼の声に嘘を感じたポウルは「皆共食いするのか」と質問し、「最悪の競争相手は同類の中から現れる」と銀行家に皮肉を言う。銀行家は「フレーメンは死人の血を吸う」と言うと、カインズ博士は「水分だ」と訂正する。銀行家はカインズをフレーメンの様だと言い、カインズは怒る。銀行家はうろたえ、ビュウトは笑い、密輸業者はカインズを助けようとしていた。銀行家は謝罪する。

 カインズはジェシカに、アラキスも規則正しい水の循環系を持ち得ると言い、ビュウトは否定する。公爵レトはカインズに「水は十分にあるのか」と尋ねると、カインズは「多分あるかも知れない」と答える。ジェシカは彼が「水は十分にあるが、知られたくない」と感じる。

 アトレイデ軍兵士がやって来てレトに何か囁くと、レトは急用ができたと出て行く。後をポウルが引き継ぐ。レトはポウルに「保安上のことで、警備兵が安全だと言うまで、誰も立ち去らないように」と言い残す。

 ポウルはカラダンでの漁師の水死体の話をする。その両肩には、他の漁師が水面に出るため踏み台にした傷があった。父は、自分が助かるために踏み台にした溺れかかった男は理解できるが、客間の夕食のテーブルで起こる場合を除いて、と言った。と話す。銀行家は憤慨する。カインズはポウルに賛成する。

 カインズは南部地域の事は殆ど分からないと言う。ビュウトは、フレーメンは必ず湿地や吸い井戸を見つけ出すと言われている、と話す。カインズはただの噂だと否定する。ジェシカは嘘だと気づく。

 召使は「安全になった」と書かれた公爵のメモをジェシカに持って来る。それには暗号で「ハルコンネンはラス・ガンを運び込もうとして捕らえた」と書かれてあった。ラス・ガンはシールドと作用して強力な爆発を起こす。

 深夜ジェシカが騒ぐ声で起きると、ダンカン・アイダホが酔っぱらって騒いでいた。アイダホはジェシカに「ハルコンネンのスパイから命令を受けるものか」と言う。ジェシカはハワトを呼び、なぜ自分を疑うようになったか尋ねるが、ハワトは答えなかった。ジェシカは、分裂させ混乱させるのはハルコンネンの作戦だと言う。ジェシカはハワトに「あなたが安全でいられるのは、公爵への忠誠心だけだ」と言って支配し、ハワトはベネ・ゲセリットの訓練の力の恐ろしさを感じる。

 夜、レトは、フレーメンが外の警備兵に持って来た手紙「昼は煙の柱、夜は火の柱」の意味を考える。レトはアイダホが起こした騒ぎと、ハワトがジェシカに会った報告を聞き、ジェシカを最初から正式な妻にしなかったことを後悔する。

 レトは玄関から大広間を通って、家族用の棟へ続く廊下を歩くと、密輸業者のチュエクの死体を見つける。その先でフレーメンの家政婦メイブズが刺されて、泣いていた。レトがシールドを作動させるより早く、背中を矢で刺され、体が麻痺する。

 犯人のユエはレトに「ハルコンネン男爵と取引きをし、レトを土産として差し出す。レトの奥歯に毒薬が仕掛けられており、男爵と会った時に奥歯を噛みしめて砕き、勢いよく息を吹き出して、男爵を殺せ」と話す。その代わり、ジェシカとポウルをハルコンネンの手の届かない所に逃がすと約束する。ユエは公爵の紋章が付いている指輪を抜き取る。

 ジェシカが目を覚ますと手首と足首が縛られ、口に猿轡がはめられていた。紐は引っ張るときつく締まるクリムスケル布地だった。ハルコンネン男爵がジェシカに、ユエが裏切ったと教える。男爵のメンターのパイター・ド・ブリースは、ジェシカよりもアトレイデ公爵領を統治する方を選ぶ。ジェシカの声(ヴォイス)の能力を警戒して、ハルコンネンの2人の兵士の他に、耳の聞こえない男に見張りをさせる。

 縛られたポウルも運び込まれる。ハルコンネンの兵士逹は、ジェシカとポウルの死体を残さないために、2人を砂漠に放置して、砂虫に食わせる命令を受けていた。耳が聞こえる2人の兵チゴとキネトが、4人乗りのソプターにジェシカとポウルを乗せ、砂漠の遮断する壁に向かう。

 2人の兵士は、美人のジェシカを自分の物にしようと話す。ソプターが着陸すると、ポウルがヴォイスで兵士に命令し、ジェシカの猿轡を解かせる。ジェシカはヴォイスで、自分を巡って2人に喧嘩をさせ、1人を殺させる。さらにジェシカはヴォイスで、残った兵士にポウルの足の縄を解かせる。ポウルは、その兵の心臓に蹴りを入れて殺す。

 自由になったジェシカとポウルは、操縦席の下に包みがあるのを見つけて取り出す。別のソプターが降下してくるのを見つけ、逃げ出す。

 体が麻痺した公爵の所にユエが立っていると、サルダウカーの皇帝が来て、公爵を引き取る。ユエは急いで裏庭に行き、準備したソプターの前部座席の下に隠したフレムキット(フレーメンの砂漠生存用品一式)の中に、公爵紋章指輪を入れる。

 ハルコンネン男爵は、司令部に使っている着陸した輸送船の一室にユエを呼ぶ。ユエは取引の条件である、妻のワンナを返すように求める。男爵は「妻の元に行くがよい」と言うと、パイターがユエを刺し殺す。

 ハルコンネン男爵は、公爵レトを連れてこさせる。パイターは「女と息子は砂虫に食われたと思われる」と報告する。また、公爵の部下の一人がソプターを奪って逃げていた。レトはポウルとジェシカは逃げたと考え、ユエが言った言葉を思い出す。男爵が近づいた時、レトは奥歯をかみ砕き、息を吹きかける。しかし男爵はシールドを弱く作動していたので無事で、部屋の中のパイターや兵士逹が死亡する。男爵は彼専用の脱出口から外に逃げる。

 男爵の元にサルダウカーの大佐バーシャルが来て、公爵の死体を確認しに来たと言う。公爵と男爵の部下達の死体を見て、皇帝が男爵の失敗を見る事になる。

 ポウルとジェシカは、包みの中にあったフレーメンの服を着て、スティルテントの中にいた。着陸したソブターにはダンカン・アイダホが乗っており、2人を乗せて砂虫の襲撃から救った。包みの中には公爵の紋章の指輪とユエからの手紙があり、ハルコンネン男爵への復讐のために公爵レトを利用したと書かれてあった。アイダホは、カインズの所へ向かった。ジェシカは女の子を身ごもっていた。

 通信網レシーバーを聞くと、協会が敵に回っていた。ハルコンネンの勝利だった。ポウルは、フレーメンは協会に代金を払って、人工衛星からの監視を免れていると考える。フレーメンは高度な文明を持つ種族のはずだった。

 ポウルは父からの、ジェシカを疑っていない事、公爵夫人にしなかった事を後悔していると伝言を話す。それを聞いたジェシカは泣く。

 ポウルは能力が高まり、ジェシカが妹を生むことを知っていた。母ジェシカは、ハルコンネン男爵の娘である事も知る。ベネ・ゲセリットは、アトレイデ家とハルコンネン家の和解でではなく、両家の遺伝学的要素をつくるため、ジェシカに女の子を生むように命じていたと考える。

 ジェシカはポウルをクイサッツ・ハデラッハではないかと考えるが、ポウルは否定する。ポウルはフレーメンに助けを求める事にする。ポウルは自分をフレーメンは「ムアドディブ」と呼ぶだろうと言う。