映画『イチケイのカラス』ネタバレの詳しいあらすじ | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

監督:田中亮 2023年

登場人物(劇場版)役柄

【岡山地方裁判所関係】

入間みちお:いるま みちお(竹野内豊)熊本から岡山地方裁判所秋名支部に異動している。

土井潤(柄本時生)岡山地方裁判所秋名支部の右陪席。

赤城公子(西野七瀬)岡山地方裁判所秋名支部の左陪席。

井出伊織(山崎育三郎)岡山検察に異動した検事。糸子と結婚。

一ノ瀬糸子(水谷果穂)元イチケイの事務官。井出と結婚。

【日尾美町の弁護士・裁判官】

坂間千鶴:さかま ちづる(黒木華)日尾美町で「他職経験制度」で弁護士に転身している。

月本信吾:つきもと しんご(斎藤工)日尾美町の人権派弁護士。駒沢とは司法修習時代の教官と生徒。

裁判官(庵野秀明)審理中に居眠りする。

【海難事故関係者】

鵜城英二:うじょう えいじ(向井理)史上最年少エリート防衛大臣。

島谷秀彰(津田健次郎)貨物船・西央丸の船長。

島谷加奈子(田中みな実)秀彰の妻。傷害事件の被告人。

【日尾美町の住民】

小早川悦子(吉田羊)「シキハマ株式会社」の産業医、坂間と姉妹のように仲良くする。

小早川輝夫(宮藤官九郎)悦子の夫で町役場の職員。

三田村武晴(尾上菊之助)「シキハマ株式会社」の顧問弁護士。

木島昌弘(平山祐介)「シキハマ株式会社」の工場長。

植木幸太郎(八木勇征)和菓子屋で働くお調子者。

【イチケイ関係者】

駒沢義男(小日向文世)東京地裁第三支部第一刑事部(イチケイ)の部長裁判官。

浜谷澪(桜井ユキ)イチケイの書記官。

 

 雨に打たれている自転車。

 入間みちおが法服を着て法廷に入る。

 貨物船西央丸の船長・島谷秀彰が必死に操舵するが、船が傾き、他の乗組員は気を失っている。西央丸はイージス艦に衝突し、沈没する。

 島谷秀彰の墓の前で法要が行われる。彼の妻・加奈子は防衛大臣・鵜城英二に「夫の死はイージス艦に問題があったのでは」と言うが、鵜城大臣は「航海記録は紛失した」と言って提出を拒否する。加奈子は鞄に忍ばせていた包丁で鵜城大臣に切りかかろうとして護衛がケガし、取り抑えられる。

 坂間は、判事補は10年間のうち2年間は他の仕事に就く「他職経験制度」で、日尾美町で弁護士をしていた。坂間は弁護士としての初仕事、「自動車物損事故損害賠償裁判」通称「大桃ころりん騒動」を、自作模型を使って弁護する。トメさんと言う年配の女性が車を運転中に、シキハマ株式会社日尾美工場のトラックが落とした荷物によって土埃が舞い上がり、視界を失って事故を起こしたと言うものだ。審理中に裁判長が居眠りしており、坂間は裁判長を怒鳴って起こす。

 裁判後、坂間は自転車でシキハマ株式会社日尾美工場へ行き、日尾美町の町医者で工場の産業医の小早川悦子と一緒に帰る。日尾美商店街の和菓子屋の若き店主・植木幸太郎は、悦子と坂間を姉妹のようだと評し、坂間に差し入れする。

 坂間は、悦子の夫で日尾美町役場地域推進課の職員である小早川輝夫の実家の2階に、弁護士事務所を間借りして構えていた。「大桃ころりん騒動」は、輝夫が坂間に持ち込んだものだ。

 そのトメさんから電話があり、別の弁護士に頼むと言う。坂間がトメさんの家に行くと、カラスに襲われてコンタクトレンズを落とし、月本弁護士が拾って渡す。

 月本は、パワハラでシキハマ日尾美工場を退職した従業員の弁護も担当していると言う。月本は坂間に「有り余る正義感を持て余している」と一緒に担当する事を誘い、坂間も「私の能力をもってすれば」と了解する。

 坂間は月本を週末に行われた岡山法曹野球大会の日尾美チームに誘う。相手の秋名チームには、元東京地検第3支部の検事・井出伊織が、妻の元イチケイ事務官一ノ瀬糸子と一緒に参加していた。先週、入間が岡山地方裁判所秋名支部に異動になり、井出は入間のお目付け役として赴任してきたと言う。野球の試合では、入間の隠し玉で坂間がアウトになり、試合終了になる。坂間は入間に文句を言う。

 岡山地方裁判所秋名支部には「入間みちおの取扱説明書」が送られてきた。製作者は坂間だった。

 入間が裁判長、土井潤が右陪席、赤城公子が左陪席で「傷害事件」の刑事裁判が行われる。井出が検事だ。イージス艦に貨物船・西央丸が衝突した海難事故の原因は、貨物船の船長・島谷秀彰にあったとされたが、船長の妻・加奈子は事故原因を隠蔽しているとして、鵜城英二防衛大臣に包丁で切りつけようとし、護衛にケガを負わせた。

 加奈子は「夫は事故を引き起こすはずがない。真実を知りたい」と言う。入間が「海難事故について詳しく知りたい」と言うと、それを想定していた井出は「船は右側通行が原則だが、西央丸は航路を外れてイージス艦に衝突した」と事故の様子を説明する。

 入間はその説明では納得しない。入間は加奈子に「真実を知れば、自分の罪に向き合うと約束できますね」と約束させ、「職権を発動します。裁判所主導で捜査を行い、海難事故を調査します」と宣言する。

 裁判官の土井と赤城は「職権発動」に驚き、土井は「国家権力にたて突くことになる」と止める。赤城は「取扱説明書」を読んで入間を止めようとするが、入間は「事故関係者への質問。ガンガン調べよう」と意気込む。井出は「慣れちゃいました」と虚しく言う。

 月本は坂間に「工場で、急な配置換えや退職者が何人もいる。工場に何か裏があるので、それを探る」と言い、坂間も手伝う。2人で工場従業員の行動を調査すると、配置換えや退職した従業員とも、特定の症状で病院に通っていることがわかる。月本は「声なき声を拾うのが弁護士。苦しんでいる人を救えるかもしれない」と熱く語り、坂間は月本をじっと見つめる。

 月本と坂間はゴムボートで工場の近くまで行く。坂間が法律違反だと止めるのを聞かず、月本はフェンスを越えて工場に侵入し、ペットボトルに工場の排水を採取してくる。2人が帰ろうとすると、警官に見つかり、2人は置いてあった自転車に2人乗りして逃げる。坂間は法律違反したのは初めてだと言い、月本に自転車を返すように頼む。

 入間が漁師から「イージス艦は注意喚起警報を出していなかった」と聞く。つまりイージス艦は回避行動を取っていなかった。

 裁判所に鵜城大臣が入間に会いにやって来て、他の裁判官たちは隠れてこっそり様子を見る。

 入間が「船員達は頭痛や吐き気で、見張りをしていない事を伏せている」と話すと、鵜城大臣は「全てを明らかにすることで国を守れるか?」と答える。入間は「明らかにしない事で、苦しんでいる人もいる」と反論する。鵜城大臣は「あなたのこれからを応援しています」と言い残して去る。

 東京地裁第三支部の前では、環境団体が緑の服を着て、踊って抗議活動をしていた。月本が環境保護団体の代表と話す。月本に駒沢が「人格派弁護士。教え子の中で最も優秀だった。弁護士としてどう付き合っていくか期待している」と話しかける。月本は「精進する」と応える。

 公民館に町の住民を集め、月本が「工場の排水に有毒な有機フッ素化合物が、基準を超えて検出された」と発表する。しかし、分析した大学の佐藤准教授と連絡が取れなくなっていた。そこに木島昌弘工場長とシキハマ株式会社の顧問弁護士の三田村武晴が来て「佐藤准教授の分析によれば、基準に収まっている」と発表する。三田弁護士が、その水はどこから採取したか尋ねるが、月本は答えられない。町民は帰り始める。坂間が「該当する病気を持って居る人はいますか?」と尋ねると、一人が手を挙げるが、三田と口論している坂間は気づかない。

 入間は裁判から外される。最高裁判所事務総長の浦田と、鵜城大臣は同じ大学で同じ山岳部だった。

 入間は島谷秀彰の墓参りに行く。その後に来た悦子が、今来た人物が、墓参りをしていた事に気づく。

 坂間は自転車で、月本が乗ったタクシーを追う。月本は木島工場長に会って、金を貰っていた。月本は木島工場長と共謀して、町民を集めて、環境汚染がなかったように演出していたのだ。坂間は駒沢から、東京で月本が環境団体と接触していた事を聞き、環境汚染は事実だと言う。月本は坂間に取り分の金を渡そうとするが、坂間は拒否する。月本は「全ては終わった」と言って去る。

 駅のホームに坂間が座っていると、入間が来て「部長が心配していた」と話しかける。坂間も入間に「裁判を外されたそうですね」と聞くと、入間は「どうしてこれほど過剰に反応したのか?」と疑問を言う。坂間は「絶対に諦めない」と言う。

 坂間が自転車で事務所に帰ると、輝夫とラーメン屋の店主・松原がいた。松原の息子が同じ症状の病気になったと言う。坂間は民事裁判を起こし、シキシマ日尾美工場を環境汚染で訴えることにする。

 入間が裁判長、土井が右陪席、赤城が左陪席で「健康被害損害賠償裁判」の民事裁判が行われる。原告の松原の弁護士は坂間。被告シキシマ日尾美工場の弁護士は三田村である。三田村弁護士は「坂間はいわくつきの月本と組んで、工場から金を脅し取っていた」と証言する。坂間が怒って「退廷してもらいます」と言うが、入間は「弁護士には権利がないよ。相手を論破しないように」と注意する。

 入間は汚染の証拠が不十分だと言う。坂間は入間の「職権発動」を期待するが、民事では職権発動はできないので、入間は坂間に「自分で土壌汚染の原因を探し当ててください」と言う。

 坂間は「むかつく、入間みちお」と言いながら、工場近くの土を掘る。入間は釣りに行く。

 ラーメン屋に石が投げられて、入口のガラスが割られる。松原は「裁判を続けるのが怖い」と怯え、悦子も「シキシマには誰も逆らえない」と弱音を吐く。坂間は「真実を明らかにしましょう」と頑張る。

 坂間が自宅に帰ると、アパートの部屋が燃えていた。月本が「裁判から手を引け。お前一人でできない。自己満足だ。次は無いぞと言う警告だ」と言う。月本は「7年前、妹が会社の耐震偽装の内部告発をして自分が弁護したが、追い詰められた妹は自殺した」と過去を語る。月本は「法律は不完全だが、上手く使う事で何とでもできる」と話す。坂間は「真実を見なくて、怖くないのですか」と言って、裁判から手を引くことを拒否する。

 家を失った坂間は、入間の家に泊めてもらうように頼む。坂間は「みちこ」のTシャツを着て、故郷納税の返礼品の寝袋で寝る。坂間が「自分の正義を押し付けているのかも」と弱音を言うと、入間は「悩んで悩みぬく。それでしか一番いい答えは見つからないと思うよ。もっと悩め。坂間千鶴」と励ます。

 入間は月本を呼び「100%来ないと思った」と言うと、月本は「来ないと家に押し掛けると、書記官に聞いた」と言う。入間が「何か知っているか?なぜシキシマが汚染を隠すのか?」と尋ねる。月本は「和解を提案しておしまいでは」と応える。入間は「坂間は最後まで真実を追うつもりだ」と教える。赤城が入間に「来週、また漁がある」と伝える。

 入間に月本から封筒が届く。中には5人の子供達が映っている写真が入っていた。

 月本は神社の階段から何者かに突き落とされる。坂間は警察の遺体安置所に急いで向かい、月本の遺体を見て悲しむ。

 知らせを聞いた駒沢も「月本は正義感あふれる弁護士でした。こんな結果になるとは」と肩を落とす。

 入間は漁船で漁に行く。防波堤にいた坂間に入間は、無人島で釣りをしたと教える。坂間は「工場の土壌に汚染が見つかった。工場では定期的に汚染土を入れ替えているのでは」と教える。入間は何かに気づく。

 坂間と赤城、土井が、事故を起こしたトメさんの車を調べ、事故当時の土埃を採取する。分析に出すと、汚染土だと分かる。

 入間は東京で行われたイベントに行き、鵜城大臣と握手しながら「汚染土が見つかった。西央丸を引き上げればはっきりする」と話す。鵜城大臣は「真実はコントロールする事で生まれる」と応える。入間は「あなたが過剰に反応したのはなぜか?そこまでして隠したいことがあった。釣りに行って色々な人と仲良くなって、興味深い話を聞いた。事故があった時の目撃証言が」と教える。

 坂間の家に放火した犯人は、植木だった。坂間はショックを受ける。

 〔第4回健康被害損害賠償裁判公判〕入間は証人尋問に加奈子を呼ぶ。入間は加奈子に「本当の事を知りたいと言っていましたね。西央丸の航路を調べて、無人島の監視カメラの映像を入手した。西央丸は航路を外れていた。西央丸の船内にはシキシマ日尾美工場の汚染土が積まれ、無人島に運んでいた。前日、シキシマのトラックから汚染土を入れた容器が落下して、土埃が舞って視界が遮られ、交通事故が起きた。落下した容器は密閉できず、長時間西央丸を汚染した。それにより船員達は頭痛や吐き気で船を操舵できなかった。船長は毎回、積み荷を確認していた」と教える。加奈子は「夫が汚染の隠蔽に加担していたのですか?夫のせいで、多くの人の命を…」と落胆する。入間は「これが真実です。犯した罪としっかり向き合って下さい」と答える。加奈子は「どうして夫が?日尾美町を自慢していたのに」と泣く。

 坂間は「健康被害の補償は、町役場の緑地造成費から出されていた」と証言し、町医者でシキシマの産業医の悦子に証言を求める。坂間は悦子に「あなたは医者です。健康被害を受けた人の苦しみがわかるはずです。本当の事を話してください。工場の汚染を隠蔽していたのは、シキシマではないですか?」と質問する。悦子は「日尾美町の人間全員です。日尾美町は工場と共に生きていた。5年前、法律が改正されて、工場の排出物が規制された。本社に掛け合っても、自分達で処理しろ、だった。処理設備の金はない。工場が無くなれば、多くの人が職を失う。工場を守り抜く以外、道はなかった」と証言する。

 坂間が「そうだとしても、日尾美の誰かが傷つく。隠し通すつもりだったのか?」と追及する。実は悦子も健康被害の症状が出ていた。入間は「あなた方の町は病気です。すでに壊れていたのでは。町のために助けてと声を上げることも許されない。壊れた所から始めるしかない。大切なのは、故郷をあるべき姿に戻す事では。即日で判決を出したい」と話す。

 入間が判決は「金1000万円を被告工場が環境被害に誠実に賠償する…」と述べる。

 悦子は坂間に「間違っていたのは私。胸を張れ、坂間千鶴」と言い残して、輝夫と悦子は逮捕され、パトカーに連行される。

 入間が港を歩いていると鵜城大臣がやって来る。入間が「イージス艦に大臣が乗っていた事を公にできなかった。航海記録を紛失したのではなく、出せなかった」と言う。鵜城大臣は「イージス艦に、秘密裏に開発した対艦ミサイルを乗せていた。公になれば国民から非難され、開発が遅れる」と教える。入間が「真実を隠し通せる?あなたは覚悟がある?」と聞くと、鵜城大臣は「私のやり方で国を守る。会えてよかった、入間みちお」と答えて去る。

 テレビニュースで、鵜城大臣が「航海記録のずさんな管理の責任を取って、辞任する」と報道していた。

 日尾美商店街は、閉店する店が沢山あった。坂間は今日閉店する花屋から花束を買うと、月島が死んだ現場に花束を手向ける。やって来た入間は、月島から送られた写真を見せる。

小学校の課題で工場を研究し、表彰された5人の子供達が、大人になっても工場を守っていくと約束する。写真に写っていた月本、輝夫、悦子、木島は神社に集まり、月本が「これ以上、町ぐるみの隠蔽をやめよう」と説得する。輝夫が環境汚染を坂間に明らかにしてもらうために、交通事故や松原を坂間に紹介していた。月本は、裁判で証言すると言って帰ろうとする。そこにやってきた三田村が、月本を石段から突き落とす。

 輝夫と悦子が月本に駆け寄ると、月本はまだ息があり「坂間に伝えてほしい。自転車は返した」と言い残して亡くなる。それを入間から聞いた坂間は泣き崩れる。

 三田村は自首した。坂間は「罪を犯した人の弁護をやりたい。日尾美の一人一人と向き合っていきたい。月本もそうしたはず」と話し、月本を殺した三田村の弁護もすると言う。

 入間が「法律は不完全だが、法律を守って」と言うと、坂間は「有り余る正義感を持て余している自分はできる」と言う。入間が「坂間と絡むのは、もうごめんだ」と言うと、坂間も「私も同じ」と言い返す。

 (タイトル『イチケイのカラス』)

 (映画冒頭の場面)雨に打たれた工場の自転車。

 三田村の裁判が行われ、入間が三田村に「間違いありますか?」と質問する。入間は「全員が納得する答えを見つけましょう」と話す。

(エンドクレジット)

 東京地裁第三支部を見学に来た生徒達に、浜谷澪書記官が「テミスの女神像の右手の剣は力。左手の天秤は正義。目隠しは公平を表す」と説明する。駒沢が「真実で幸せになるとは限らない。だから裁判官は面白い仕事だ」と話す。

 岡山法曹野球大会が行われ、バッターの坂間に入間が急激に曲がる変化球を当て、デッドボールにする。坂間が「曲がり方が変だ。松脂を持っているだろう」と入間に詰め寄る。入間は自転車で逃げる。

(写真は「映画com」「公式Twitter」より)