監督:入江悠
主な登場人物(俳優)役柄
曾根崎雅人(藤原竜也)22年前に起きた東京連続絞殺事件の犯人を名乗る。
牧村航(伊藤英明)連続絞殺事件の担当刑事の一人。事件後、妹が行方不明になる。
小野寺拓巳(野村周平)牧村里香の婚約者。連続絞殺事件の時効が成立した日に飛び降り自殺を図る。
牧村里香(石橋杏奈)牧村航の妹。22年前、最後の連続絞殺事件直後に行方不明になる。
春日部信司(竜星涼)牧村航の後輩刑事。
滝幸宏(平田満)22年前の牧村の先輩格だった刑事。連続絞殺事件最後の被害者。
若松義生(矢島健一)所轄組織犯罪対策課 課長。
川北未南子(松本まりか)『私が殺人犯です』編集者兼曾根崎のマネージャー。
仙堂俊雄(仲村トオル)元フリーのジャーナリスト。現在は「NEWS EYES」のキャスター。
岸美晴(夏帆)書店員。2件目の事件の遺族。
橘大祐(岩城滉一)橘組の組長。3件目の事件の目撃者。関係のあったホステスを殺害された。
山縣明寛(岩松了)山縣医院の院長。4件目の事件の目撃者。妻を殺害された。
戸田丈(早乙女太一)橘組の構成員。3件目の事件の殺されたホステスの息子。
(オープニング)1995年、阪神大震災の年。東京で1月4日足立区飲食店店主殺害事件。2件目、2月14日世田谷区会社員殺害事件。3件目、3月15日銀座ホステス殺害事件。4件目、3月31日練馬区病院長夫人殺害事件。5件目、4月27日大田区警察官殺害事件。5件の連続絞殺事件が発生するが、犯人の手掛かりはなかった。捜査規模が次第に縮小され、15年後の2010年4月27日0時に時効を迎えた。
2017年-。牧村航刑事と春日部信司刑事は、チンピラの戸田丈を追いかけて捕まえるが、警察署に直ぐ帰れと連絡が入る。牧村と春日部が警察署に戻ると、テレビでは、22年前の1995年の東京連続絞殺事件の犯人の会見が始まろうとしていた。牧村が22年前に捕まえられなかった犯人である。2010年4月27日に刑事訴訟法が改正になり、1995年4月28日以降に起きた殺人事件の時効は無くなったが、1995年4月27日以前に起きた、この殺人事件は時効になっていた。牧村と刑事達は、警察署内でその映像に目を凝らす。
会見場に現れたのは、曾根崎雅人という男だった。曾根崎は「警察は私にたどり着けなかった。あの事件の全てを語るために、筆を執った」と告白本の前書きを読む。
牧村は過去を思い出す。1995年1月4日、東京都足立区。牧村は先輩刑事の滝と事件現場に来る。
曾根崎は告白本を読みながら、殺害方法のルールを説明する。「第1のルール。殺害を目撃者、出来れば家族に1対1で見せる」。
書店員の岸美晴は、驚愕の表情でテレビを見ていた。1995年2月14日、東京都世田谷区。当時5歳の岸美晴は、部屋に閉じ込められていた。椅子に縛り付けられた母親の目の前で、犯人が父親岸幸生を絞殺する。
曾根崎は続ける。「第2のルールは、背後から縄で背後から首を絞める絞殺」「第3のルールは、目撃者を生かしておく事。殺害方法を警察とマスコミに伝えてもらうため」。
橘大祐はテレビを見る。1995年3月15日、東京都中央区。橘組の組長橘大祐は、椅子に縛られ、目の前でホステスを殺害された。
曾根崎は続ける。「第4の犯行、山縣医師夫人の殺害を警察は意図的に隠して、犯人をおびき出そうとした。」
山縣明寛医院長がテレビを見ている。1995年3月31日、東京都練馬区。拘束された山縣医院長の目の前で妻が殺害される。
曾根崎は「罠と知りながら警察の手の内に入り、遊んでやる事にした。」
1995年4月6日。牧村と上司の滝幸宏は、刑事達と共に張り込みをしていた。牧村は覆面を被った犯人を追って取り押さえるが、犯人はナイフで牧村の口を切り、牧村は犯人の肩を銃で撃つ。犯人は逃走し、次の被害者を牧村に決める。
1995年4月27日、東京都捜査本部。電話で合成音が「牧村刑事、肩撃った。警察卑怯。新しい死体隠した。次の死体、牧村刑事のアパートにある」と伝える。牧村は飛び出す。
同4月47日東京都大田区。牧村と警官たちがアパートに急行する。部屋がガス臭く、滝が先に入る。牧村は、部屋に落ちていた婚約指輪の箱を拾う。滝が奥の部屋に入ると、縄が降りて来て滝の首を絞め、滝が縄を振りほどこうと引くと、ライターが点火してガスに引火して爆発する。滝は「牧村、頼むぞ」と言い残して息を引き取る。
曾根崎は「被害者と目撃者が計画と逆になり、一連の殺人事件にピリオドを打った。それから22年。警察やマスコミは私の元に辿り着く事ができず、事件の本質を伝える事が無かった。ならば自ら真相を明らかにしようと考えた。この告白本が、私の示すせめてもの罪滅ぼしである」と述べる。
放送を見た刑事達は、法律上逮捕できないのを悔しがる。本はベストセラーになる。批判する評論家もいたが、ネットをはじめ日本中のメディアは曾根崎に熱狂する。その端整な容姿に「ソネ様」と呼んで、ファンを公言する者も次々に現れた。出版社の「帝談社」の前に、出版に反対するデモ隊がいた。
牧村は、父親を殺された岸美晴が勤める書店に行く。美晴は店長に「営業の邪魔になるから来ないで欲しい」と言われていた。美晴はハサミで本を刺し、牧村に「私のお父さん、こいつに殺されたんだよ。何で捕まえないの。何でこんな本出して、許されるの」と憤慨する。
曾根崎が滞在するホテルに編集者の川北未南子が来て、警察が任意で事情聴取に応じて欲しいと言っていると伝える。本は30万部を超えるベストセラーになった。曾根崎は川北に、もっと売るように指示する。
報道番組「NEWS EYES」のメインキャスターの仙堂俊雄に、密着取材が着く。千堂は番組編成会議で、曾根崎を呼ぶように提案する。千堂は、22年前にこの事件を追っており、「法律で彼を裁けないなら、私逹が裁きましょう」と宣言する。
牧村が妻を殺された病院長の山懸明寛に会い、美晴の事を報告する。すると、曾根崎がマスコミを引き連れて病院のロビーにやって来る。帰りの車の中で、川北は曾根崎に無茶は止めるように言うが、曾根崎はもっと話題作りをしてもっと本を売ると言う。川北は「NEWS EYES」から出演依頼があったと伝える。
曾根崎の大規模なサイン会が行われる。仙堂は、動画投稿サイトに「俺が真犯人だ」と名乗る者が投稿した動画を見せる。コメントには「曾根崎は詐欺師。俺こそが真犯人。これが証拠だ」とあった。仙堂のアパートが爆破される様子を、近くのビルの屋上から撮影したもので、屋上には拘束された里香がいた。曾根崎は「刑事の妹なんて知らない」と言う。千堂は「第1のルールで牧村の死を肉親の妹に目撃させなかったのか?」と質問する。曾根崎は「誰かが話題作りのために捏造したのでは」と答える。
曾根崎は「警察が公表していない犯人しか知らない事実も本に書いている」と言う。しかし、仙堂は「殺人の動機が書いていないのはなぜか」と質問する。曾根崎は「隅から隅まで読めば書いてある」と答える。時効になった時、牧村や刑事達は悔し涙を流した。牧村が廃ビルの屋上に行くと、拓巳はこのビルの屋上で里香の婚約指輪を見つけが、里香だけが見つからないと言い、絶望して飛び降り自殺する。
千堂の番組に、真犯人と名乗る動画投稿者が、新たな証拠を持参して番組に出演をするが、曾根崎と牧村が一緒に出演するのが条件だった。辞表を出した牧村に、上司は「やるならとことんやれ」と応援する。
橘は牧村を車に乗せ「妹がいたとは知らなかった。事件の真相が分かるまで、犯人に死なれてはいけない気持ちが分かる。だが、憎しみは世代を超える、22年前に殺されたホステスには4歳の息子がいて、それが戸田だ」と教える。
仙堂の報道番組「NEWS EYES」に曽根崎と牧村が出演する。さらに真犯人と名乗る動画投稿者がマスクを被って出演する。マスクの男は「曾根崎は金儲けの詐欺師で、化けの皮を剥がしに来た」と言い、「動画は事件の記録だ」と言う。曾根崎は、誰でも作れると反論する。男は「動画には続きがあり、自分が犯人だと分かる」と言う。
男が持って来た動画のDVDをスタッフが点検すると、とても放送できるものではなかったので、スタジオ内だけに流す。それには以前の動画の後に、里香が首を絞められて殺害される様子が映り、犯人は婚約指を屋上に置く。それを見た牧村は泣く。
男は「撮影した理由は記録で、何度も楽しむためで、俺が犯人だと分かっただろう」と言う。曾根崎は仙堂の万年筆で男のマスクに切りつける。曾根崎は取り押さえられ、仙堂の「真実を話してください」の問いに曾根崎は「私は犯人ではない。私は本を書いていない。」と白状する。本を書いたのは捜査で知り得た情報を持つ牧村で、曾根崎は里香の恋人の小野寺拓巳だった。
7年前の時効が成立した夜、拓巳は飛び降り自殺をはかるが、一命をとりとめた。拓巳は別人になって犯人を捜すと言う。拓巳は山懸医師の協力で整形手術を受け、顔を変えた。犯人は几帳面で陶酔型で自己顕示欲が強い性格なので、偽の告白本で世間を騒がせ金を稼げば、真犯人はいらだって姿を現すだろうと二人は考え、計画したのだった。犯人が一刻も早く曾根崎を見つけるように、マスコミに派手に取り上げられるように心掛けた。山縣医院での騒ぎも計画したもので、拓巳が牧村に「殴って下さい」と囁き、殴ったのだった。
牧村は、「事件の時効が成立した後も、俺達は決して諦めなかった。里香の行方を探し、犯人を捕まえるためには全てを捨てる。7年前にそう誓った」と言う。拓巳は「やっと終えた」と言って、男に近づく。男は、ネットの何でも代行で依頼されて出演しただけで、偽物だと言う。男の肩に、牧村が銃で撃った傷は無かった。千堂は「事件の闇を追い続けたい」と言って番組を終える。
密着取材のカメラマンは、次回仙堂にインタビューする場所の地図をなくす。
廃ビルの屋上で牧村は拓巳に「あの動画は22年間で初めての手掛かりだ。諦めるのは早い」と話す。拓巳は「里香のために、真犯人を見つけて殺す」と誓う。
拓巳は動画を何度も見直し、何かに気付く。拓巳は山懸から車を借り、どこかに行く。牧村も何度も動画を見ていた。春日部が「もう時効が過ぎている」と言うと、牧村は何かに気付く。
山懸が牧村に拓巳について連絡すると、拓巳の行動を牧村は知らなかった。山縣の車のGPSで、牧村は拓巳を追う。
山奥の仙堂の別荘で、密着スタッフが取材をする。仙堂は「昔、紛争地帯に行ったとき、テロリストに拘束され、目の前で友人のジャーナリストがテロリストに殺される姿を見た」と話す。密着スタッフが「この前の放送、凄かったですね」と言うと、千堂は「当時は毎日現場を回って、被害者遺族にかなり踏み込んだ取材をしていた」と話す。すると千堂は、ガラスが破られているのを発見する。
地下のビデオ室で拓巳が待っていた。拓巳は「俺があの事件を自分の作品のように語ると、あなたはいつも苛立った」と言う。さらに「あなたは番組の中で、「里香さんは婚約した」と言っていたが、婚約は牧村と、婚約指輪を外した犯人しか知らないはずだ。」と言う。
牧村の車は別荘に近づき、山縣の車を見つける。
拓巳は言う「あなたは紛争地でテロリストに仲間を絞殺され、深い心的外傷を負った。日本に帰って来ても、その呪縛から逃れられなかったのではないですか?」と問う。拓巳は、5件の殺害の様子を千堂が録画した動画をモニターに流し、仙堂が連続殺人犯だと暴く。拓巳が「里香をどうした」と迫り、ナイフで仙堂を差す。千堂の服を破くと、肩に銃痕があった。仙堂は拓巳に「お前は鏡に映った鏡像だ」と言う。千堂は、里香は殺して埋めたと自白する。
仙堂はコードを自分の首に巻き付け、そのコードを拓巳が絞めて、仙堂を殺そうとする。密着スタッフは、恐ろしくなってその場から逃げる。牧村が仙堂の別荘に到着し、密着スタッフに出会い、曾根崎と千堂が地下にいると聞き、向かう。
牧村は、仙堂を絞め殺そうとしている拓巳を止める。牧村は、千堂を法律で裁くことができると言う。春日部に「時効は過ぎた」と言われた牧村がビデオをよく見ると、里香が死んだのは、夜0時に消灯する東京タワーの照明が消えてからだった。つまり里香の殺害は日付が変わった4月28日に行われ、時効は成立しないのだ。
千堂は「俺を殺せ」と言い、拓巳はコードを絞めて千堂を殺そうとする。牧村は「そいつを殺しても里香は戻ってこない」と必死で説得する。拓巳は画面に映った自分の姿と絞殺される里香の姿を見て、千堂の絞殺を止める。
翌朝のニュースで、別荘の近くに埋められていた里香の白骨遺体が発見され、仙堂が殺人犯として逮捕されたと報じていた。
留置所の仙堂は「体の中に闇がある」と言って、心神喪失を訴える。千堂は「手記でも書いてみるか」と言う。
拓巳は里香が殺された廃ビルの屋上に、花束と婚約指輪を供える。拓巳は国際空港に行き、牧村が見送る。山懸と美晴も見送りに来て、美晴は殺そうとしたことを拓巳に謝る。拓巳は、里香の命日に帰って来ると告げる。空港の広告に「仙堂著『闇を追いかけて』出版決定」の宣伝ポスターが出る。
(エンドクレジット)
精神病棟の廊下を仙堂が看護師に連れられて歩いていると、清掃員に変装した戸田がナイフで仙堂を刺す。
(エンドクレジット)