夏仕様のワイヤーパネルのドアを開け、業者の人にササッと入ってもらう。ベッドの上で香箱を組んでいた三女が、フーッ!と唸って立ち上がる。私がドアの上下二ヶ所をロックしている内に、業者さんはベランダへ。長男、四女はベランダにいた。
「すごいな、落ちないのかな。」
という声に振り向くと、手摺を歩く長男が見える。「あ、落ちた。」と聞こえギョッとするが、長男はまだ手摺をウロウロ。ということは四女が飛んだか。脱走する前に家に入れなくてはと動いた時に、今度は長男が姿を消した。
「すごいなー、猫ってこれくらい平気で飛ぶんだ。」
呑気に庭を覗く業者さん。いや、たぶん長男は落ちたんだと思います。慌てて庭へ行くと、花壇の隅で隠れるようにしている長男。怪我は無さそうだ。興奮して走る四女を家に入れて、長男は業者さんが帰るまで庭にいてもらう。家に入った四女は、食器棚上のベッドの淵から、まん丸な目を覗かせていた。
非常時に本性が現れるのは猫も同じ。いつも強気な四女は意外とビビリだった。虚勢を張って弱気を隠しているんだな。長男も一応踏ん張ろうとしたのだろうが、場所が悪かった。彼の運動能力では、手摺の攻防は難しかったか。まあ、身体の大きさ故のハンデという事にしておこう。
アイドル顔の三女が一番肝が据わっていた。やはり母親経験者は強い。三女はふとした時に思索者のような顔付きになるが、その顔が闘いを前にした剣豪のように思えてきた。ただ眠いだけだろ、という父さんのツッコミは脇に置いておこう。