千利休は力強くたおやかな自然の緑を一碗の抹茶の緑に凝縮し、緑色を精神的な宇宙の色とし、それにふさわしい茶の湯の様式を創作しました。





日本の伝統色の緑色系統は、自然と融合し四季折々の多様な植物の緑から生まれた色名が多く存在します。


苗色は稲の苗のような淡い緑色です。類似色に『萌葱色』があり平安時代からある夏の色です。

平安時代、苗色は天皇の側に仕える人の服の色でした。


若葉色は夏前の草木の若葉のような、柔らかな黄緑色です。若葉と言えば春のイメージですが季語は夏です。


鶯色は鶯の羽のような暗くてくすんだ黄緑色です。

江戸時代から親しまれた緑色ですが、当時は茶色を加えた『鶯茶』の方が粋で人気がありました。


常盤色は松や杉など常緑樹の葉のような濃い緑色です。類似色に『千歳緑』があります。

江戸時代、常盤色は縁起の良い吉祥の色として好まれました。


山葵色はすりおろした山葵のような薄い黄緑色です。江戸時代中期、山葵が庶民に普及すると同時に生まれた伝統色です。



白緑は孔雀石から作られる岩絵具の色名で、淡い緑色です。色名の『白』は『淡い』の意味。



木賊色はシダ類の常緑多年草の木賊の茎のような青みがかった濃い緑色です。別名は『陰萌黄』と言います。鎌倉時代からある日本の伝統色です。



織部は焼き物の織部焼きのような深みのある緑色です。織部焼きは千利休の高弟の古田織部が美濃国(現在の岐阜県土岐市)の窯元で、自然を象徴する緑色を器に再現する際、緑色の釉薬『緑釉』を用いて理想的な織部焼を創作しました。



麹塵は麹かびのようなくすんだ黄緑色です。

平安時代は天皇の日常着の色でした。



緑色が美しい日本画を探してみました。




長谷川 久蔵『桜図』部分





海北 友松『花卉図屏風』右隻





渡辺 始興『吉野山図屏風』





鈴木 其一『柳に白鷺図屏風』部分





俵屋 宗達『風神』部分





円山 応挙『牡丹孔雀図』





東洲斎 写楽『三代目沢村宗十郎の大岸蔵人』





森 守明『寂光』





上村 松園『母子』





竹久 夢二『よき朝』






田中 一村『ダチュラとアカショウビン』





山元 春挙『山上楽園』





小茂田 青樹『緑雨』



ここで紹介した緑色が美しい作品はほんの一部です。多くの日本画家が岩絵具を駆使して、理想的な作品を生み出しています。

緑色を使う行為が画家の癒しに繋がっているのでしょうか。


時代がどんなに移り変わろうとも緑色は必要不可欠な色と言えます。




色を楽しむ素敵なあなたへ...


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