春真っ盛り!
植物が喜びを爆発させているかのような色鮮やかな春景色に心が躍ります^^
私たち日本人はいにしえより、季節の移り変わりを植物や空から感じとり、自然と共に生きてきました
前回に引き続き、日本の春の伝統色と私がこれまでに鑑賞した中から、春にちなんだ日本画をご紹介します
平安時代は山桜が主流でしたが、現在はソメイヨシノの花びらの色として広く親しまれています
再生やスタートを予感させる桜色は日本人が最も愛してきた桜の花びらの色です
桜を描いた日本画と言えば…、
大阪夏の陣で首を取られた豊臣方の武士、木村重成の妻青柳が、出陣前に夫の兜に香を焚きしめていたという伝説を基に描かれています
戦国時代の締めくくりとして、戦を抗うことが出来なかった武士とその妻の切ない心を表しているようです
兜を抱き締めている妻の背景にある襖絵の桜は、武士が最も好む花として、『散り際の美』を想像できる満開の桜です
出陣前の三月下旬から四月初旬の頃を表していると思われますが、夫が殉職した後もなお、供養を続けるであろう妻の思いが伝わって来ます
桜を描いた日本画はとても多く、私の好きな桜作品をもう一枚…、
日の光りに照らされて降り注ぐ桜色、土壁の黄土色、苔でおおわれた木の幹の黄緑色、花びらで敷き詰められた地面の土の色等、明るい色彩が散りばめられ、温かく包んでくれるような春の喜びの色に満ちています
醍醐の桜は、豊臣秀吉が家臣を大勢連れて花見をした事で歴史的に有名になり、現在も花見スポットとして人気があります
(緑色系の伝統色)
春先に芽吹いた若い草の色を表す若草色は、春の若草山のような明るい緑色を表します
若草色のような緑色が美しい日本画と言えば…、
(右隻には春~夏、左隻には秋~冬が描かれています)
大阪、金剛寺所蔵の日月山水図の屏風絵を初めて見たのは、サントリー美術館での水をテーマにした企画展でした
緑色が美しい山々、松の木、桜色の山桜、黄金の日の丸等がデフォルメされ、室町時代の作品ですが、現代のモダンアートに通じるような大胆な構図です
ダイナミックな自然を表現した日月山水図をもう一度見てみたいものです
(黄色系の伝統色)
繭を煮沸し、幾つかの繭から糸口を集めて生糸にします
その巻き取った繰り糸が空気に当たって酸化すると表面がセリシンにおおわれ硬くなるため、糸を精練する必要があり、精練された練糸の色を練色と言いました
類似色に、生成り色や鳥の子色等があります
練色のような素朴な色彩の日本画と言えば…、
この作品を描いた頃の上村松園はスランプの時期だったようです
実在しない仙女を描くために、美しい女性のポーズや表情を、自分の姿を鏡に写して観察し、衣の紋模様や月に花をつけた梅の木など、円山派の画家たちが描いた作品を参考にしながら、松園がそれまでに培った技術を最大限に活かし品格のある作品に仕上げた事で、自信を取り戻したと言われています
どんな人にもスランプがあるのですね…
羅浮仙女図は穏やかで明るい色彩構成になっており、上品で控えめな印象です
(紫系の伝統色)
平安時代は『藤見の宴』が盛んに行われるほど藤の花と藤色は人気がありました
その時代に隆盛を極めた藤原氏の藤にも通じる高貴で理想的な紫色だったようです
藤の花を描いた日本画と言えば…、
これって日本画?と思った紫の雨は、画面を紫色で塗りつぶした上から、一見雑に金箔を貼り、その隙間からのぞく紫色と、藤の花を点描画のように描いた事で生まれる色彩の効果を狙ったのでしょう
堀文子はカラフルな色彩の作品を数多く発表しており、金色と紫色の組み合わせは、お互いが引き立て合う補色配色の組み合わせが華やかで、一度見たら忘れられない作品ですね
藤の花が雨に打たれるイメージが、堀文子のフィルターを通すと、こんなにモダンで華やかになってしまうのですね✨
藤の花を描いた日本画(版画)をもう一枚…
こちらの作品のお手本となった作品があります…
二枚の構図がそっくり!
吉田博が広重をリスペクトしていた事が伺えますね^^
広重の時代から70年の時を越え合成顔料の普及から色彩が大きく変化し、吉田博の作品は色合いが繊細で奥行きのある類似色相のグラデーションから、春のうららかな空気感までが伝わって来ます^^
🍓🌱🌷🍀🌱🌷🍀🌱🌷🍀🌱🌷🍀🌱🌷🍀🍓
日本の春の伝統色には、明度の高いブライトトーンやパステルトーンの色彩が多く、しかも彩度が強いビビッドな色も数多くあります
日に日に陽射しが強くなり、固い蕾が膨らむような芽吹きの季節を表しています