アイボリーは、象牙そのものの色を表わす灰色を帯びた薄い黄色です

アイボリーに似た色には、生なりや、オイスターホワイト、灰白色等があります


アイボリーは、部屋の壁や、天井、テーブル、電化製品など、室内のあらゆる所で見かける日常的な色であり、特にお風呂や洗面所、トイレは真っ白ではクールで冷たい印象になるため、アイボリーが最も適しています

柔らかで清潔感があり飽きのこないアイボリーは、心身共にリラックスさせる働きがあるようです

また、室内のアイボリーには、観葉植物や花、インテリア小物等のアクセントカラーを引き立てる役割りを持っています

アイボリーが好きな人は落ち着きがあり、控えめで優しさに溢れた人が多いようです


色彩心理的にアイボリーには、『落ち着いた』『癒される』『前向き』『開放的』等のプラス面と『曖昧』『ごまかし』等のマイナス面を持っています


アイボリーが主役の絵画はとても多く、これまでに観賞した中から印象に残った作品をご紹介します




エドワード・ジョン・ポインター
“テラスにて”





マリー・ローランサン
“らっぱを持って”





カミーユ・コロー  “真珠の女”





ギュスターヴ・モロー  “セイレーン”





カラヴァッジョ  “バッカス”





アンリ・ル・シダネル  “雪”





ピエール・ボナール  “白い猫”





アメデオ・モディリアーニ  “カリアティッド”





ウイリアム・ターナー  
“セント・オールバンズ・ヘッド沖”






吉田 博  “帆船 朝日”






藤田嗣治  “貝殻のある静物”





藤島武二  “黒扇”



藤島武二の黒扇は、ブリジストン美術館の閉館前に出会う事ができました

決して大きくはない絵でしたが、その凛とした眼差しや、少し微笑みながら真っ直ぐにこちらを見つめる姿が、清らかで気品に満ちた作品です

藤島武二がローマ留学中に描いた作品らしく、モデルは青い瞳の美しい女性です

画家が亡くなる直前まで大切にしていた作品だったようです

このモデルさんは画家の事が好きだったのではないでしょうか…?
キラキラと瞳が輝き、真っ直ぐにこちらを見つめる力強さに反して、憂いを帯びた表情は、ひたむきに相手を見つめる恋する女性のオーラに溢れています

頬や背景、黒扇の所々に青を配色し、作品に透明感が増して見えますね

オフホワイトのベールが純真無垢な花嫁のように見えました✨


アイボリーが主役の絵画には、優しさや穏やかさがありますね^^




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~アイボリー色の思い出~

日常生活で毎日目にしているアイボリーをことさら意識したことが無いのですが、一度だけ強く記憶に残ったアイボリー色の思い出があります

私が某企業の美術館関連の仕事に携わっていた時のある朝、あまりの息苦しさに目が覚めました

その日は港区の美術館へ直行する予定だった為、胸の痛みを抑えながら仕事場に向かいました

美術館に到着した私の姿を見た一人のスタッフが、知り合いのドクターに連絡をとり、とにかくすぐ病院へ行った方がいいとの言葉に従い、電車を乗り継ぎ新大久保駅から、タクシーで病院に着いた時は車から降りられないくらい衰弱していました

車椅子が用意され、どうにかそれに乗り込み診察室に運ばれました
診察の結果、ドクターから左の肺が破裂していると告げられました
我慢したことで心臓の位置がずれているとも言われました…

緊急を要する入院となり、左の肺を膨らませる為の管が入れられ、肺が破裂したことで出血した血液を体外に出す為の管が脇腹から入れられ、眠れない夜を迎える事になりました

翌日、まだ肺の痛みがある中、病室が1人部屋から6人部屋に変わり、狭いベッドを取り囲むようにアイボリー色のカーテンが引かれていました

数日後、ドクターから病気の説明を受け、一般的な肺気胸ではなく、私自身の体質が要因の病気という事を知りました

病気になって、自分自身を客観的に見つめるきっかけとなりました

孤独と向き合いながら死を考え、私を囲っていたカーテンを穴があくほど見つめていたように思います

23歳の時に体験した病気との関連性と、当時39歳になっていた私が、何故この病気になったのかを深く考えると、気づくべき事が山盛りありました👀

それまでの私は傲慢で自己中心的な生き方をしていた事に気づきました

仕事のプレッシャーやストレスも病気を誘発していました
当時私は、北海道、東京、伊豆、長崎、沖縄県宮古島を担当し、一月の約半分をどこかの施設に出向き、心を注いでいました

高いレベルを求めていた私を、現場スタッフはさぞや煙たく感じていたのではないでしょうか?

自分をとことん客観視すると、生きているのではなく、生かされていると感じました
〈私は生かされている!〉と思うと、すべてに対して心からの感謝が生まれ、とても謙虚な気持ちになりました

振り返って考えると、絶妙なタイミングで病気になったようです

あれから多くの月日が流れ、心配するほどの病気は無く、これまで過ごしてこれました


八方塞がりで、気持ちの持って行きどころのなかった辛い時に、外界を遮断するかのようにアイボリー色に囲われて2週間を過ごし、私自身が生まれ変わったような不思議な感覚を味わいました

私にとって忘れられないアイボリー色の思い出です^^



ルネ・ラリック  “シレーヌ”