緑にグレーや茶色を混ぜて暗くするとモスグリーンになります

干し草のような乾いた印象のモスグリーンはアースカラーとも言われ、落ち着いた大地を思わせる色です

モスグリーンに似た色には、苔色やうぐいす色、オリーブ等があります


オリーブの葉と実



モスグリーンの濃淡が主体の迷彩柄(カモフラージュ柄)は、今年も秋冬のトレンドになっていて、若者を中心に人気ですね


カモフラージュ柄


某老舗百貨店でアパレルの仕事をしていた時、様々な色と組み合わせてもモスグリーンは何故か人気が無く売れ残っていく色のベスト3に入っていました
(ちなみに売れ残り1位は茶色、2位はカーキ色でした)

何故モスグリーンが売れ残っていくの?

それは高年齢の人が嫌う色だからでした

その要因として、カーキ色同様、国防色と言われた戦時中の軍服を連想させるからでしょうか?


色彩心理的にモスグリーンは、深い静寂や落ち着き、穏やかさ、抑えた内面を表し、クールで渋い色調は質実剛健を旨とし、侘寂(わびさび)の美意識を持つ人に好まれる傾向です


モスグリーンが印象的な絵画と言えば、モーリス・ド・ヴラマンク(1876~1958)の“花”が浮かびます


ヴラマンク筆  “花”

ヴラマンクはパリの音楽家の両親のもとに生まれました

自由主義で何事にも束縛されたり、服従することを嫌い、絵画はほとんど独学だったようです

ヴラマンクの初期作品はゴッホの影響が強く、絵の具の盛り方などに表れています

1908年頃から暗い色調の作品が出てきます


この花の作品はサブタイトルが、“クリスマスのバラ”となっていて白いバラがメインなのですが、私にはこの背景色のモスグリーンと花瓶のグレーがかったモスグリーンの方が主役に感じてしまいます

暗い色調が静寂で落ち着きのある室内を表し、モスグリーンの背景色の効果でクリスマスのバラが華やかに際立っています


モスグリーンの色が持つ感情を押さえたかのようなクールで乾いた印象と白の組み合わせが、孤高の人=ヴラマンクの人柄を見るようです


ヴラマンク筆  “橋”


~モスグリーンの思い出~

23歳の時、大病をして入院した経験があり、入院中に青空を見て願った事は、『退院したらおしゃれをして街をブラブラしよう!』でした


退院後しばらくして、モスグリーンにグレーの抽象的な柄のセーターを購入しました

イメージはこんな感じのビッグシルエットのセーターでした


当時クリーム色やオレンジ、ベージュなどを好んで着ていたのですが、病み上がりだったせいでしょうか、明るい色は気持ちが受け付けず、モスグリーンに目がとまった事を覚えています


深い緑色の色調には、回りの環境に馴染んでスーッと溶け込むような、身心を癒す優しさがある事を体感しました


モスグリーンのセーターのおかげで、ゆっくりと社会復帰できたように思います(^^)



1700年代のインド、ガルワール王国の細密画
“クリシュナの黄金都市へ赴くスダーマー”