その色によって何かを感じています
美しい色を見れば人は癒され、優しい気持ちになります
日本の伝統色のピンク系には、人の心を動かし、人を幸せな気持ちにしてきた力があります
桜は日本の国花で、古事記に出てくる『木花之開耶姫・このはなさくやひめ』の木花が桜の花を意味し、さくやの音がさくらの語源と言われています
桜色は平安朝の頃から現在まで広く親しまれている日本の伝統色です
桜色に衣は深く染めて着む
花の散りなむのちの形見に
(古今和歌集・紀有朋)
撫子は秋の七草の一つです
可憐でありながら凛とした佇まいは日本の女性の強さや奥ゆかしさを表す『大和撫子』という言葉を生みました
桜色と同じく淡いピンク色で紫みを含んでいます
鴇は国際保護鳥で特別天然物に指定されていますが、日本の鴇は残念ながら絶滅しています
鴇が飛ぶ姿に、美しい黄みがかったピンク色が見られます
牡丹色は化学染料が普及した明治以降に生まれた色です
紅花で染めた淡紅色です
絹一疋(2反)を染めるのにわずか600グラムの紅花を使って染めた事からこの色名になりました
濃い紅花染めの紅は禁色でしたが、一斤染のような淡い紅色は着用が許された事から、“ゆるしいろ”とも言われました
桜色や鴇色が印象的な日本画と言えば上村松園(1875~1949)の“楚蓮香之図”が浮かびます
上村松園は京都で生まれ、子供の頃から錦絵を見たり、半紙に絵を描く事が好きだったようです
12歳で京都府画学校に入りますが一年で画学校を辞め、幸野楳嶺・竹内栖鳳に師事し、円山・四条派を学びます
松園は特にやわらかい四条派を好んだようです
楚蓮香之図は1924年頃の作品で、中国の楚の国に実在した人物です
楚蓮香さんは、歩くととても良い香りがして、いつも蝶々が付かず離れずひらひらと飛んでいたそうです
桜色と鴇色のピンクのグラデーションがなんとも優しく、補色の緑青には透明感があり、甘い香りが漂ってきそうですね