伊藤小坡筆 “ほととぎす”


江戸時代、質素倹約の時代背景により、茶色に続きあらゆる色相に灰色を混ぜた百種類の鼠系の色が誕生しました


いわゆる『四十八茶百鼠』は庶民の色彩への強い欲求から生まれた流行色です



赤みを含む鼠系には、桜鼠、梅鼠、青みを含む鼠系には、浅葱鼠、納戸鼠、緑みを含む鼠系には、利休鼠、紫みを含む鼠系には、鳩羽鼠、葡萄鼠等があります



桜鼠
鼠系統では最も明るい灰色がかった桜色




梅鼠
紅梅の花の色からきた赤みのある色





素鼠
素鼠は色味を含まないニュートラルな鼠色を表しています




浅葱鼠
蓼藍で染めた薄い青色(浅葱色)がくすんだ色



納戸鼠
少し緑みを帯びた鈍い青




利休鼠
千利休に因んで抹茶の色の連想から生まれた緑色

利休鼠は、北原白秋の詩に中山晋平が作曲した、『城ヶ島の雨』の中の『雨は降る降る城ヶ島の磯に  利休鼠の雨が降る…』の歌詞から広く知られるようになりました



鳩羽鼠
鳩の羽毛に見られるような鼠がかった藤色




葡萄鼠
日本に自生している葡萄の実からきた灰色がかった紫色



日本の伝統色の多数が、灰色がかったダルトーンやグレイッシュトーンで占められています









色彩心理的に鼠色(グレー)は、好き嫌いが最も少ない色と言われています
(色の話しグレーで詳しく紹介しています)




江戸時代の人気絵師と言えば、忘れてはならないのが、葛飾北斎です


北斎(1760~1849)は、改名を何度も繰り返しながら、70歳を過ぎて富嶽三十六景に代表される風景画を発表します

90歳で亡くなるのですが、「もうあと5年長く生きられたなら、本当の画工になれたものを…」

と、最期の言葉が一流絵師とは思えないほど謙虚です

作品点数が多いのも、常に良い作品を作ろうとしていた意欲の現れですね


世界で最も著名な日本人画家として、欧米のジャポニズムブームの原動力となっています


その北斎が描いた江戸庶民の美人画には、鼠系の着物がみられます



北斎筆  “美人愛猫図”


素鼠色の着物に、赤茶色の襟がアクセントになり、はだけた襦袢の赤と襟が桜鼠で、地味派手な組み合わせが粋で色っぽいですね




北斎筆  “酔余美人図”


こちらも納戸鼠の渋い着物の袖口からのぞく赤い襦袢が、内に秘めたような思いを表していて、地味派手の色彩効果は抜群です




京都の着物会社で仕事をしていた時、着物は少し地味目に、アクセントになる帯や帯締め、八掛け、襦袢を少し派手目にするのが基本と教わりましたが、江戸時代の粋な装いが基礎となっていたのですね



~こんな時は鼠色を活用しましょう~


色合わせに困った時はとりあえず鼠色(グレー)と組み合わせてみましょう‼

鼠色が苦手な人はボトムで選んでください

鼠色には、すべての色が含まれています

強い原色と組み合わせても上品で美しいコーディネートになりますよ😊


北斎筆 “手踊図”