江戸時代、庶民が着用できる三系統の色で最も親しまれた色は青でした。


木綿の生産が広まり、染まりやすく布が丈夫になり殺菌や止血作用などの理由から、藍染を好んで着用するようになりました。


青専門の染物屋を紺屋と呼び、老若男女の大多数の人が日常着の色として青を着用していました。


庶民の色彩に対する強い欲求から、様々な青系の色が誕生しました。



白藍は藍染の中で最も薄い色です。

藍染には濃藍、中藍、浅藍、白藍の四段階があります。平安時代は『しろきあい』と呼ばれていました。


勿忘草は、勿忘草の花のような明るい青です。

明治時代に産まれた比較的新しい伝統色です。



み空色は、明るく澄んだ秋の空のような薄い青です。『み・御』は神や自然など神聖なものを表す時に使われる接頭語。



露草色は、早朝に咲く露草の花のような明るく淡い青です。花や葉の汁を布に摺りつけて染めたことから、露草は着き草とも呼ばれていました。

色は落ちやすく、現在でも友禅の下絵作業に使われています。



花色は、青系統の代表的な強い青色です。

奈良時代以前は、はなだ色と呼ばれ、平安時代は縹色、江戸時代に花色になりました。



金春色は、明るい緑がかった鮮やかな青色です。

新橋の金春新道に置き屋があり、芸者が好んだ色です。別名は新橋色で、こちらの呼び名の方が一般的です。

化学染料が普及した大正時代に大流行しました。



瑠璃紺は、紫がかった深い青色です。

仏の髪の色や、仏国土などの色として経典にも見られる伝統的な色名です。



紺桔梗は、桔梗色に紺を含ませたような濃い青色です。



勝色は、紺色よりさらに濃い黒に近い藍色です。

武士や軍人に好まれた色で、色名の『かつ』は藍染を深く濃く染めるために布などをかつ(たたく)ことからきた色名で、『かつ』を『勝』にあてた縁起の良い色です。



青が美しい日本画を探してみました。




三木 翠山『維新の花』





丹羽 阿樹子『ゴルフ』





菊池 契月『友禅の少女』





竹内 栖鳳『アレ夕立に』





梶原 緋紗子『残波岬』





伊藤 小坡『ふたば』





川端 龍子『鳴門』





東山 魁夷『年暮る』





速水 御舟『洛北修学院村』





斉藤 和『花便り』





手塚 雄二『残雪』





千住 博『星の降る夜に』





水野 年方『三十六佳選 花見』





西川 祐信『四季風俗図巻』部分






歌川 豊春『女万歳図』



青が美しい日本画は沢山あります。

風景画や人物画に共通するのは、見慣れた空や海のような懐かしさと、身近な青に対する親しみやすさです。


明治初期、日本に招かれた英国人化学者アトキンソンは、日本人の暮らしに藍染が深く根づいている事に驚き、藍色を“ジャパンブルー”と呼びました。


青は日本人の心を最も表している色と言えるのではないでしょうか。





色を楽しむ素敵なあなたへ...


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