【07・ノーマル】
久流
「朝比奈さんなら、とうに行ってしまいましたよ」
●●
「えっ!いつの間に……」
(温泉に行こうって言ってたのにな……)
久流
「1番良い部屋を確保したいそうですよ」
●●
「……ヒナちゃんらしいですね…」
その光景が簡単に想像できてしまって、笑っていると
横で久流さんも微笑んでいた。
思わず顔を見つめると、久流さんは首を傾げる。
久流
「なんですか?」
●●
「え、いや……なんでもないです…」
久流
「変な人ですね」
久流さんは、分かっているのに聞いてるようだ。
●●
(意地悪なんだから……)
気まずくなったので話題を変えてみた。
●●
「ヒナちゃんが部屋を確保しに行ったという事は、部屋を選べるんですか?」
久流さんはわたしの言葉に一瞬動きを止め、
大きくため息をついた。
久流
「何を聞いていたんですか、あなたは……」
「貸し切りだと言っていたでしょう」
●●
「あ、そうでした……」
※ 【07~EXシナ】
廊下の角まで来ると、先を歩いていた久流さんに、腕を引っ張られ
壁に押し付けられた。
久流
「あなたは……」
●●
「…っ!」
久流さんにアゴを持ち上げられ、目を覗き込まれる。
顔に息がかかるほど、近い……
●●
「久流、さん……!」
久流
「あなたは自分がどの部屋にするか……いや、するべきか…
……分かっていますよね?」
●●
「え、っと……」
何か言おうとして微かに動くわたしの唇を
久流さんが冷たい指で、そっとなぞっていく……
その冷たさが移動するたび、刺激が心臓にまで伝わって
鼓動が速まってしまう。
久流
「………」
●●
(なんて答えるのが正解なんだろう…)
久流
「いつまで僕を待たせるつもりですか?」
「……いけませんね…」
●●
「…っ!」
唇ばかりに気を取られて、不意打ちを食らってしまった。
久流さんの手が、わたしのシャツの隙間から入り込み、肌に触れる。
久流
「あなたがそのつもりなら……」
その手がスルスルと上へ這い上がってきて、わき腹へと、到達した。
………くすぐったくて笑ってしまう。
●●
「っ……ふふっ…」
久流
「人が質問をしている時に笑うとは…」
●●
「そ、そんなこと言ったって……くすぐったい、です…」
その間も、久流さんの指が、あばら骨に沿って動かされる。
こそばゆさに耐えていると――
●●
「…はうっ!」
胸に痛みが走った。
わたしの敏感な部分を、久流さんは指で強く刺激する。
久流
「……時間切れです」
痺れを切らしたように、久流さんが口を開く。
久流
「もちろん、わたしの部屋の隣ですよ」
「言われなくても分かっていると思ってましたが…」
久流さんは当然のように言い放つ。
●●
「どうしてそうなるんですか?!」
久流
「どうしてって、あなたも馬鹿なことを聞くんですね」
「決まっているでしょ…」
久流さんは口の端を吊り上げ、笑顔を作って、言った。
久流
「……その方が、何かと都合が良いからですよ」
●●
(…っ……!)
●●
「都合って……どういうことですか?」
心の中に不安が広がっていき、思わず両手で胸を押さえつける。
久流さんの視線から逃れられなくて……ますます息苦しい
久流
「…………」
久流さんは薄く笑みを貼り付かせたまま、何も答えてくれない。
さっき久流さんに触られた部分が、じんじんと熱く疼いてくる。
この場から、さっさと逃げ出したいと思った。
●●
「と、とにかくっ……離してください!」
わたしは久流さんを押しのけた。
【08】
朝比奈
「●●センパーーイ!」
「どこに居るんですか~~?」
その時、わたしを呼ぶヒナちゃんの声が近づいて来た。
ハッとして、ヒナちゃんの元に駆け寄る。
●●
「ヒナちゃん!」
朝比奈
「あ、先輩」
「わたし、先に荷物置いてきましたよ?」
ヒナちゃんは久流さんに気づくと、声を掛けた。
朝比奈
「久流さんはまだここに居たんですか?」
「早く部屋、取った方がいいですよ?」
久流
「そのつもりです」
朝比奈
「先輩の部屋は、わたしの隣ですからね」
●●
「え、ヒナちゃんが決めちゃうの?」
せっかくだから自分で決めたかったな―― と、ちょっとガッカリした。
朝比奈
「いえいえ、わたしじゃありませんよぉ」
「西園寺部長がそうしろって、言ったんです」
●●
「西園寺部長が?」
(なんでだろう?)
朝比奈
「先輩の部屋は、西園寺部長の隣でもあります」
●●
(…そうなると…ヒナちゃんと西園寺部長に挟まれた部屋か…)
久流
「……私も荷物を置きに行きますので」
●●
「あ、荷物、ありがとうございました」
久流
「いえ……」
眉間にシワを寄せた久流さんは、一人で行ってしまった。
【09】
ヒナちゃんと一緒に部屋に入る。
荷物を置き、ふかふかの座布団に腰を下ろして一息ついた。
朝比奈
「さっき見て来ましたよ、源泉掛け流しの露天風呂♪」
●●
「へえ~~それでどうだった?」
(行動が早いな、ヒナちゃん…)
朝比奈
「お風呂は広くて~~~」
「見晴らしもすっごく良かったですよ」
ヒナちゃんは身振り手振りを交えて、露天風呂について説明をしてくれた。
聞いていると私も見てみたくなってきた。
朝比奈
「早く行きましょうよぉ~~」
●●
「じゃあ、行こっか!」
朝比奈
「わたし、準備してきますねっ!」
そう言って、ヒナちゃんは自分の部屋に戻って行った。
わたしもカバンを開けて必要なものを取り出しにかかる。
●●
(さて、着替えとタオルと……)
???
「この部屋にしたんだね」
荷物をゴソゴソやっていると、部屋の入り口から声が聞こえて来たので、返事をする。
●●
「あ、どうぞ、入って下さい」
【10】
黒崎
「お邪魔します」
●●
「どうしましたか?」
お風呂に持って行くものを準備しながら、黒崎さんに話しかけた。
黒崎
「牧野さんを探してたんだ」
「姿がぱったり消えてしまったから、心配したよ」
●●
「すいません、部屋を決めるのに時間が掛かってしまって…」
黒崎
「おや?」
「……っと、……これは失礼」
●●
「え?」
その言葉に顔を上げると、黒崎さんは顔を横に背けていた。
●●
(なに……?)
視線を床に落とす、と――
●●
「………あああああっっ!!」
黒崎
「…………」
お風呂に行く為に用意しておいた下着が目に入って、
思わず大声が出てしまった。
慌てて下着を隠したけれど、時既に遅し……
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(見られちゃった……)
(恥ずかしくて顔から火が出そう……)
うつむいて、これからどうしようか考えていると
黒崎さんの手が、目の前に差し出された。
●●
「これって……」
【11】に続く
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