【11】
その手には、キラリと光るものが握られている。
黒崎
「この部屋のカギだよ」
そこには「すずらん」と、書かれてある。
この部屋の名前だろうな―― と、その文字を見つめているとーー
黒崎
「……すずらんの花言葉をしってるかい?」
●●
「いえ……」
黒崎
「『意識しない美しさ……』」
「でも……その姿はとても可憐で、愛らしいけれど……」
「実は毒を持ってて、危険なんだ、」
そこまで言うと黒崎さんは、しゃがみこんで
わたしの耳に口を寄せた。
黒崎
「……まるで●●のようだね」
●●
「………!」
顔を見ると、怖いほどに整った笑みを、黒崎さんは浮かべていた。
誰かが身体の内側から、胸を叩いているのではないかと思うくらいに
激しく心臓が、鼓動する。
黒崎
「それでは、わたしはこれで」
そんな私を余所に、それだけ言って、部屋を出て行く黒崎さん。
遠ざかる足音を耳にしながら、わたしは深呼吸を繰り返す。
落ち着きを取り戻しつつあった時、急に音が、止まった。
黒崎
「ああ……」
「あなたと私のセンスは、合いそうだ」
●●
「え……」
黒崎
「今度はあなたが、あれを身につけた状態で拝見したいね」
●●
(それって、さっきの…!)
そう言い残して黒崎さんは、私の部屋を後にした。
【12】
あれからヒナちゃんが部屋に迎えに来てくれた。
●●
(よかった……)
ヒナちゃんのお陰で、ひとまず安心できた。
それから露天風呂へ向かった私たちは、脱衣所で服を脱ぎ
タオルを身体に巻きつけた ――
朝比奈
「夕飯は何ですかね~?」
「とっても楽しみですっ♪」
「今日は食べまくりますよぉー!」
●●
「あんまり食べ過ぎるとお腹こわすよ?」
朝比奈
「大丈夫ですよぉ~~」
「きっとハンサムが、消化剤を持ってるハズですから!」
●●
(そういう問題かな?)
ヒナちゃんの言葉に苦笑する。
●●
(……あれ?)
その時、露天風呂と脱衣所を仕切る、すりガラス――
そこに映る黒い影にドキッとした。
外で木が、風で揺れているのかな、とも思ったけれど
……やっぱりおかしい。
●●
「ヒナちゃん、あれ……」
朝比奈
「え?」
「………人、ですよね?」
ヒナちゃんが不安そうな顔をして、私を見た。
混乱する頭で、考える。
今日は貸し切りで、わたしたち以外に、女性はいないはず……
●●
「なのに、どうして……」
動く影を見ていると、ある人物が頭に浮かび上がって来た。
●●
(もしかすると……)
選択肢
1 黒崎さん……なわけないよね (黒崎)
2 梶さんに違いないっ! (梶)← これ
3 久流さんだけは絶対にあり得ない (久流)
●●
「梶さんだと思うんだけど……」
朝比奈
「どうして分かるんですか?」
●●
「いや、何となく、なんだけど……」
「……誰ですか?出て来て下さい!」
影に向かって言うと、姿を現したのは―ー
???
「やれやれ……」
「バレちまったか」
朝比奈
「あああーー!何してるんですかぁ!」
頭をガリガリと掻きながら、梶さんが脱衣所に入ってくる。
●●
「……って、梶さん!!」
(それも……ハダカ!)
(下半身はタオルで隠されているけれど……)
朝比奈
「きゃああああああー!」
「もう、変態! 覗き魔! 色情魔~~~っ!!」
梶
「お、おいっ!違うって!」
「朝比奈、デカい声、出すなっ!」
朝比奈
「いやーーー!こっちに来ないでぇーー!」
梶さんがヒナちゃんを追い掛け回している。
朝比奈
「亮司さん、見損ないましたっ!」
梶
「誤解だって!」
「とにかく俺の話を聞け!」
追いかけっこをする二人を止めたいけれど
タイミングが掴めずにオロオロしてしまう。
●●
(ど、どうしよう……)
すると、この騒ぎを聞きつけたようで…
バタバタとこちらへ向かって来る、足音がした。
西園寺
「これは一体、何ごとなの?!」
黒崎
「ただ事ではないようですね」
西園寺部長と黒崎さん。
そして、久流さんまでもが、息を切らせてやって来た。
●●
「みなさん……!」
西園寺
「牧野ちゃん、何があったのっ?」
黒崎
「大丈夫ですか?」
●●
「はい……それが……」
久流
「騒ぎの元は、あれでしょう」
久流さんは、ハダカでヒナちゃんを追い回している梶さんを見つけて
状況を理解したようだ。
西園寺
「ちょっと、リョウちゃんっ!」
「アンタ、あれほど言ったのにっ!」
黒崎
「リョウ……」
西園寺部長は怒り心頭、と言った様子で。
一方、黒崎さんは…憐れみの目を梶さんに向けていた。
西園寺
「そんなに入浴シーンが見たかったのねっ?」
「こうなったら仕方がないわっ」
「文字通り……アタシがひと肌脱ぐわ!」
黒崎
「さ、西園寺さん……」
「……っと、…いけません!」
西園寺部長が衣服に手を掛けた所を
黒崎さんが止めに入る。
久流
「梶さん、あなたどういうつもりですか?」
久流さんは梶さんを捕まえていた。
ヒナちゃんは、私の後ろから、ひょっこり顔を出して、様子を伺っている。
梶
「違う!覗こうとか、そんなんじゃないんだ!」
久流
「では、何だと言うんです?」
「男湯と女湯を間違えた、なんて言い訳はなしですよ?」
【16】へ続く
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