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ヒロンの苗字は 牧野
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01
わたしは会社の忘年会で、伊豆にある高級温泉に来ていた。
朝比奈
「わーーすごい!」
「こんなトコなんて、思ってもなかったですよ」
●●
「ほんとだね」
「見るからにお高そう……」
朝比奈
「よくそんな予算がありましたね……西園寺部長~?」
西園寺
「ふふふ……」
「アタシの力を見くびるんじゃないわよ!」
「ちょーーとばかし本気を出せば、これくらい、朝メシ前なんだから」
西園寺部長が、得意顔で言った。
わたしとヒナちゃんが感心していると…
久流さんが呆れた様子で、口を挟んだ。
久流
「そんなワケないでしょう」
「まあ、大方予想はつきますが……」
久流さんが黒崎さんに、視線を移す。
西園寺
「あ~~ら、バレちゃった?」
梶
「アキ先輩ですか?」
「…じゃなきゃ、俺らの忘年会に来ないでしょ、」
みんなの視線を集める黒崎さん。
わたしも黒崎さんの方を見ると、優しく微笑み返してくれた。
【02】
黒崎
「この旅館はわたしの知人が経営していてね」
西園寺
「前にキングと、そろそろ忘年会の季節ねぇ~~って話してたら、こうなったワケよ」
今回のことは黒崎さんが、取り計らってくれたらしい。
通りですっごい旅館なわけだ。
朝比奈
「さすがキングですね!」
西園寺
「でしょ~~」
「持つべきものは、「キング」よねっ♪」
久流
「意味が分かりません」
すかさず久流さんのツッコミが入った。
ここぞとばかりに、西園寺部長が黒崎さんの腕に頬を摺り寄せ、濃厚なスキンシップを図っている。
そんな西園寺部長にも、黒崎さんは、意に介する様子もない。
●●
(さすが黒崎さん…)
(大人の対応だな…)
朝比奈
「お部屋も豪華なんでしょうね!」
「2人1部屋と云う事は、先輩と一緒のお部屋ですね♪」
満面の笑みのヒナちゃんが、つぶやく。
すると黒崎さんが口を開いた。
【03】
黒崎
「この旅館は貸切にしてありますよ」
「私も日頃の疲れを取りたいと思いましてね…」
●●
「貸し、切り……?!」
朝比奈
「え!わたし達だけなんですか?!」
黒崎
「だって他人が居ては休まらないでしょう?」
「それに……‥」
黒崎さんは近づいてくると、わたしの耳元で囁いた。
●●
「!?」
黒崎
「あなたと二人きりで、時間を過ごしたいしね…」
………。
黒崎さんの行動によって、その場に不穏な空気が流れた。
その発生源は、梶さんと久流さんのようで……‥
梶さんは、わたしと黒崎さんを引き離し
久流さんは黒崎さんを、ジトリと睨みつけていた。
久流
「………」
梶
「アキ先輩……アンタねぇ」
黒崎
「なんだい?」
「言いたい事があるなら、言ってごらん?」
梶
「…………」
「牧野は、オレが連れて歩くんで……」
黒崎
「ほう…」
「彼女はそれで了承しているのかな?」
まさに一触触発、といった雰囲気。
ヒナちゃんだけがニヤニヤしているけれど……
【04】
梶さん、黒崎さん、そして、久流さん…
3人の視線が、わたしに突き刺さる。
●●
(えっ?! わたし……!?)
「えっと……」
選択肢
1 連れて歩くって……久流
2 そんな約束……黒崎
3 ……はい……梶 ←これ
黒崎
「……へぇ…」
梶
「牧野……お前…」
わたしの返答を聞いた梶さんが、照れ臭そうに笑って、ガリガリと頭を掻く。
●●
「だって、わたしが監視しておかないと…」
「梶さん、何をしでかすか分からないじゃありませんか」
わたしはイタヅラっぽく、梶さんに微笑んだ。
【05】
梶
「………」
しゅんとする梶さんを見て、少し言い過ぎちゃったかな、と反省する。
梶
「…そりゃないぜ……」
パンッ! パンッ!
気まずいな、と思っていると、西園寺部長が手を叩いた。
西園寺
「アンタたち、いくら社外だからって、堂々とイチャついてんじゃないわよ!」
「さあさあ、みんな一旦部屋に荷物を置きに行きましょ?」
「アタシ長旅で、ちょっぴり疲れちゃったから、落ち着きたいわ~~」
西園寺部長の言葉で、その場は収まり、ホッとする。
西園寺
「それじゃ、夕食まで自由時間よ♪」
「各自、部屋で休むなり、散歩するなり、好きにしてちょーだい♪」
朝比奈
「温泉に入りたいなぁ」
「先輩、温泉に行きましょうよ!」
ヒナちゃんがわたしに提案してくれたけど、どうしよう……
西園寺
「いいわねえ~~温泉!」
黒崎
「ここは源泉かけ流しですよ」
「内風呂も露天風呂もありますから」
梶
「……露天風呂か……」
黒崎さんの言葉に、素早い反応を見せた梶さんは…
口元に手を当てて、何やら一人でブツブツと言っている。
西園寺
「ちょっと、リョウちゃんっ! 分かってるでしょうね?」
【06】
西園寺部長に、なぜか梶さんはビクっとする。
そして、腕を組んで仁王立ちしている西園寺部長に、ゆっくりゆっくりと顔を向けた。
梶
「は、はい……?」
西園寺
「アタシのハダカは高くつくわよ?」
「覗いたら承知しないんだから!」
梶
「だ、誰がそんなおぞましいもの……」
「頼まれたって、お断りします!」
西園寺
「まあ! そんなこと言って…」
「今、いやらしい事、考えてたでしょっ!」
「アタシの目は、誤魔化せないわよっ!」
●●
(…始まっちゃった……)
西園寺部長と梶さんのやり取りを見ていたら
誰かに肩を引き寄せられた。
●●
「あっ……」
久流
「バカはほっといて、行きましょう」
久流さんは自分の荷物とわたしの荷物を片手に持ち
もう片方の手で、私の肩を抱く。
わたしは久流さんに押されるようにして、歩き出した。
●●
「いいんでしょうか……」
久流
「いつものことでしょう…」
●●
「あれ、ヒナちゃんは…?」
(さっきまでここに居たはずなのに…)
【07】へ、続く
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