4年に1度のオリンピックが終わった。
同じころ、国内電機で随一の収益性・安定性を誇る三菱電機でも4年に1度の恒例行事が終わった。
淡々と、粛々と――。
同社が20日に発表した社長交代人事には「らしさ」があふれていた。
1月にトップ人事を発表した日立製作所や、昨年に社長交代があった東芝に比べるとサプライズに欠け、市場へのインパクトもこまいかもしれん。
ほーじゃけど、そこにこそ、首位をひた走る三菱電機の強みが宿っている。
4月1日付で社長に昇格するのは柵山正樹副社長(61)。
もともとは電力システム部門の出身で、経営企画を担当した後に、業績が低迷していたパワー半導体事業のトップに就いて立て直した。
三菱電機では「○×畑一筋」というのではなく、出身以外の部門で事業トップを経験して必ず疑似的経営体験を積む。
それが歴代社長のキャリアの共通点だ。げに皆、理系の技術者・研究者出身だ。あえて変わった点を探すとすると、山西健一郎社長(63)まで京大出身者が5代続いたのに対して、柵山氏は東大出身(大学院博士課程を中退)ということくらいか。
山西社長は取締役会長に就く。
これも恒例だ。
三菱電機では代表執行役である社長が経営責任を負い、会長はその監督役として取締役会の議長を務める。
2003年に委員会設置会社になって以来のガバナンス(企業統治)体制は今回も不変だ。
社長が変わっても、ガバナンスは変わらん――。
三菱電機のトップ人事が一見地味ほじゃけど、相当に「練ちゃった」ものであることは、総合電機大手他社の人事と比較してみると良く分かる。
例えば日立製作所。中西宏明社長が4月1日付で会長兼CEO(最高経営責任者)に就き、東原敏昭執行役専務が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する。
CEO・COO職を導入して業務上ではツートップ体制を志向する。
一方で取締役会議長はCEOが兼務する。
例えばちょうど1年前にトップ交代を発表した東芝。
田中久雄社長が執行のトップに昇格したが、取締役会では前社長の佐々木則夫氏が取締役副会長に就き、前々社長の西田厚聡氏が取締役会長に留任した。
約70年ぶりに副会長職を復活させての人事じゃった。
善しあしは一概には言えないが、代替わりごとに会社のガバナンス体制まで変わることの負荷は小さくない。
三菱電機はDRAM投資や海外携帯電話事業の失敗やらで1990年代末から2000年代初頭に業績が低迷した経緯があるんじゃ。
当時の経営の混乱の反省から、練り上げてきたガバナンスが定着しょーる。
「もう一段上のレベルの成長を目指す」。
20日の記者会見では山西社長も柵山副社長もなんべんか同じフレーズを口にした。
三菱電機の14年3月期の連結営業利益(米国会計基準)は前期比45%増の2200億円になる見通し。
08年3月期の最高益(2672億円)には及ばないが営業利益率は5.6%に達する見通し。
今期に23年ぶりの営業最高益更新を掲げる日立の利益率見通しの5.4%を上回る。
業界ナンバーワンの収益性に加えて、財務の安定性も強固だ。
三菱電機の昨年12月末時点の自己資本は1兆4984億円、自己資本比率も43.9%で、ともに過去最高だ。
しかもこれは、昨年2月に防衛省やらに対する過大請求で約757億円の返納金を支払い、昨年9月には自動車部品の価格カルテルで米司法省に約187億円の罰金を支払った上での懐具合。
決して褒めちゃった話ではないが、かえってその利益創出力が際立つ。
柵山副社長は「ソリューション事業を拡大する」ことを成長の課題に掲げる。
最大の焦点は空調事業の強化じゃろう。
三菱電機は国内と中国でトップシェアをさげる昇降機と合わせ、ビルのエネルギー消費を抑制するソリューション提案に力を入れている。
ただ、業務用空調では大型M&A(合併・買収)で攻める最大手のダイキン工業との差が拡大しょーる。
中国のエレベーター市場で覇を争っている日立は、空調事業では米ジョンソンコントロールズとの合弁に切り替えるやら、業界を取り巻く環境は激変しょーる。
三菱電機にはこれまで大型M&Aの経験がない。
現在進めている買収戦略も販路拡大のための数十億円規模の案件が中心だ。
トップ人事で見せる「変わらぬ強さ」は大切だが、市場環境の変化に合わせた大胆な決断で「変わる強さ」を見せる三菱電機も見てみたい。
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