FM245ex ヴァチカン教皇庁図書館の蔵書◇東京 印刷博物館 2026/05/26

 

キリスト教、カトリック教会の首長たる教皇は、書物をあつめていた。

サルザーナ出身の神学者・人文主義者トンママーゾ・パレントゥチェッリ、すなわち教皇ニコラウス5世(在位1447-55)が、教皇のための図書館を設置した。

フランシスコ会のフェリーチェ・ペレッティ、教皇シクストゥス5世(在位1585-90)は、ヴァチカン宮殿両翼につらなる新館の建設を命じ、現在の教皇庁図書館の核となる建物を建てた。

ヴァチカン教皇庁図書館の使命と責任は、「膨大な学術と藝術の遺産を収集・保存し、真理をもとめる学者に提供すること」ならびに「使徒座の活動を支える文化の発展と普及に貢献すること」にある。(括弧内の引用は、教皇フランシスコ『ローマ教皇庁と世界における教会への奉仕に関する使徒憲章「福音宣教」』ヴァチカン市国、2022年3月19日) (*1)

 

ヴァチカン教皇庁図書館の蔵書8点をふくむ、あわせて66点の出品からなる印刷博物館の展示をみた。「名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+」(会期:2026年4月25日-7月20日)である。(参観は2026年5月26日) (*2)

 

これきさきだつ二つの展覧会が、2002年と2015年にあった。(*3)

 

本展に出品されたヴァチカン教皇庁図書館の蔵書は、つぎの8点である。先頭の数字は展示番号。

1 プラトン『プラトン著作集』(『ソクラテスの弁明』をふくむ) [写本] 1484
2 アリストテレス『自然誌および天体論』[写本] 13世紀末-14世紀初
6 ルクレティウス『物の本質について』[写本] 1483
7 アウグスティヌス『神の国』1467
8 ボエティウス『哲学のなぐさめ』1473以前
9 『禁書目録』[カトリック教会による、活版] ケルン、1619
29 カント『純粋理性批判』[ドイツ語] 1790
30 ニーチェ『ツァラトゥストラはかく語りき』[ドイツ語] 1893

展示番号1~66のうち、つぎの4点が明星大学の蔵書である。

 

10 デカルト『方法叙説』初版 1637

13 ガリレオ『天文対話』1632

36 ベクレル、直筆の実験ノート 1900

37 マリー・キュリー『マリー・キュリーが物理学博士号取得のためパリ大学理学部(ソルボンヌ)に提出した学位論文』1903

 

そのほかは、モーツァルト、ベートーヴェンの楽譜(33, 34,35)、「鉄腕アトム」「鉄人28号」(64a および 64b)をへて、映画パンフレットにいたるまで印刷博物館の蔵する書物および資料であった。

個人的には、展示番号2と6と36に注目した。もう一点、ダンヴィル『朝鮮および日本図』(銅版・手彩色、530×585mm、1737年)に目をこらしたが、図録の図版(p.089)が小さすぎて役に立たず、実物を虫めがねで観察するに越したことはない。再検を期す。

(大井 剛)

 

【見出し写真】 「名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+」印刷博物館のフライヤー。

 

(*1) ヴァチカン教皇庁図書館館長、マウロ・マントヴァーニ神父「展覧会「ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+」開催によせて」中西保仁訳、註(*2)後掲図録、p.006.

原文は英文、同図録 p.213 所収。》Bibliothca Apostolica Vaticana Ⅲ+《 by Don Mauro Mantovani, SDB, Prefect, Vatican Library.

 

(*2) 『名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+』印刷博物館学芸企画室、TOPPANグラフィックコミュニケーションズ株式会社、五柳書院編、TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館、2026年4月。216p. 図録に開催期間の記録はない。

 

(*3) 展覧会図録はつぎの通り。

『ヴァチカン教皇庁図書館展 書物の誕生 写本から印刷へ』印刷博物館編、印刷博物館、2002年。xxiv+167p.

『ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ 書物がひらくルネサンス』印刷博物館開館15周年記念特別企画展図録、印刷博物館学芸企画室、トッパンアイデアセンター、五柳書院編、凸版印刷 印刷博物館、2015年。x+265p.

 

(更新記録: 2026年5月26日起稿、5月28日公開)