FM217 霧ヶ峰の湿原植物群落◇八島ヶ原湿原 2025/07/18

 

霧[キリガ]峰の西北陰に矢島池、釜池あり、西南面に賽河原(さいのかはら)、足倉[アシクラ]池あり、其水皆諏訪湖へ下る。

(『増補大日本地名辭書』霧峰)(*1)

 

霧ヶ峰の高原台地に湿地がひろがっている。

 

霧ヶ峰の高原にある湿原植物群落は天然記念物に指定されている。

1939年(昭和十四年)9月に植物群落3件が国の指定をうけた。すなわち

  八島ヶ原湿原植物群落

  踊場湿原植物群落

  車山の樹叢湿原植物群落および草原植物群落

である。

この3箇所を統合して、あらためて「霧ヶ峰湿原植物群落」として国の天然記念物に指定されたのが、1960年(昭和三十五年)6月である。このとき「八島ヶ池西半」22町6反9畝23歩をくわえて新指定区域とした。そこは旧御料地で、国有林であった。(*2)

 

八島ヶ原湿原のみはらし。写真中央に八島ヶ池がみえる。

(写真は長野県諏訪郡下諏訪町および諏訪市四賀にて2025年7月18日撮影)

 

霧ヶ峰「ビーナスライン」の車道が標高1646メートルに達した鞍部に湿原入口の駐車場がある。そこからの歩きはほとんど起伏のない遊歩道をたどる。

 

オオカサモチ  むらがる虫たち

 

池塘におりてゆくひとがほとんど。われらは写真の向って右手にすすむ。

 

シシウド セリ科

 

ノアザミ キク科  ヒョウモンチョウ

 

後翅の裏をみせてくれないので、ウラギンヒョウモンかギンボシヒョウモンか判別できない。おびただしい数が飛んでいるのだが。

 

キバイソウ キンポウゲ科

 

ノハナショウブ アヤメ科

 

木道をつたって、林のおくにすすむ。

 

ジャノメチョウ。動物の糞にたかる。(右の写真はストロボ使用)

 

笹の原にでた。

 

中世の御射山があった方角へ。(*3)

(旧御射山 ⇒ FM217_S1「武者のまつり◇諏訪下社の旧御射山」2025/07/18 へ)

 

高原のホテル。カレーをたべた。爆弾むすび各一個は夕食にまわす。

 

じつはたてものから百メートルほどのところにビーナスラインの観音橋がかかる。湿原から発した流れが観音沢となり、山を西にくだり東俣川と名をかえ、北からの砥川に合し(そこは落合)、諏訪下社の門前をながれて諏訪湖にそそぐのである。

 

なかなかの水量である。鎌ヶ池のほうから流れくだる沢であろうか。湿原南端の水をあわせて観音沢となる。

 

はねがすきとおっています。アキアカネ。

 

ハクサンフウロ フウロソウ科

 

キバナノヤマオダマキ キンポウゲ科

 

ヨツバヒヨドリ キク科  アブでしょうね。

 

キンバイソウ キンポウゲ科

 

これもアブ。

 

エゾカワラナデシコ ナデシコ科

 

タカトウダイ(トウダイグサ) トウダイグサ科

 

〔左〕ハナチダケサシ ユキノシタ科

〔中〕ヤナギラン アカバナ科

〔右〕イブキトラノオ タデ科

 

〔左〕コバギボウシ キジカクシ科

〔右〕ハナチダケサシ これもそうだろうか?

 

〔左〕ヨツバヒヨドリ キク科

〔右〕ヤナギラン アカバナ科

 

けものよけ。毛のはえている生きものは出入り禁止です。わかった?

 

ヨツバヒヨドリ キク科

 

オオヒナノウスツボ ゴマノハグサ科

 

八島ヶ池にもどってきた。

 

ホソバノキリンソウ ベンケイソウ科

 

ガクアジサイの一種?

 

オミナエシ スイカズラ科

 

八島ヶ池。いちばん低いところでしょう。

 

カラマツソウ キンポウゲ科

 

オカトラノオ サクラソウ科

 

ミツモトソウ バラ科

 

ホンバノキリンソウ ベンケイソウ科

 

オオマルハナバチ。

 

豹紋蝶だらけ。

 

葉に特徴がありますが・・・

 

「オオハギボウシ ユリ科」名ふだの植物は、ひとつまえの写真にるオオバギボウシ。すると、この花はいったいなにものであろうか。(*4)

 

さらばじゃ。16時45分に退去。-この写真は12時57分撮影。見出し写真におなじ。

ドキュメンタリーは噓をつくのであった。

(大井 剛)

 

【植物名について】 標識のあるもの、花の一覧にみえるものは、それにしたがう。さしあたりはっきりしないものは自白。あてずっぽうで書いた名はない。草花の名なんて、ほいほいわかるわけないじゃん。虫ではあるまいし。

 

これが花の一覧。湿原の八島ヶ池側の入口にたっている大パネル、掲示板のようなもの。写真は左右2枚をすこしずらして接続した。

なに?見えない?・・・しょうがないな。

 

〔左〕

 

〔右〕

写真中央にニッコウキスゲとその種子がある。科名が抹消されているのは、分類の変動を反映したものかもしれない。ワスレグサ科。

ニッコウキスゲ(日光黄菅)は通称で、和名ゼンテイカ(禅庭花)、エゾカンゾウ(蝦夷萱草)とよぶ地方もあるが、エゾカンゾウの名をせまい意味の変種にあてることもあり、名称じたい混乱している。全国に分布し、とりたてて日光地域の固有種というわけではない。

八島ヶ原湿原では、開花をちらほら見かけるていどで、すでに盛りをすぎているようであった。霧ヶ峰自然保護センター*のウェブサイトに掲載されたブログによれば、八島ヶ原で「かなり」さいてきたのが7月1日、車山高原では7月6日に「見ごろ」をむかえたが、かたいつぼみも多くて昨年(2024年)のような「一斉に開花する感じ」はのぞめないかもしれないと案じ、7月11日には見物客がふえてきたという。どなたも「写真」のような景色をもとめて蝟集するのである。

例年、週末に道路の渋滞が発生するので、平日をねらうがよろしい。おもいつきで出かけた7月18日、金曜日、八島ヶ原をえらんだのは、幸運でした(FM217ex)。

 

なお八島ヶ原駐車場の「ビーナスライン」側入口には、駐車の順番待ちレーンが、美ヶ原方面への通りぬけレーンのほかに常設されています。休日の百貨店かショッピング・モールかという光景を現出しますね。はんたいに美ヶ原高原のほうから接近する車は、どうも行き場をうしなうようです。(右折でわりこむには蛮勇がいります、違法ではないのでしょうけれど。もちろんすいていれば問題ありません)

 

(*1) 吉田東伍著『増補大日本地名辭書』冨山房、1971年(昭和四十六年)増補版。初版は1902年(明治三十五年)。第五巻「北国・東国」p.712「霧峰」。

 

「矢島池」とあるのがいまの八島ヶ池である。八島ヶ原湿原の東北はじにある鎌ヶ池が「釜池」とでている。

 

(*2) 国指定文化財等データベース*、史跡名勝天然記念物、霧ヶ峰湿原植物群落。

 

八島ヶ原湿原の駐車場から直接、林道づたいに下諏訪町の諏訪下社門前におりてみた。道がせまく「離合」困難。のぼる車のいない夕刻でなければ、かなりの難儀を覚悟すべし。

 

この日の往路はつぎの項を参照されたし。

(八島湿原へ ⇒ FM217ex「晴耕雨読の記 上諏訪 湯の脇 2025年07月」7月18日)

 

(*3) 登山ずぼんをはいた後ろ姿、Tバックでないことは明らかだが、ふんどしでもない。ウェイスト・ポーチの帯がたれさがっているのです。

 

(*4) どんなにきっぱりと名ふだがついていても、標識をたててから別の生命体がのさばってきたのではないかと、一抹の不安が去らない。図鑑ではないし、高山植物のよび名をとりちがえたくらい、地上のくらしに特段のさわりはないから、そこは大目にみちくり。

 

(晩秋の霧ヶ峰 ⇒ FM149ex「霧の子のたましい◇中央分水嶺 霧ヶ峰」2022/11/25 へ)
(秋の美ヶ原 ⇒ FM196ex「はるかなやまなみ◇美ヶ原高原」2024/10/21 へ)

 

(更新記録: 2025年7月18日起稿、8月4日公開、8月6日、8月10日、8月28日修訂)