(6) ドイツでは、冬でも、マラリアに感染?(1884年~1888年)
第18章 マラリア蚊媒介説に対する反論、及び、これらに対する再反論
(6) 人跡未踏の地において、マラリアに罹患することがあるのは、なぜか?という反論
【再反論】 これもまた、(4)と同じであり、おそらくは、マラリアでないのだろう。
もし、マラリアであるときは、必ず、他に原因がある。
ただ、実際の症例が出てくるのを待って、実際の答案を下すことができるだけである。
今日までの探索によれば、動物(蚊を除く)は決して、ヒトのマラリア原虫に罹患することはない。
故に、動物をもって、マラリア原虫の泉源だろうと想定することはできない。 |
↑『我邦ニ於ケル麻刺里亜蚊伝搬ノ証明』(都築甚之助,大町文興著。東京:都築甚之助,明34.10)(国立国会図書館のサイトの近代デジタルライブラリーで無料で閲覧できる)p 45-48を私が現代語訳したもの。
ドイツの話はかなり後の方に出てくるが、この章全体を、訳さないと意味をなさないので、そうした。
ちなみに、現在では、マラリアはハマダラカにより、媒介されることがわかっている。
もちろん、血小板輸血・医療従事者の針刺し事故などによって感染することもあるが、圧倒的多数のマラリアはハマダラカにより媒介される。
なお、サルマラリア原虫が、ヒトに感染すると、軽いマラリア症状を引き起こすことが知られている。
熱帯熱マラリア原虫は,他のマラリア原虫とは違って,大変高い増殖率を持っているので,患者となり得る人が大勢いて,蚊が年間を通じて活動する場合,もっとも有利となる。
数学モデルによると,たとえ患者に高い死亡率をもたらしたとしてしても,生存競争にうち勝って,他のヒトマラリア原虫よりも,はるかに素早く人々の間に拡大できることが示されている。
さらに,頻繁に起こる伝播は,遺伝的変異のある原虫による重複感染の頻度を増加させ,病原性の増加をいっそう促進する。
このような適応悪性仮説を支持する実験例として彼は,20世紀前半には比較的頻繁に行われた,サルマラリアPlasmodium knowlesi による,脳梅毒患者の治療にまつわる経緯を紹介している。
P. knowlesi は,サルの間に自然感染している大部分のマラリア原虫と同じく,サルから人へ初めて移されると,人には比較的症状の軽いマラリアを引き起こす。
血液中におよそ1,000匹/mm3まで増殖し,これは比較的軽い症状を起こさせるヒトマラリア原虫3種において,典型的な数値の約1/10である。
すなわちモスキットロボットならぬ注射器で,患者から患者へと植え継ぎされた。
ところがこのような植え継ぎが170回を越えた後,このマラリアは脳梅毒と同じくらい,危険なものとなってしまったのである。
マラリア原虫の密度は500,000/mm3に高まり,病状は生命を脅かすまでになった。
植え継ぎ回数が少ないのであまりはっきりしないが,蚊による実験的な感染実験でも,同様の結果が得られている。 |
↑『論考 マラリア原虫とそのベクターの生態学論からみたマラリア流行の疫学と対策』(池本孝哉・高井憲治)(『日本熱帯医学会雑誌 第29巻 第3号 平成13年9月』収載)
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/society/jstm/29-3.pdf
ただし、出典は読みにくいので省略した。
もちろん、牛や馬の体内では、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫は増殖しない。