右手家は、お父さんである親指とお母さんである人差し指に、三人姉妹である長女の中指、次女の薬指、三女の小指の5人家族である。
まったく同じ家族構成の「左手家」もある。
両家は血が繋がっており、ときどき一体となってがっちりと御主人を支えている。
なかでもご主人の利き腕である右手家は頼りにされている。
お父さんは一家でもっとも背が低く、ずんぐりしているが力持ち。
お母さんは細身で器用で一番の働き者である。
長女は一番背が高く母親に次いで器用、次女は案外ぶきっちょで父譲り、三女はもっとも動きが鈍く華奢である。
一家はいつも一緒で仲が良いようだが、じつはお父さんはビミョーな立場である。
いつも他の四人がびったりと並んでいるのに、お父さんだけ距離を置かされているから寂しい。
でも、いつもその4人の方を横から見守り続けている。
一家が団欒していた。やっと忙しかった一日が終わって、御主人が寝入ったときだ。
親「最近は忙しくてかなわん」
人「そうね。スマホが増えてきたからね」
親「そうなんだ。オレにボタンを押させようとするが、だいたいオレは不器用なんだ」
人「たしかに全部のボタンを押すのは大変ね」
親「それにボタンが小さくて苦労する」
中「でもね、私たちは昼間はキーボードで酷使されているのよ」
薬「あたしも不器用なのに、キーを押させられるの」
小「あたしなんか背が低いのに遠くのキーを押させられる。
左手家の小指さんなんか『Q』とかを押すのは、利き腕じゃないし大変らしいよ」
親「でも、お前たちは落ち着いて働けるけど、オレなんか歩いてるときとか、揺れる電車の中のスマホだから苦労するんだ」
人「それはそうね。あたし達も揺れるから気分悪くなるものね」
親「それに昼間のパソコンキーボードのときは、オレの側頭部で変換キーとかスペースキーとかを押されるから偏頭痛を起こすんだ」
人「でも私たち働き者で動けるからいいほうよね。リウマチとかになると大変」
親「そうだな。達者なうちにせいぜいしっかりと働くか」
人「そうよ。さあみんなでお父さんを暖かく包みもう!」
ちょうど御主人は、敵と戦う夢を見ていた。
親指を中にしてしっかりとコブシを握り締めていた。
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