広告やSNS、エ◯画像。
生成AIで作った女性の画像がやたら多いように感じる。

一方で、AIで作られたイケメンはどうだろう。
もちろんいる。
画像生成AIに「イケメン」と入れれば普通に出てくるし、技術的に男性が苦手というわけでもない。
でも、AI美女と比べるとあまり見かけない気がする。
これは単に自分のタイムラインが偏っているだけなのか。
気になったので調べてみた。
本当に女性型のほうが多いのか
現在ネット上に存在する「生成AI美女」と「生成AIイケメン」を全部数えたような統計は、さすがに見つからなかった。
そもそも何をAI美女とするかも難しい。
ただ、かなり近いデータはある。
SNS上には、CGなどで作られた架空の人物が、実在のインフルエンサーのように投稿や広告活動をする「バーチャルインフルエンサー」がいる。
カーネギーメロン大学のSerim Hwangの博士論文では、VirtualHumans.orgが2020年4月時点で掲載していた136体のバーチャルインフルエンサーを分類している。

現在のカーネギーメロン大学は、カーネギー工科大学とメロン研究所が1967年に合併して誕生した。メロンは人名。
136体の内訳は、
- 人間のような女性型 87体
- 人間のような男性型 19体
- 動物や宇宙人、2Dキャラクターなど 30体
だった。
人間型だけで見ると、かなり女性に偏っている。
もちろん、これは現在の画像生成AIで作られた人物だけを数えたデータではない。
むしろ現在の生成AIブームが始まる前から、「ネット上で人に見せる人工的な人物」は女性型に偏っていた、くらいに考えたほうがよさそうだ。
少なくとも、「AI美女ばかり目につく」という感覚は完全な気のせいでもなさそうである。
では、なぜ女性なのか。
『性欲の科学』と生成AI美女
少し前に『性欲の科学』という本を読んだ。
オギ・オーガスとサイ・ガダムという二人の著者が、検索ワードやアダルトサイト、官能小説、恋愛小説など、インターネット上に残された大量のデータから、人間の性的欲望について考えた本である。
この本で印象に残ったのが、男性と女性では性的な関心の現れ方に違いがある、という話だった。
かなり単純化して言えば、
「男は視覚、女は物語」
である。

男性では、相手の身体や外見といった特定の刺激が性的な関心につながりやすい。
一方、女性では相手の外見だけでなく、人物の性格や立場、状況、二人の関係といった文脈も重要になる。
これを読んでいて、AI美女のことを思い出した。
もし男性の性的な関心が視覚的な対象と結びつきやすいなら、画像生成AIとの相性が良い。
顔も髪型も体型も服装も、自分の好みに合わせて変えられる。
気に入らなければ、もう一回生成する。
昔なら自分好みの女性の写真を探していたところを、今は自分好みの女性そのものを生成できる。
それなら、AI美女が大量に作られるのも分かる気がした。
では女性側はどうなのだろう。
女性が求めるものが単なる男性の外見だけでなく、その男性との関係や物語にもあるのなら、「美男子の画像を無限に生成する」という使い方が、それほど目立たないのも説明できそうだ。
「男は視覚、女は物語」は本当なのか
では、この話にはどの程度根拠があるのだろう。
男性と女性の視覚的な性的刺激への反応をまとめた研究では、「男性のほうが視覚的な性的刺激に強く反応する」という一般的な見方には、ある程度の実証的な支持がある。
ただし、単純に「男は画像を見る、女は画像に興味がない」という話ではない。
興味深いのは、同じ性的な画像を見ても、男性と女性では「何に注目するか」に違いが見られることである。
男性では、画像に写っている人物の性別など、人物そのものの特徴が反応に影響しやすい。
一方、女性では背景や衣服、登場人物同士の関係を想像させるような、文脈的な情報にも注意が向きやすいことを示した研究がある。
同じ画像を繰り返し見せた実験では、女性が飽きないように背景や登場人物の関係を想像して見ていた、という報告も紹介されている。
つまり、「女は物語」という表現は、女性が小説にしか興奮しないという意味ではない。
「その人がどんな人で、自分とどんな関係にあり、そこで何が起きているのか」まで含めて刺激を評価する。
そう考えると、「物語」という言い方も少し分かりやすくなる。
ただし、ここは注意が必要である。
研究結果は一枚岩ではない。関係性の文脈による男女差が確認されなかった後続研究もあるし、男性だって文脈や物語に影響される。
「男は視覚、女は物語」は、男女を二種類に分ける科学法則ではない。
あくまで平均的な傾向をかなり大胆にまとめた言葉、と考えたほうがいい。
それでも、この違いを生成AIに当てはめると面白い。
AI美女の側では、「自分好みの女性の外見」を画像としていくらでも生成できる。
では女性側ではどうなのか。
女性は本当に、AIで理想の男を作っていないのだろうか。
AIイケメンを探したら、別のところにいた
TBS NEWS DIG「ChatGPTと結婚しました」AIからプロポーズされ結婚式を挙げた女性
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/22717712025年、TBS NEWS DIGは、ChatGPT上の男性キャラクターと結婚式を挙げた32歳の日本人女性を取材している。
もともとは悩みを相談する相手だったが、会話を続けるうちに恋愛感情を抱くようになり、AIからのプロポーズを受けた。
法的な婚姻とは別の話だが、女性本人にとっては「恋人」としての関係が成立していた。
私が「AIで理想の男を作る」と聞いて最初に考えていたのは、イケメンの画像を生成することだった。
でも、この人が作っていたのは顔だけではない。
話してくれる男を作っていた。
中国では、こうした女性とAIコンパニオンとの恋愛そのものが研究対象になっている。
2025年に発表された研究では、中国のSNS・Doubanにある「人間とAIの恋愛」を扱うコミュニティから、女性ユーザーによる2485件の投稿を分析している。
そこで話されていたのは、AI男性の顔がかっこいいかどうかだけではなかった。
- どんなコミュニケーションをするか
- 恋愛の中でどんな役割を担うか
- どんな男性を理想とするか
- 自分とAIとの関係をどう作っていくか
女性たちはAIとの会話を通して、自分の望む恋愛関係そのものを作っていた。
さらに別の2025年の研究では、中国のXingye、Zhuamengdao、GlowというAIチャットアプリが取り上げられている。
そこでは若い女性たちが男性AIを恋愛相手として設定し、対話を繰り返しながら、自分好みの男性像を作っていた。
面白いのは、単に「何でも優しく言う男」を求めていたわけでもないところだ。
強さや支配的な男性らしさを持たせつつ、自分には応えてくれる。
研究者たちは、そこに既存の男性らしさとユーザーへの「従順さ」を組み合わせたAI彼氏像を見ている。
もちろん、これは中国の特定のAI利用者を調べた研究であり、「女性はみんなAI彼氏を欲しがる」という話ではない。
それでも、女性がAIで理想の男性像や恋愛関係を作る使い方が実際に存在していることは分かる。
AIイケメンがいなかったわけではない。
ただし「顔」だけを作っていたわけでもなかった。
何を生成しているのか
ここでAI美女とAI彼氏を並べてみると、少し違って見える。
AI美女を画像生成する場合は、
- 顔を変える
- 髪を変える
- 服を変える
- 体型やポーズを変える
画面の中にある「理想の外見」を調整していく。
一方、AI彼氏では、
- 話し方を変える
- 性格を決める
- どう接してほしいかを伝える
- 会話を繰り返す
- 過去のやり取りが積み重なる
こちらは「理想の外見」というより、「理想の相手」を調整している。
片方で作っているのは、「どう見える相手か」。
もう片方で作っているのは、「その相手と自分の間に何が起きるか」。
ここまで来ると、「男は視覚、女は物語」という乱暴な言い方が、少し具体的に見えてくる。
もちろん男性がAIと恋愛しないわけではないし、女性がイケメン画像を見て喜ばないわけでもない。
そんなにきれいな男女分けではない。
今回紹介したAIの使われ方だけで、男女全体の性的嗜好を証明できるわけでもない。
では、なぜAI美女ばかり「見える」のか
ここまで考えて、最初の疑問に戻る。
私は「AI美女は大量にいるのに、AIイケメンは少ない」と思っていた。
でも、そもそも同じ場所を見ていなかったのではないか。
AIモデルやバーチャルインフルエンサーは、人に見せる存在である。
SNSに投稿され、フォロワーを集め、多くの人に見られる。
だから外から見える。
一方、AI彼氏の価値は会話や二人の履歴の中にある。
昨日話したことを覚えている。
自分の話にどう答えてくれるか。
自分をどんな人物として扱ってくれるか。
そうした部分は、基本的に本人のチャット画面の中にある。
私は「公開されるAI美女」と「個人的な会話の中にいるAI彼氏」を比べて、美女ばかりだと思っていたことになる。
男は視覚、女は物語
最初は、AI美女が多い理由を「男は視覚、女は物語」で説明できるのではないかと思った。
調べてみると、そんなに単純な話ではなかった。
「男性は外見だけ、女性は関係性だけ」というように男女を分けることはできない。
それでも、男性と女性では性的な刺激の評価の仕方に平均的な違いが見られるという研究はある。
そして生成AIの使われ方を見てみると、一方では「理想の外見」が画像として大量に作られ、もう一方では「理想の相手」が会話や関係の中に作られている例がある。
画像生成AIが作れるようにしたのは、存在しない「理想の顔」だった。
会話する生成AIは、存在しない「理想の相手」まで作り始めている。
そして会話や記憶が積み重なれば、作られるのは相手だけではない。
その人との関係まで作られていく。
「男は視覚、女は物語」。
かなり乱暴な言い方である。
でも生成AIの時代になって、この言葉が妙に具体的な形を持ち始めたようにも見える。

