黒い羊 #1
私の名は澤村賢也(さわむら けんや)、32歳。『坂道新聞社』という新聞社に勤務している。今日は、『欅坂46』の東京ドームライブの前日会見が行われるということで、先輩の記者と共に東京ドームホテルの会見場にいた。以前から我が社では欅坂46の活動を追いかけていたが、担当記者が別の部署へと異動になり、私が配属となったのだった。『ホテルがデカいとホールも馬鹿デカいですね』「だな。ところで澤村、今回の目玉はなんと言っても………」『平手さん………ですね』「ああ………欅坂46、不動にして絶対的センター。『憑依型』とも称されるその表現力は坂道グループNo. 1の呼び声も高い。欅坂でも圧倒的なスキルを発揮している。だが近年、どうもメディアへの露出を避けている傾向にある。自身のレギュラー番組を除けば、グループの冠番組には今年に入って1回しか出演していないし、音楽番組への出演もゼロ。ライブに至っては、先日の『欅共和国』にしか立っていない。それと今回の東京ドーム。どう思う?」『…………女王様ですね、なんか』「正直俺もそう思う。こういった囲み取材でも、フォトセッションと簡単なトークが終わったらすぐにはけていってしまう。ライブのMCやバラエティ番組でも、その役割を担っているのは菅井友香や守屋茜といったキャプテン勢ばかりだ」『今の時代に珍しいですよね。ここまで芸能リポーターや記者泣かせの人間も』「ああ。だが今回はそうはいかない」『えっ?』「この会見、AbemaTVで生配信されるんだ。リアルタイムで視聴者からの声が聞こえてくる」『なるほど………』「ある意味、今日の会見は大チャンスってわけだ」『確かに、そうですね…………』その時、一気にカメラのフラッシュが焚かれた。時計を見ると18時01分。定刻より1分遅れて、欅坂のメンバーが続々と会場に姿を見せた。